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【番外編】静寂の宿で、君という傑作を読み解く53

 柊一さんが軽く頭を小突く。 「バカ。中に出すと、強烈な腹痛、それに腹下したりするし、衛生的にも良くない。お前の為につけてるんだ」 「そうなんだ…初めて知った…。ありがとう、俺、大事にされてるんだね」  ふん、と彼は当たり前だろうという顔を見せた。 「今更何を言ってるんだ。大切にしてなかったら、お前みたいな手のかかる奴と付き合ってない」 「うっ……手がかかるって……」  ちょっと凹んだ俺を見て、柊一さんは口元をわずかにほころばせると、俺の頬を軽く両手で挟んで、ぐにっと引っ張った。 「いたた……っ、柊一さん!」 「本当のことだろ。知識もないし、すぐ泣くし、無防備だしな」  散々な言われようだけど、その手つきは驚くほど優しくて、彼の目には深い愛おしさが宿っている。  柊一さんは挟んだままの俺の唇に、ちゅ、と軽い音を立ててキスを落とした。 「……でも、その無防備なお前を守れるのは俺だけだからな。誇りに思え」 「……うん。柊一さんの言う通りにする……」  少し意地悪そうに微笑む彼の首に腕を回すと、柊一さんは満足そうに目を細め、今度は逃がさないように深く、熱いキスを重ねてきたのだった。  なんだかんだ言って柊一さんは俺の事大事にしてるって事だよね。今回の旅行でそれがバカな俺でもよく分かった。たとえラベルのない関係だとしても、俺は十分幸せだ。 「七瀬、お前の中も万が一のことがあるから掻き出すぞ」 「え!また弄るの…俺また…」 「お前が感度いいのは知ってる。でも身体の事を考えての事だ」 「う…うん…」  俺は渋々、彼が俺の秘部に指を入れることを承諾した。 「あ…ふぁ…ん、ん…あう…ん、あぁ…」  彼の指が俺の中に入ると、目的は違うとはいえ、感じてしまい、声を上げてしまう。痛みと共に押し寄せる快感に俺は恥ずかしさを感じながらも身体は素直に受け取ってしまう。 「また抱きたくなるような声、出すなよ」 「だって…感じ…ちゃう…ん…だもん…っ」  俺は彼の「作業」の中、どうしようもなく感じてしまう自分を恥ずかしいと思い、顔を赤く染める。 「そんな顔するな、抱きたくなるだろ」  彼は作業と言い、俺の中を掻き出しながら、俺の中を至る所触れてくる。俺は欲に抗えず、シーツを掴んで甘い声を上げる。 「ん……っ、あ……あぁ……っ、ダメ、そこ……っ!」  体内に入り込んだ彼の長い指が、後始末のついでとばかりに敏感な熱腔を優しく撫で上げる。  抜くための作業のはずなのに、滑り出る白濁とともに与えられる甘い刺激に、身体がびくんと跳ねて腰が浮いてしまう。 「……ダメじゃないだろ。ほら、全部綺麗にしないとお前が後で痛い目を見るんだぞ」  呆れたような声とは裏腹に、柊一さんの指先はどこまでも優しく俺の体を気遣ってくれていた。  彼の腕の中でシーツをぎゅっと掴みしめ、顔を真っ赤にして耐える俺を見て、柊一さんは小さく吐息を漏らす。 「っ……あんまり可愛い反応するな。本当に三回目始めるぞ」 「ん……っ、柊一さんの……ばか……」  悔しさに涙目で睨みつけると、彼は満足そうに目を細め、指をそっと引き抜いた。  タオルで丁寧に拭い終えた後、そのまま逃がさないように引き寄せられ、温かい胸の中に閉じ込められる。耳元に落ちてきた低く甘い囁きに、俺はもう抗うことなんてできなかった。 「そんなに俺の指が気持ちよかったのか?お前、可愛すぎて、本当に困る」  俺は二の句がつげないまま、唇に降りてきたキスを受け止める。 「今日はこれで終わり、な」  彼の言葉に、ホッとしたような、どこか少し寂しいような不思議な気持ちが胸を掠める。  唇を離した柊一さんは、俺の微妙な変化を見逃さなかったらしい。意地悪く口角を上げると、頬を指先で突ついてきた。 「なんだその顔。……もしかして、三回回目してほしかったのか?」 「っ、ち、ちが……っ!そんなこと思ってない!」 「本当か?顔、真っ赤だぞ」  慌てて否定すればするほど面白がるように、彼は俺の腰を引き寄せて隙間をなくしてしまう。  直に伝わってくる彼の体温と、力強い腕の感覚に、心臓が跳ね上がって顔が熱い。 「だ、だめ…明日仕事…っ」 「お前が煽るからだ。バカ」  この体勢ではどうしても熱を持ってしまう。俺がそうなることを、わかって彼はしているのだろう。つくづく意地が悪い。 「しゅ、柊一さん、も、もう一回…」 「するのか?」 「ち、違う…っ!シャワー浴びたい」 「シャワーか。いいぞ、一人じゃ綺麗に洗えないだろ。俺が洗ってやる」 「い、いい!一人で洗えるからっ……んあっ!?」  立ち上がろうとした瞬間に腰の力が抜け、ベッドに倒れ込みそうになった俺を、柊一さんがすかさず抱き止める。 「ほら見ろ。生まれたての仔鹿みたいに足がガクガクじゃないか」 「だ、誰のせいだと思ってるの……っ」  悔しくて睨みつけると、彼は「可愛いな」と呟いて、俺の膝裏と背中に腕を回して軽々と抱き上げた。  そのまま抵抗する間もなく浴室へと連れて行かれ、温かいシャワーのお湯を浴びせられる。  水滴に濡れて肌に張り付く髪や、赤くなった肌をじっと見つめる柊一さんの瞳に、少しずつ怪しい熱が宿っていくのが分かった。  指先が優しく泡を滑らせながら、太ももの内側や腰のくびれをゆっくりと撫で上げていく。 「……柊一さん、そこ……洗うだけ、でしょ……?」 「ん?洗ってるだけだぞ。……ただ、お前がこんなに無防備だと、お互い綺麗になった後で『三回目』をしたくなりそうだな」  意地悪く微笑む彼の顔が近づいてきて、俺はもう逃げ出すことなんてできなくなっていた。 「さ、三回目?!お、俺壊れちゃう…っ!」 「でもお前の身体はそう言ってないみたいだぞ」  柊一さんはそう言って、俺の下肢の中心部を触る。 「しゅ、…柊一さんが…へ…、変な事してくるからっ!」 「俺は七瀬の身体のやりたいようにやってるだけだ」 「そっ…そんな…こと…思って…ない…っ!」 「熱持ってるコレをどうする?一人で抜くのか?」 「っく……っ、う、意地悪言わないで……っ」  視線を逸らそうとしても、顎を指先でクイと持ち上げられ、逃がしてくれない。  彼の瞳には、俺を諦めさせるための危険な色気がしっかりと宿っていた。  触れられている場所からじんじんと湧き上がる熱に耐えきれず、俺は涙目で彼を見つめ返す。 「意地悪じゃない。……俺にどうしてほしいか、お前の口から言ってみろ」 「……っ、そんなの……言えるわけ……」 「言わないなら、このままシャワーだけで終わらせるぞ?」  焦らすように指が離れそうになり、俺は無意識に彼の腕をぎゅっと掴んでしまった。  自分の恥ずかしい反応に顔が爆発しそうになりながら、消え入りそうな声で呟く。 「……やだ……っ。……柊一さんに、気持ちよくして……ほしい……っ」 「……よく言えました」  満足そうに目を細めた柊一さんにそのまま強く抱きすくめられ、逃れられない濃厚なキスの渦へと呑み込まれていった。

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