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第26話

 中学二年生最後の日、三学期の終業式が来た。  式が終了し、教室へ戻ると八坂先生が笑顔で教卓の前に立った。 「一年間、ありがとうな。二年D組の担任で、良かった。」  その言葉を聞いて、今日でこのクラスも最後なんだな。と当たり前のことを颯希は実感する。 「写真撮ろーぜ!」  そう言ったのは悠馬だった。  「おう。」や「いいね。」など、悠馬の提案に各々が賛成し、黒板を背にしてクラスの生徒たちが並び始める。  伊織はこんな日でも変わらず、一人で爆睡していた。  しかし、悠馬によるデコピンで目覚め、痛そうに弾かれた額を右手で撫りながら渋々並んでいた。  悠馬は一番前列の真ん中。伊織は隠れるように背の高い生徒の後ろ。颯希は伊織の隣に位置している。  写真の立ち位置だけで、それぞれの個性がよく表れていた。  写真を撮り終え、生徒たちが帰っていく中、悠馬と伊織、颯希が三人で教室で話し始めた。 「早かったなぁ。一年間。」  颯希が呟くと二人も頷いた。  長かったようで短かった中学二年生。  思い起こせば色々あった。 「そういや、俺らって一年の時はあんまり仲良くなかったよな。  こうやって三人で集まることもなかったし。」  悠馬が呟く。  確かにそうだった。  三人は一年生の時から同じクラスだったが、その仲は良くも悪くもなかった。  悠馬はクラスの人気者で、友達も多い。  伊織は勉強と部活ばかりでいつも一人。  颯希は特定の誰かと一緒にいることはなく、一人でいることが多かった。  そんな三人が集まりだしたのは、今考えてみても不思議だ。 「一緒に食堂に行くようになって、いつの間にか普段から一緒にいる。」  伊織がのんびりとした口調で呟く。  三人で集まるようになったきっかけとか、いろいろ考えてみて思う。  伊織を好きになったのは驚くべきことだったのだと。  そんなことを考えていて、颯希の視線は無意識に伊織に向いていた。  伊織は相変わらず机に突っ伏しているが、寝てはいない。  誰かが話せば、綺麗な青緑色の瞳をじっと向けて、話を聞いている。  見ていないようで、しっかりと様々なことに気づいている。  そして、それは今この瞬間も変わらない。 「颯希、どうかした?」  伊織が不思議そうな表情を浮かべ、数回瞬きをする。 「な、なんでもないよ。」  颯希が焦って目を逸らせば、「変なの。」と伊織はまた机に突っ伏す。  その一連の出来事を見た悠馬は薄くニヤついていて、颯希は「まずい。」と感じた。 「あのさ、俺から提案!」  悠馬が元気よく話し始め、伊織が再び顔をあげる。  颯希も目線を悠馬へと向けた。 「春休みさ、三人であそぼーぜ。」

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