10 / 10
10.
ドラッグストアの袋を提 げて早足で自宅に戻ってきた俺は、玄関で靴を脱ぎながら「ナギ、ただいま」と家の中に声をかけた。
リビングの奥の洗面所のほうから「おかえり」とか細い返事が聞こえてくる。俺は逸 る気持ちに突き動かされるようにナギのもとへ向かった。
「ナギ、大丈夫か」
「……よーちゃん」
洗面所のドアが少し開いて、ちらりとナギが顔を覗かせる。ちょうどシャワーを終えた後のようで、まだ髪が濡れていた。
「い、色々買ってきたぞ。必要そうなものとか、明日の朝ご飯とか」
「うん、ありがと……」
「その……家にはちゃんと連絡したか?」
「うん」
ナギは頷き、それから黙りこくった。服は着ているようだが、なぜか恥ずかしそうにもじもじして洗面所から出てこない。
「ナギ、先に髪乾かしてやるから。ドライヤーは洗面所の棚に――」
俺がドアを開けようとすると、ナギは「あ、ちょ、待って」と慌てた様子で後じさった。待てと言われても、俺もこの後にシャワーを浴びないといけないし。
しかし、洗面所に踏み込んだ俺は、ナギの姿を見て固まった。ドラッグストアの袋がドサリと床に落ちる。
ナギは白のワイシャツ一枚しか着ていなかった。スラックスどころかパンツも、おそらくは肌着も身に着けていない。すらりとした生足が丸見えだ。前を隠そうとシャツの裾を引っ張っているせいで、胸の形が浮き出て上気した肌色が透けている。
「な、なんで下履いてねぇの」
俺は上から下までじっと見てしまってから、申し訳程度に目を逸らす。ナギは部活用に着替えの服を持っていたはずだ。
「……すぐ、汚しちゃいそう、だったから」
顔を赤くしてうつむいたナギが、息を震わせる。その一言に、ずくんと俺の腰が重くなった。
咄嗟に泳がせた視線が、床に崩れた袋の中身を捉える。ミネラルウォーターのボトル、ウェットティッシュ、朝食用の食パンやおにぎり、それから――個包装タイプのローションと、コンドームの箱。
(あ……そうだ、俺ら)
今になって実感が追いついてくる。買い物をしている間は、私服に着替えていても人目が気になって、そわそわとした気分のほうが勝っていた。全部が初めてだから、何を用意すればいいのかスマホで必死に調べたりなんかして。
でも、焦ってごちゃごちゃ考えていたことなんか吹っ飛んでしまった。それくらい、目の前のナギがエロくて、可愛くて、興奮する。
「……ナギ」
まだうつむいているナギに歩み寄り、そっと腕に触れる。ナギはピクッと跳ねてシャツの裾から手を離した。もうすでに立派なモノがゆるく勃 ちはじめていて、とろりと垂れた先走りが腿に伝っている。
「っ、よーちゃん……」
ナギは震えながら俺にしなだれかかってくる。耳元に零される息が湿って熱い。
「よーちゃん、おれ、もう」
「ん……あと少しだけ、いい子で待てるか?」
赤らんだ耳に吹き込み返してやると、ナギはきゅっと身体を緊張させて小さく頷いた。無意識なのか、すでにちょっと腰が揺れている。
シャツの上から背中を撫でて抱き寄せれば、「ん……っ」と息を詰めて俺の腹に性器を擦りつけてきた。
「シャワー浴びてる間に何回かイった?」
「い、いってない」
「ホントかよ」
「……一回、だけ……でも、出してない」
イったけど出してない。俺が言葉の意味を飲み込めずにいると、ナギは背中に回していた俺の手に自分の手を重ねた。そして、引き締まりつつも程よく肉感のある尻へと導く。その谷間に俺の指が沈み、ヒクついた窪 みに触れた。
「ここ、洗ってほぐしてたら、我慢できなくて」
ごめんなさい、とナギは弱々しく頭を垂れる。……つまり、射精しなくても尻の穴を弄 るだけでイけてしまうらしい。
(男でもそんなことできんのかよ)
全然ピンとこない感覚なのに、俺は想像して頭が茹だりそうになった。ナギが一人で俺を待ちながら、俺を受け入れるために準備をして、期待のあまり女の子みたいなイき方をしていたなんて。
「おまえ、いつからそんなエロくなったの」
妙にふっくらとした尻穴の縁 を中指の腹でくるくると撫でる。皺を伸ばすように押し拡 げながら指先を浅く沈み込ませると、ナギはビクンと腰を跳ねさせた。温かい粘膜が指に吸いついてくる。
「あっ、ん、よーちゃ……」
「ここ使って俺に抱かれたいって、ずっと思ってたのか?」
中指の第一関節まで挿 し入れ、きゅうきゅうと締まる動きに逆らって横に拡げれば、簡単に人差し指も入ってしまった。
尻の穴なんて、普通は触れるのも触れられるのも抵抗があるだろう。しかし、そんな観念を打ち砕くほどに、熱く柔らかく絡みついてくるナギのそこは蠱惑的 だった。
ナギは二本の指にほんの少し内側を愛撫 されるだけで、甘く鳴きながら背中を丸めて俺に縋 る。
「よーちゃ、ぁっ、おれ、よーちゃんと、えっちなこと、したくて……っ」
「うん」
「でも、そんなの言えない、から……お尻とか、乳首とか、一人で弄ってて」
「自分で開発してたら、俺とエロいことする夢まで見るようになった?」
耳元で囁けば、返事をするようにナギのナカがきゅっと締まった。なんて素直で分かりやすくて可愛い身体だろう。他人の指という異物をたやすく受け入れて、もっと奥へと誘うようにうごめく。
(このままイかせてぇけど)
口の中に溢れる唾を飲み込む。始める前からナギを疲れさせてしまっては元も子もない。
ちゅぽんと尻から指を抜かれたナギは、腰を震わせて名残惜しそうに俺を見た。だらしなく半開きになった唇へ軽くキスをする。
「先に、俺の部屋行ってて」
「ん……」
ナギの瞳がとろりと欲に蕩 け、俺の唇を追いかけるように触れてくる。ここで甘やかしてはいけない、が、猫の愛情表現よろしく舌でペロリと舐められると、俺もついそれに応えてしまうのだった。
ともだちにシェアしよう!

