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◾️第2章 幼馴染は、俺の恋を見抜いていた

授業が始まってまだ数日だというのに、俺の体はすでに先生の声に魅了され始めていた。 「魔力の流れは、感情と欲望に最も敏感に反応する。……特に、特定の誰かに対する想いが強い場合な」 神崎透の低い声が講堂に響く。 ただそれだけで、俺のうなじが熱を帯び、甘い痺れが背筋を伝い落ちる。 (……やばい。声だけで……) ノートを取るふりをしながら、視線は自然と透の指先や、薄く開いた唇の動きに吸い寄せられる。 眼鏡の奥の冷たい瞳がこちらを捉えた瞬間、腰の奥がきゅんと疼いた。 「七瀬。集中しろ」 「……っ、はい」 名前を呼ばれただけで、魔力が小さく跳ねる。 隣に座っていた仁が、ちらりと俺の横顔を見た気がした。 **** 自習室での休憩時間。 俺は無意識に、透のことを話していた。 「先生の魔力制御、ほんと精密だよな。触れられただけで……いや、触れられてなくても、魔力が勝手に反応するっていうか」 仁がペンを止めた。 「……晴。お前、好きだろ」 ストレートすぎる言葉に、俺は言葉を詰まらせた。 「は? 何を言ってんだよ」 「誤魔化すなよ。授業中、先生の指ばっかり見てるし、声聞いただけで顔赤くなってたぞ」 仁の声は明るいのに、どこか痛みを帯びている。 俺は否定しようとして、できなかった。 「……憧れ、かもな」 曖昧に肯定するような、否定するような答えしか出せない。 仁は小さく息を吐いた。 「憧れじゃねえだろ。それ、恋だよ」 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなった。 同時に、下半身がじんわりと反応し始める。 自分の恋心を、幼馴染に看破されたという事実に、妙な興奮が混じっている自分に気づいて、ぞっとした。 (……見られてる。俺の気持ち、バレてるのに……) その事実に、なぜか疼きが強くなる。 **** 放課後、魔力実技の補講で透と二人きりになった。 「今日はうなじからの魔力流出を抑える訓練だ。目を閉じろ」 透の指が、俺のうなじにそっと触れる。 昨日より少し深く、魔力を流し込まれる。 「ん……っ」 甘い声が漏れた。 透の指がゆっくり円を描きながら、俺の魔力を優しく、しかし執拗に撫で回す。 「反応がいいな、七瀬。……欲が、すぐ顔に出る」 「先生……もっと、奥まで……」 思わず口をついて出た言葉に、自分で驚いた。 透の指が、一瞬止まる。 「……我慢しろ」 その言葉とともに、魔力の流れがぴたりと抑え込まれた。 限界まで高められた快感が、寸止めで遮断される。 「あ……っ、んん……!」 体がびくびくと震え、蜜穴のように疼く内側が、満たされない熱で締め付ける。 触れられていない下半身が、痛いほど硬く反り返っているのが自分でもわかった。 透は指を離し、冷たい声で言った。 「もっと教えてください、じゃ済まないぞ。まだお前は生徒だ」 軽くあしらわれる。 その距離の置き方に、胸が苦しくなる。 「……先生」 「距離が近い。離れろ」 再び、突き放される。 なのに、その冷たさが、逆に俺の執着を煽る。 **** 夜、寮の部屋。 ベッドに横になりながら、俺は今日の透の指の感触を反芻していた。 「……は、っ……先生の指……」 ズボンを下ろし、熱いものを握り締め、疼く後ろへ指を這わす。 透の匂い――清潔なのに甘く溶けるようなあの香りを思い浮かべながら、激しくする。 「あ……っ、ん……もっと、奥まで……我慢、しろ……っ」 自分で自分の言葉を繰り返しながら、腰を浮かせて指を動かす。 寸止めされた快感の記憶が、頭の中で何度も再生される。 「先生……っ、欲しい……」 限界まで追い詰められ果てた瞬間、罪悪感と中毒的な満足が同時に襲ってきた。 (やめられない……先生のことが、頭から離れない) **** その頃、仁は自室のベッドで天井を見つめていた。 (晴……お前、本気で神崎先生のことが好きなんだな) 仁は静かに目を閉じた。 幼馴染として、晴の変化を一番近くで見てきた。 『なぁ、仁。お前さ、好きな人いないなら、俺とやってみないか?』 『ははは、これは気持ちいいな。これからも、お互いに寂しい時、しようぜ!』 少し深いところを含めて、友情を育んできた。 (いつもいい笑顔で。俺を元気づけてくれる。俺は……ただの幼馴染で、いいのかよ) **** 一方、俺は窓の外の夜空を見上げながら、独り言のように呟いた。 「……憧れじゃ、ないかもな」 翌日、再び桜の下を通った。 花びらが舞う中、俺は桜の幹に軽く手を触れた。 (来年も……ここで、先生と……?) その想像をしただけで、うなじから甘い魔力が小さく漏れ出した。 バレているのに、止めない。 見られているのに、隠さない。 むしろ、その事実に興奮すら覚え始めている自分に気づき、俺は静かに笑った。 「もう……やめられないかも」 その言葉を、風に溶かすように呟いた。 幼馴染にはすべて見抜かれ、先生にはまだ触れられていない。 なのに、俺の体と心は、確実に先生へと堕ち始めていた。

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