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恋愛ゲーム
「浮気したら殺すよ」
告白された時に、僕が放った一言。
別に殺意があるわけじゃない。
あるのは本気の感情だけ。
“恋は刺激的な方がいい”
って?
誰だよ、そんな余裕綽々なこと言う奴は。
僕は刺激なんかより、束縛的な安定が欲しい。
「お前、先輩からの告白断ったんだって?」
何気なく聞いてくる友達。
「あー……。うん。あの人知らないし」
「知らないって、けっこう有名だよ。イケメンだって」
「あー……。興味ない」
ストローを噛みながら答える。
「しかもいつものお決まりのセリフで」
――僕、あの人以外に興味ないんで。
「もったいないよなぁ。モテるのにさ」
ため息をつきながら言われたって、僕のせいじゃない。
「だいたいさ、何で僕に惚れるわけ? 分かんない」
「カッコ可愛いからじゃねぇ?」
「見た目だけじゃん、くだらない。僕、そういうの嫌い」
ジュースの空をゴミ箱に向かって投げながら言う。
ちなみに外れた。
「お前はさ、アイツのどこがそんなに好きなんだ? 確かにカッコいいし、頭良いし、人付き合いも上手いから、いい奴だとは思うけど。普通それだけじゃ“アイツ以外は興味ない”とか、自信持って言えないだろ?」
「…………うーん」
「悩むんかい」
苦笑される。
言われてみれば。
僕、君のどこが好きなんだろう……。
カッコイイから?
カッコ良さなら僕だって負けてない。……と思う。
頭の良さ?
でも、僕と君は、大概テストで首位を争ってる。
人付き合いの良さ?
でもそれって、悪く言えば八方美人だろ。
僕、そういうの嫌い。
階段の踊り場で、君が見知らぬ人と一緒にいた。
僕はドキッとして物陰に隠れる。
あ……。
別に隠れる必要ないか。
僕、君の恋人なんだし。
とか頭では思っても、心臓のドキドキは治まらない。
知らない奴は図々しくも、君にラブレターらしき物を差し出す。
……受け取るんだろうか――。
瞬時に頭を駆ける、漠然とした不安。
「あ。俺、アイツ以外に興味ないんで」
驚いた。
まるで同じフレーズで、君はラブレターに触れようともしない。
知らない奴が去った後、僕はひょっこり顔を出す。
「うっわぁっ!! ……居たのか」
「居たよ」
「……見てた?」
「見てた」
君は場が悪そうに苦笑する。
「……何で受け取ってあげないの? あの人、一生懸命書いたんじゃないの?」
一体どっちの味方なんだか……。
僕は君に詰問するように言う。
「だって、受け取っても意味ないだろ。興味ないのに」
「何で?」
「何でって……あのなぁ、俺はお前が好きなの」
「………あっそ」
「あっそ……って。お前なぁ……」
僕の冷めた態度に、君はため息をつく。
「僕も、好き。そうやって、よそ見しないとこ」
直視して素直にそう言うと、君の口元が緩む。
「僕だけ見てくれてるとこ、大好き。安心する」
「……あのなぁ、普通そういうこと、いきなり言うか……?」
「何で? だってそう思ったんだから言うよ。何照れてんの?」
「普通照れるっつーの……」
緩みっぱなしの君の唇にキスをする。
ハラハラドキドキ。
刺激的な恋は疲れる。
僕は、いつだってバカ正直で……。
「この調子で、僕だけ見ててね」
不安定でも、安定でもない。
「浮気したら、殺すから」
「しないよ。そんなこと」
「約束出来る?」
「出来る。かわりに、お前が浮気したら、お前殺すから」
そう。
こんな風に束縛的で……。
「いいよ。僕、君と一緒に地獄に堕ちる」
指切り。
嘘ついたら……? 針千本どころじゃない。
僕がしたいのは、命掛けの恋愛ゲーム。
ただ、それだけ……。
―『恋愛ゲーム』End
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