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プロローグ

 ——夢を見た。    頭を撫でる、大きな手。  子どもみたいに、男の膝の上で甘やかされながら、まどろむ。  ううん、と声が漏れる。頭上で小さく笑う気配がした。  ひさしから差し込むやわらかい陽の光が頬にあたってあたたかい。  衣擦れの音がする。すると、寒さが少しやわらぐ。  うっすらと目を開けてみると、肩まで羽織りを掛けられていた。 「寒くないか」  聞き慣れた、耳に心地いい声。  見上げれば、さらさらと流れるような銀髪が頬に触れてくすぐったい。日に透かされて光るそのやわらかな輪郭を眺める。  透き通った紫の瞳にじっと見下ろされる。何の表情も浮かべないその目に、わずかな気遣いが見えた気がした。 「うん……寒くないよ」  自然と笑みがこぼれた。すると、男の顔が近づいてくる。  そっと目を閉じると、頬を撫でられた。ひやりとした感触に、思わず力が抜ける。    唇に柔らかいものが触れて、胸の奥がかすかに震える。  男の手が頭に伸びてきて、優しく頭を撫でられた。  それが心地よくて、また静かにまどろみに沈んでいく。  温かいのに、どこか切ない。  その理由を考えかけて——頭の隅に押しやる。      ——夢を見た。    炎を反射して、畳に投げ出された血塗れの刀が鈍く光る。  目の前には、おそろしく巨大な白蛇が鎌首をもたげて見下ろしてくる。  その白く大きな鱗の隙間からは、だらだらと鮮血が滴っている。  熱い。熱い。  肌が焦げる。喉が焼ける。    大蛇がずるりと動いて、その胴体を静かに巻きつけてくる。自分を中心に囲うようにとぐろを巻いていく大蛇の姿をぼんやりと眺めた。    白蛇が、ゆっくりと口を開く。  細かく並んだ白い牙。  奥が見えない、暗い喉の奥。    紫の目が、じっとこちらを見据える。    そして────飲み込まれた。 『かごめ かごめ……』    どこからか、かごめ歌が聞こえた。  

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