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◾️第1章 桜の下で、先生に堕ちた
満開の桜が覆う。
「……ここ、か」
魔法ギルドの門の前で立ち止まった瞬間、胸の奥がざわついた。
まだ何も始まっていないはずなのに、息が浅い。膝の裏が妙に熱を帯び、指先が微かに震えている。
(なんだ、これ……)
転生してから三日目。
この世界に放り込まれた直後、
俺――七瀬 晴、21歳。元の世界では大学3年生、やや細身の標準的な男子――
は、魔力暴走と呼ばれる現象に襲われた。
さて、魔力暴走が起こったのは、桜の巨木の下。
淡い桃色の花びらが舞う中で、突然、体の奥底から熱が噴き上がってきた。
「うっ……!」
膝をつく。
下腹の奥が、ぐつぐつと煮えたぎるように疼き、ズボンの布地が内側から押し上げられる感触に、俺は自分の目を見開いた。
(……は? 嘘だろ)
硬くなっている。
しかも、ただ硬いだけじゃない。
脈打つように熱を持ち、先端がじんじんと痺れて、透明な液が滲み出しているのが自分でもはっきりとわかった。
(なんで……こんなところで……?)
怖気だった。
転生したばかりの異世界で、いきなり下半身がこんな反応を示すなんて、異常すぎる。
自分で触れるのも嫌になるほどの、淫らで、制御不能な疼き。
魔力と性欲が強く共鳴する――そんな世界のルールなど、まだ知らなかった俺は、ただただ自分の体にドン引きしていた。
「落ち着け……俺の体……」
歯を食いしばって呟いたその時。
「――欲を、抑えろ」
低い、よく通る声が背後から降ってきた。
びくり、と全身が跳ねた。
触れられてもいないのに、声だけで脊椎が甘く痺れる。
まるでその声音が直接、俺の魔力の根源に響いたみたいに。
ゆっくり振り向くと、そこにいた。
黒髪に冷たい印象の銀縁眼鏡。
白いシャツの上に、魔法学園の講師章を着けた長身の男。
神崎 透――27歳。
後に俺の人生を狂わせる、魔法学園実技講師。
彼は触れずに、ただ掌をこちらに向けた。
淡い青白い光が指先から溢れ、俺の暴走しかけていた魔力を、するすると絡め取っていく。
「……っ」
その瞬間、熱かった下半身の疼きが、まるで糸で操られるように一気に引き締められた。
同時に、別の熱が背筋を駆け上がる。
(熱い……なのに、痺れる……)
指一本触れられていないのに、体の内側を何かが這うような感覚。
そして、鼻腔をくすぐったのは――清潔感のある、でもどこか甘く溶けるような匂い。
(この匂い……先生の?)
その匂いを嗅いだ途端、うなじのあたりから魔力が跳ね上がった。
今まで感じたことのない、甘ったるい疼きが、腰の奥まで一気に駆け抜ける。
「我慢しろ」
再び、透の声。
その言葉が、耳から直接脳髄に突き刺さった。
同時に、下半身がびくん、と大きく反応する。
先走りがさらに溢れ、布地を濡らす感触に、俺は唇を噛んだ。
(怖い……なのに、気持ちいい……)
自分で自分が信じられない。
暴走した魔力のせいだと言い訳しても、こんな反応は普通じゃない。
この男の声と匂いだけで、こんなに乱されるなんて。
透がゆっくり近づいてくる。
距離が縮まるごとに、俺の魔力が勝手に彼に引き寄せられるように揺らぐ。
「名前は」
「……七瀬、晴です」
声が掠れていた。
透はうなじのすぐ近くに指を寄せた。
まだ触れていない。
なのに、指先から漏れる魔力が、俺のうなじの皮膚を優しく撫でるように絡みつく。
「っ……あ」
小さく喘ぎが漏れた。
恥ずかしさで顔が熱くなる。
「魔力適性は極めて高い。だが制御が致命的に未熟だ」
透の声は淡々としているのに、どこか愉しげに聞こえる。
「特に、欲望との共鳴が強すぎる。……このままではすぐに暴発するぞ、七瀬」
指先が、ようやくうなじに触れた。
瞬間――
「んっ……!」
全身が電流に打たれたように震えた。
熱と甘い痺れが同時に爆発し、頭の芯が真っ白になる。
下半身がさらに硬く張りつめ、蜜のような透明な液が止まらなく溢れ出す。
(やばい……これ、普通じゃない……)
透は指で軽く円を描くように魔力を流し込んでくる。
その動き一つ一つに、俺の体が敏感に反応する。
「我慢しろ。欲を爆発させるな」
またその言葉。
「我慢しろ」
その瞬間、俺の中で何かが「カチリ」と音を立てて落ちた気がした。
怖い。
なのに、もっとこの声で支配されたい。
もっとこの指で、うなじを、魔力を、弄ばれたい。
そんな自分に、吐き気がするほどの恐怖と、底知れぬ快感が同時に襲ってくる。
「……は、っ……」
息が乱れる。
透は指を離した。
離された途端、急に体が寂しくなって、俺は思わず彼のシャツの裾を掴みそうになった。
透が、わずかに目を細める。
「俺に触れるな」
冷たく突き放される。
その距離の取り方に、胸の奥がちくりと痛んだ。
(……距離、近いと思ったのに)
ほんの少しだけ、期待してしまった自分が嫌になる。
****
俺は、魔法ギルドの紹介で魔法学園の入学を許された。
簡単な面談があった。
学園への入学手続きと、魔力測定。
透は終始淡々としていたが、俺が書類にサインする時、うなじのすぐ横に顔を寄せてきた。
「っ……」
軽く息を吹きかけられただけで、背筋がぞくりと甘く震える。
「反応が素直すぎるな、七瀬」
低い声で囁かれ、俺は唇を強く噛んだ。
****
面談が終わった後、校庭で幼馴染の有沢 仁と再会した。
彼も俺と同じ転生者。
「晴! お前も魔法学園に入学するのか!」
仁はいつもの明るい笑顔で駆け寄ってくる。
その笑顔を見た瞬間、俺の体は不思議と落ち着いた。
俺は、先程あった魔力の暴発未遂について話す。
すると、仁は自分のうなじを抑えた。
「……ほんと、この、うなじが魔力で敏感になるのって違和感あるよな。これ以外は、あまり元の世界と変わらないんだけど……」
透の前で感じていたような、淫らで異常な疼きは一切起きない。
(……仁の時は、普通だ)
それが逆に、透に対する反応の異常さを際立たせた。
****
夜、寮のベッドの上。
俺は一人、布団の中で目を閉じていた。
どうしても、思い出してしまう。
透の低い声。
「我慢しろ」
うなじに触れた指の熱。
清潔なのに甘い、あの匂い。
「……っ、く……」
気づけば、手が自分の下半身に伸びていた。
熱く硬くなったものを右手で握り、ゆっくりと扱き始める。
「ん……っ、は……」
前を扱く動きに合わせて、後ろを指の腹で優しく円を描くように擦る。
刺激が重なり、甘い疼きが一気に強くなった。
「あ……っ、先生……」
透の顔を思い浮かべながら、手の動きを少しずつ速める。
体の内側がじんじんと熱くなり、蜜のような感触が溢れてくる。
「我慢、しろ……って……」
自分でその言葉を繰り返しながら、前を激しく扱き、後ろを執拗に擦り続ける。
怖いのに、気持ちいい。
自分で自分が異常だとわかっているのに、止められない。
「は……っ、あん……先生……もっと……」
息が乱れ、腰が小さく浮く。
後ろを軽く押し込むように擦った瞬間、背筋が激しく震えた。
「っ……あっ……!」
熱い白濁が腹の上に散った。
同時に、後ろがひくひくと収縮し、甘い余韻が体を駆け巡る。
罪悪感と、言いようのない満足感が同時に襲ってくる。
息を荒げながら、天井を見つめる。
(……これ、絶対におかしい)
前も、後ろも、透のことを思い浮かべながら触れてしまった。
しかも、こんな反応をしてしまう自分が、怖いほど気持ちよかった。
でも、止められない。
もう、あの声と匂いが、体に刻み込まれてしまった。
****
翌朝。
再び桜の下を通った時、昨日の残り香が、ほのかに漂っていた。
風に舞う花びらの中で、俺のうなじから、甘く小さな魔力が漏れ出す。
(……また、欲しい)
その思いを自覚した瞬間、俺は自分の心に、最初の「呪い」がかけられたことを知った。
先生の「我慢しろ」という一言で、俺の全部が、壊れ始めた。
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