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おまけSS
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おまけ:蒼司と律でネックバンドを買いに行く話
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律が番になると言ってくれた日から1週間後。
今日は、ネックバンドを買いに街まで出かける日だ。
律が本屋に寄りたいとも言っていたので、昼前から出かけて昼食を食べ、その後にネックバンドを買い、本屋に寄って戻ることにした。
デートだ。
同じ学校で同じ部屋だが、2人きりで出かけたことが無かった。
出かける必要性がなかっただけだが、ただ2人で街に行くだけなのに、どうしてこうも浮き足立ってしまうのだろうか。
部屋で二人きりの方が、親密度で言えば高いように思えるのに。
律 「準備できました?」
蒼司 「どうしよう。スマホがない」
律 「ベッドとか枕の下に入り込んでるんじゃないですか?」
言われて枕をどかしてみると、律の言う通りだった。気まずい。きっと呆れた顔をしている。
蒼司 「…これで、俺も準備OKだ」
律 「じゃあ、行きましょう」
声色から判断がつかないので、蒼司は律から視線を外したまま、部屋の出入口へと向かった。
あれから2回ほど、律に触れる練習をした。内容はさほど変わらない。
でもちょっとだけ変化もあった。
律 「蒼司さん」
寮の門を出ると、律がそう声をかける。
少し、声のトーンがいつもと違う。
呼ばれた蒼司が左手を差し出すと、律は嬉しそうに右手を伸ばした。
練習していて気付いたのだ。
律が言っていた「嫌じゃない」が本当だと。そして、律のほうも実は自分に触れたがっていると。
だから、さっきみたいな声の時は触れていい合図だと、蒼司は気づいている。
とはいえ、まだまだ慣れていないのも事実だ。
手を繋いでいても、指を絡めると律は少し体を強張らせる。
それでも、律から声をかけてくれることが嬉しかった。
ネックバンドは、安価なものはドラッグストアや雑貨店でも売っているが、しっかりとした作りのものは専門店で取り扱っていることが多い。
また、最近は着けているオメガが減ってきているので、店も減っている。少し遠出が必要だった。
昼食を済ませたあと、2人は店に足を運んだ。
さほど広くはないが、壁や商品棚にサンプルが並んでいる。素材との相性もあるので、試着もできるようだ。
律 「どれがいいんですかね」
蒼司 「そうだな。思ったより種類があるな」
うなじに当たる部分だけクッション性の素材が入っているものや硬度を上げたプラスチックを使った軽量タイプのほか、防刃効果のある布製のものもある。
さらに、ベルトのように調節するタイプだけでなく、サイズを測ってピッタリに作るものもある。
律 「僕の首を守れて、蒼司さんの口より大きい幅のやつがいいですよね」
蒼司 「そうだな。このくらいは開くぞ」
蒼司はあーと口を開いてみせた。
律はおかしかったようで、笑い声を漏らした後に「ありがとうございます」と言った。
律 「僕がヒートになった時、蒼司さんが着けてくれる可能性もありますよね?」
蒼司 「ああ。前みたいに急なときは俺が着ける」
律 「なら、ベルトっぽいやつは着けにくいですよね」
蒼司 「手間取りそうだな」
そうして選んだのは、ファスナータイプのネックバンドだった。ファスナー部分を覆うようにボタンでも留められる。
律がまず自分で試着したあと、蒼司も試しに律に着けさせてみる。
蒼司 「苦しくないか?」
律 「大丈夫です」
蒼司 「じゃあ、これにしよう。色は俺が選んでいいか?」
律 「はい」
同じタイプのカラーバリエーションを確認する。
白黒に加えて、赤・青・緑・ピンクなどがあった。
律とネックバンドを見比べて、蒼司が選んだのは濃い青だった。
蒼司 「この色が一番似合うと思う」
律 「じゃあ、それにします」
蒼司 「あ、俺の名前に蒼が入ってるから青じゃないぞ?ちゃんと似合うと思った色だ」
律 「…はい。でも、そっちの意味でも僕は良いですけど」
蒼司 「…あのな、そういう言い方はずるいぞ、律」
律 「ごめんなさい。選んでくれて、嬉しいです」
律は、柔らかく、でもいたずらっぽく笑った。
出会った頃は、眉間にずっとシワが寄っているような仏頂面だったのに。
いろんな表情を目の当たりにするたび惹かれる自分を自覚する。
番というのは、もっと機械的にパートナーが決まるものだと思っていたのに。
会計の時に包装も頼んだ。
一緒に買いに来てはいるが、記念の贈り物にしたかったし、自分なりのけじめでもあったからだ。
寮に戻ったら、改めて渡そう。
その時どんな顔をしてくれるかわからないけど、きっとさらに惹かれるのだろう。
【おまけ:おわり】
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