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01.

 俺はナギの寝顔が好きだ。  昔は細っこくて泣き虫で臆病(おくびょう)で、どこへ行くにも俺の背中に隠れてばかりだった、一歳下の幼馴染。  生まれつきの茶色っぽい髪と、舌足らずでゆっくりとした喋り方を揶揄(からか)われて、引っ込み思案(じあん)になってしまったナギを、俺は兄貴分としていつも(そば)で守ってきた。  いじめっ子を追い払ったり、通学路沿いの家にいる凶暴な犬から(かば)ったり。そのたびに、ナギは俺の服の後ろをきゅっとつまんで、涙の滲んだ瞳と声で言う。 「ありがと、よーちゃん」  そしていつも、へにゃっと気が抜けたように笑うのだ。  夜道にも雷にも(おび)える奴だけど、寝ているときだけは安心しきった顔をする。  遊び疲れると電池が切れたように眠ってしまうので、俺はその穏やかな寝顔を隣で密かに眺めていた。 (どんな夢見てんのかな)  どうか平和で優しい景色だけであってほしい。夢の中までは守ってやれないから。  ナギが悪夢でうなされることがないように、俺はこっそり〝おまじない〟をした。  丸くて広いナギのおでこにキスを一回。起こしてしまわないよう軽く触れる。  この〝おまじない〟をすると悪いものが近寄ってこないのだと、小さい頃に母さんから教わって、俺は子ども心にそれを信じていた。  ナギは知らない、俺だけの秘密だ。

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