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◾️第3章 先生に会えるなら、魔力制御も悪くない
個人指導が始まって二週間が経った。
「今日は少し深く魔力を流し込む。覚悟しておけ、七瀬」
透の声が耳元で響く。
個室の指導室。
カーテンが閉め切られた薄暗い空間で、俺は椅子に座らされ、うなじを晒していた。
透が背後に立ち、指先を俺のうなじに軽く押し当てる。
「ん……っ」
触れた瞬間、熱い魔力がゆっくりと体内に流れ込んできた。
昨日までの浅いものとは明らかに違う。深く、ねっとりと、内側を這うような感覚。
「あ……は、っ……」
腰が勝手に浮きそうになるのを、必死に堪える。
透の魔力は俺の敏感な箇所を的確に刺激しながら、ゆっくりと奥へ、奥へと潜り込んでいく。
「どうだ。感じるか?」
「……感じます……先生の魔力、熱くて……奥まで来てる……」
声が甘く掠れる。
俺はもう、隠す気などなかった。
透の指が少しだけ深く押し込まれる。
その動きに合わせて、俺の内側がとろとろに溶けていくような快感が広がる。
「もっと……奥まで、入れてください……先生」
初めて、自分から欲しがる言葉を口にした。
言いながら、顔が熱くなるのを感じたが、止まらなかった。
透の動きが、一瞬止まる。
「……生意気な生徒だな」
低い声に、わずかな愉悦が混じる。
「我慢しろ」
その瞬間、流れ込んでいた魔力がぴたりと抑え込まれた。
限界まで高められていた快感が、寸止めで遮断される。
「んあっ……! あ……っ、んん……!」
体がびくびくと激しく痙攣した。
蜜穴のように疼く内側が、満たされない熱でぎゅうぎゅうと締め付け、腰が勝手にくねる。
「先生……っ、もっと……お願い……」
「まだだ。お前は制御を学ぶためにここにいる。欲を爆発させるんじゃない」
透の指がゆっくりと離れていく。
離された途端、寂しさと欲求不満が一気に襲ってきた。
「……触れられてない時間の方が、苦しい……」
俺は小さく呟いた。
本音だった。触れられていない時の方が、透のことを考えて疼いてしまう。
透は眼鏡を軽く押し上げ、冷たい視線を俺に向けた。
「その言葉、ちゃんと自覚してるのか? 七瀬」
「……自覚してます。先生に、もっと触れられたいって……欲しがってるって」
強がりながらも、はっきりと言葉にする。
透の眉がわずかに動いた。
****
その日の実技訓練中、小さな事故が起きた。
俺が魔力の制御を失敗し、軽い爆風が発生した瞬間、透が素早く俺を抱き止めた。
「っ……!」
一瞬、透の胸に顔が埋まる。
近くて、濃厚な――清潔なのに甘く溶けるような、あの匂いが脳内に広がる。
(……ああ、先生の匂い……)
魔力が一気に跳ね上がり、うなじから甘いフェロモンのような香りが漏れ出す。
体が熱くなり、下半身が痛いほど硬く反応する。
「大丈夫か」
透の腕が俺の背中を支えている。
その温もりに、俺は思わず甘えるように体を預けた。
「……先生、もっと……抱きしめてくれても、いいのに」
強がるように笑いながら、挑発的に言う。
透はすぐに俺を離し、冷たく言い放った。
「甘えるな。厚かましい生徒だ」
また、突き放される。
その言葉が、逆に俺の胸をざわつかせる。
****
夜、寮のベッドの上。
俺は今日の指導を思い出して、指を自分のうなじに這わせていた。
「……先生の指……ここに……」
指で軽く押さえながら、透の魔力が這った感覚を反芻する。
もう片方の手は、自然と下半身に伸びていた。
「あ……っ、ん……先生……もっと奥まで……」
息を乱しながら、激しく動かす。
透の低い声で「我慢しろ」と言われた瞬間の、寸止めされた疼きを思い出すたび、蜜のような透明な液が溢れ出す。
「は……っ、ああ……先生の、専用になりたい……」
自分でも淫らすぎる言葉に、興奮がさらに高まる。
やがて限界を迎え、俺は小さく喘いだ。
「……男として、見てほしい……」
天井を見つめながら、ぼそりと呟く。
****
次の日の個人指導で、俺は再び透の前に座っていた。
「先生。俺のこと、どう見てるんですか?」
「……真面目に制御を学べ」
「真面目に学んでますよ。でも……先生に、ちゃんと男として見てほしい」
透の指が俺のうなじに触れる。
「まだ早い。お前はただの生徒。それ以上でもそれ以下でもない」
冷たい言葉。
なのに、その声だけで俺の魔力が甘く乱れる。
指導が終わり、透が部屋を出ようとした時、俺は小さく呟いた。
「……会えるだけで、満たされるのに」
透は振り返らずに、静かにドアを閉めた。
****
その夜、俺は再び桜の下を一人で歩いていた。
既に花びらは散り、青葉が息吹いている。
俺は静かに微笑んだ。
(先生に会えるなら……魔力制御も、悪くない)
でも、本当はもうわかっていた。
俺は自分から、先生に欲しがるようになっていた。
逃げ道など、最初からなかった。
「先生……もっと、俺を壊してほしい」
風に溶けるように、その言葉を呟いた瞬間、うなじから甘く濃い魔力が、静かに漏れ出した。
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