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第1話 拾われたら、舐められて料理にされた件。〜燻製ピッグルとゴボロのなめらか寄せ〜

 「あ、舐めるなって……やっ……」  ライオンの獣人の舌が、蓮の柔らかい肌の上を這っていく。  なんで、俺は今舐められているんだ?  いや、気持ち良いんだけど?  やば……もっと欲しいかも……    |久我蓮《くがれん》、職業はソムリエだ。  先日、25歳の誕生日を迎えた日に、このレストラン『バルドバール』のオーナーシェフに拾われた。  仕方ないから働いている。今も閉店後のゴミ出しなどをしているが、本意ではない。  店の裏にあるゴミ捨て場に来ると、煌びやかな王宮の灯りが遠くに見える。  今日も舞踏会が開かれているのだろうか。 「王宮勤めの女を抱きまくったから追放ってなんだよ!向こうから抱いてくれって言ってくるから抱いたんだ!」  蓮は眉目秀麗なその顔を歪めてゴミ捨て場にゴミを放り投げた。    店の入り口に戻れば、最後の客が二人で出てくるところだった。先程、蓮がワインを注ぎながら、目線を向けただけで頬を染めていた女達だ。  完璧な礼で客を見送ると、しばらくしてから足早に戻ってきた。  なんだ、やっぱり惚れられてたか。  蓮は仕方ないと澄ました顔を向けて女達を待つ。 「あの、とても美味しかったです」 「それは良かったです」 「それで、もし良ければ……」  (きたきた、この後空いてますか?だろ?) 「シェフのバルドさんに伝えておいてください!」  (は?バルド?あの毛むくじゃらのどこに魅力があるんだ。確かに飯は美味いけどな、それだけだろ)  全く自分に靡いてなかった女達にイライラとしながら蓮は厨房に入った。 「おい、バルド、飯美味かったってよ」  フンと、不機嫌をそのままに蓮は丸椅子に足を組んで座った。 「なんだ、褒められたのに不機嫌なのか?」  蓮の様子に笑いながら、オーナーシェフのバルドは大きな手で蓮の肩を叩く。バルドはライオンの獣人だ。  力が強過ぎて痛い。 「蓮が最高の接客をしてくれるからな、俺の料理も美味く感じてもらえるんだ。|志岐《しき》もチェシュもありがとな。片付いただろ、もう帰っていいぞ」 「はーい」 「お先に失礼します」  バイトのチェシュと志岐がタイムカードを押していく。チェシュは猫の尻尾を振りながら、華奢な志岐の肩を叩き、からかいつつ二人で店を出て行った。 「二人とも素直で良いな。チェシュは明るくて、志岐は真面目で、さすが人間だ」 「俺は?」 「ん?なんだ、蓮はさっき褒めただろ」  そういう事では無い。宮廷時代は入れ食いのように女が寄ってきていたというのに、25歳になってから、ぱったりと女が来なくなった。こんな場末のレストランにいるからってのもあるだろうが、簡単に言えば、欲求不満だ。 「あーあ、やっぱり俺の人生終わってんだな……」  蓮は冷たい調理台に突っ伏して、下がりに下がった自己肯定感をどん底の言葉で表現した。 「ずいぶん疲れてるな。新しい環境は慣れないか?」 「そういうことじゃねぇの」  バルドは蓮を拾った手前、面倒を見る必要はあるだろうと、隣に立って、頭を撫でてやった。 「いや、ガキじゃねえ」  蓮より20cmは大きなバルドに横に立たれると、さらに自分が小さくなった気になる。 「そうか、なら、これならどうだ?」  ヒョイと調理台に座らされて、制服のベストとシャツのボタンを外された。 「は?なに、俺そんな趣味ない……んっ……」  獣人の、ましてや男を相手にする趣味など全く無い。蓮はバルドの近付いてくる頭を押し除けようとするが、抵抗など全く無意味で簡単に首筋を舐められた。 「ちょっ……やめろ……」 「ん?良いから大人しくしてろ。気持ちよくしてやる」 「はぁっ?ちょっ……おい……あぁっ……やだ……ぁんっ……」  バルドの舌は、首筋から胸、脇、脇腹へと進み、舐められるたびに、蓮は拒否をしつつも、ゾクゾクと快感を感じて息を乱してしまった。   (これは……ヤバい……気持ちいい……もっと欲しい……)  思わずバルドの頭に手を置き、舐めやすいようにと背を反らす。  立髪と髪が混じり合った、少しごわつく手触りだが、そのアタマが動くたびに、大きな舌が肌を舐め上げ、たまらない快感が生まれる。 「あんっ……バルド……もっと……」  さらに快感を得たくて、自分の胸の突起へとバルドの頭を誘導しようとしたら、舌が離れた。 「何?もっとしてくれよ……」 「蓮の肌はずいぶん滑らかだな。舐めていて気持ちが良い。人間だからか……」 「あぁっ……バルドの舌の方が……ぁんっ……たまんない……」  バルドは何かを確かめるように、蓮の腹から胸まで舐め上げ、仕上げに唾液で濡れた自分の口の周りをペロリと舐めた。  その真っ赤な舌を求めるように、蓮は唾を飲み、ジッと見つめ次を期待する。 「よし、これだな。良い案が浮かんだ」  ニヤリと笑ったバルドは、逞しい腕で口元を拭い、コンロに向かった。 「はっ?」 (え、俺、ここで放置されんの……?)  はだけた服もそのままに、バルドの手元を見れば、バルドはゴボロの土を洗い皮を剥いて茹で始めていた。  蓮は燻る体の熱に身を捩りながら、恨めしそうにバルドを見る。  料理に集中しているバルドは、茹でたゴボロを潰しに潰して原型を無くしていた。そこに、魔乳脂を加えて混ぜる。 「うわ、それ臭いだけだろ」  人間には食べ慣れない魔物の乳から作る脂は、一部の獣人の酒のつまみによく出されていた。蓮もそれに合うワインは見繕うが、魔乳脂自体は食べようとは思わない。 「臭いか?これが風味に変わったら最高だろ」  そう言って、バルドはピッグルの燻製も焼き始める。香ばしい匂いが厨房に広がり、蓮の空腹も刺激してきた。 「カリッと焼いた肉に、なめらかで風味の良いゴボロを添えて、出来上がりだ。食ってみろ」 「…………」  蓮はシャツのボタンを閉めながら調理台を降りる。  魔乳脂はあまり口にしたく無いと思いつつも、肉の香ばしい香りに、フォークを持った。  肉にペースト状のゴボロを乗せて一口。 「うまっ!何これ。ゴボロがトロトロなんだけど。舌触り最高じゃん!」 「だろ?蓮を舐めてたら、思いついた」 「俺の肌か……悪くないな」  蓮は、料理の味で自己肯定感を上げた。 (そうか、これなら……)  おもむろに、ワイン蔵に行った蓮は、一本のボトルを持ってくる。 「デュランのワインだ。渋みもあるけど、燻製の香りに負けない。後味はサッパリしているから、この料理ならこれだろ。開けて良いか?」 「おう、やってくれ」  蓮は腰のソムリエナイフでワインを開け、グラスに二つ注いだ。  一口飲めば、少し重たかった肉の脂がさらりと流れ、サッパリとした後味に、ゴボロの滑らかさが残った。 「最高のマリアージュだ」 「さすが、蓮だな」  バルドも同じ感想のようで、ワインを飲んで舌舐めずりをしている。  その舌の動きを、蓮は凝視して、ワイングラスを握りしめた。 「うぅんっ……」  舐められていた肌の熱を思い出し、つい、身体をクネらせてしまった。 (また、舐めてほしい……)

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