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第24話
午前十時。
玄関の扉を開け、電車に乗る。
朝に比べて昼の車内はやはり空いている。一番端の席に腰を下ろしてスマホを弄る。
軽快な指の動きは三つ目の停車駅でピタリと止まる。
明らかに颯希を睨みつける気配が伝わったからだ。
スマホに向けていた目線を外し、ひしひしと感じる気配へと向ける。
その先にいたのは、神崎だ。
颯希の視線に気づいた神崎は眉間に皺を寄せてより鋭く睨みつける。
その視線に耐えつつ、スマホに集中すること五分。
目的地に着き、電車を降りて駅の改札を抜ける。
もちろん、その間も神崎からの痛い視線はそらされることはない。
改札を抜け、学校へと歩こうとした時、神崎から声がかかる。
「おい。お前、この前穂積と一緒にいた奴、だろ?」
やはり、この前伊織と一緒にいたことを覚えていたのか、と颯希が小さなため息を吐くと、神崎の眉間に再び皺がよる。
「…そうだけど。何か用?」
颯希も神崎に会いたくなかった為に、自然と無愛想になってしまう。
「穂積とどういう関係なんだ?」
単刀直入に尋ねた神崎に颯希は嘘をつかずに答える。
「どうといわれても、友達だけど。」
颯希の回答を聞くと、神崎はため息をついた。
颯希がそれを不思議に感じていると神崎がじっと颯希を見て、口を開く。
「じゃあさ、穂積のこと、好きなのか?」
「えっ…。」
あまりに急に核心に触れた質問を投げかけられ、颯希はその頰を赤く染める。
ストレートに尋ねる神崎は真剣な表情で颯希の返事を待つ。
「嘘をついても無駄だ。」と表情で伝えられ、颯希は顔を俯かせ、小さく頷いた。
颯希の回答を理解した神崎は堂々と言い放つ。
「俺も、穂積が好きだ。だから、ぜってぇ負けねぇ。」
神崎は近くに見つけた友人に声をかけ、先に学校へと向かっていった。
神崎からの宣戦布告は、颯希の心を騒がせた。
教室の前に着き、ドアを開ける。
「おはよっ!颯希。」
そこには以前と変わらず、元気な笑顔を向ける悠馬がいた。
「おはよう。…悠馬。」
今まで苗字呼びだったために、いきなり名前呼びをすると気恥ずかしく感じ、颯希は少しだけ顔を俯かせた。
呼ばれた本人は満面の笑みを浮かべ、とても嬉しそうに颯希の近くへと歩く。
颯希の前に立った途端、悠馬は真剣な表情へと変わる。
「そんで、今度は何があったん?」
颯希はその発言を聞いて、目を見開く。
「悠馬は、なんでいつも俺が悩んでることがわかるの?」
前々から思っていた疑問をようやく尋ねてみる。すると、悠馬は少し考えて答えた。
「なんでだろーな?強いていうなら…勘?」
「そんな馬鹿な。」と思えないのは、目の前の悠馬が真顔で言い放ったから。
そして、「悠馬ならありえるな。」と颯希自身が思ったからだ。
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