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第2話 舐められてたのに、俺だけガチだった件。〜ディオラとゴンの実のしっとりケーキ〜
『燻製ピッグルとゴボロのなめらか寄せ』は、すぐに人気メニューになった。
特にゴボロの滑らかさは、人間の女性客にウケが良い。
「本当に美味しい。バルドさんの料理、最高!」
カップルで一皿を分け合う二人は美味しいと笑い合っている。
「そちらは、デュランのワインと合わせると、最高のマリアージュになりますよ」
一杯いかがですかと、蓮は上手くワインを売る。その声と仕草と表情に、女性客は頬を染めながら注文してきた。
(やめてくれ、仕方ないのはわかるが、男の目線が痛い)
蓮が優雅にワインを注げば、女はウットリとその手先を見ている。
「どうぞ」
呆けた女にイライラしながら男がワインに口を付けた。
「わっ、マジか。なんだこれ美味い」
男のイライラはどこかに飛んでいき、口の中の感覚に支配されたようだ。
「え、そんなに?」
「これが、最高のマリアージュですよ」
蓮が笑いかければ、男は蕩けたような顔をした。
(男は趣味じゃないがな、そのゴボロの滑らかさは俺の肌だ。タンと味わえ)
腹の内でほくそ笑みながら、蓮は他のテーブルを見回した。
獣人のグループの卓が少し騒がしい。見ればチェシュが客の頬を舐めている。
おいおい、ここはそんなサービスもする店なのか?
自分のしているサービスは許容範囲だろうが、チェシュのは見過ごせないと、蓮はそのテーブルへ向かった。
「おい、お客様に何してるんだ」
チェシュの首根っこを掴んで客から剥がせば、ニャンと肩をすくめた。
(あざとい、可愛くない)
蓮はキッとチェシュを睨み、客には丁寧に頭を下げようとする。しかし、その様子に恐縮したのは客の方だった。
「悪い悪い、獣人同士じゃ挨拶みたいなもんなんだ。人間が居る前でするべきじゃなかったな。ここはオーナーも獣人だから、つい気が緩んじまって」
「挨拶ですか?」
「あぁ、お前達で言う握手か?そんな程度だ」
蓮の中で、ここ数日気になっていた事がつながった。
「それは、理解が足りずにお騒がせしてしまい申し訳ございませんでした」
チェシュを離して、綺麗に礼をすると、蓮はバックヤードに入っていった。
(なるほど。この前バルドに舐められてから、全く俺を意識していない理由がわかった。あれもただの挨拶。獣人的に言えば、肩叩きくらいだったってわけか)
蓮は深くため息を吐く。
(いやいやいや、あんな風に舐められたらバルドも欲情してると思うだろ。俺を舐めて、あんなになめらかな料理作るんだぞ?興奮してたんじゃないのか?俺はした)
頭の中では喋り続けているが、表情はクールなまま、ワインの在庫表を見る。
ただ、見ている。
(慰めてやるとか、大人しくしてろとか、気持ちよくしてやるとか、そんな事言われたら、勘違いするだろ!)
蓮の頭の中では、バルドの低く響く声で、色っぽく脚色され流れている。
(あの舌の感触は、快感は…………)
「俺だけが感じてたのかよ……ぅんっ……」
バルドの舌を思い出し、蓮の身体は熱を持った。身体がゾクリと震え無意識に自分で自分を抱きしめる。
「蓮さん?5番さんに、ボトルの説明お願いします」
「おう」
志岐に声をかけられ、蓮は何事も無かったかのようにフロアに出た。
閉店後、蓮はまた、ワインの在庫表を見ていた。
すでにチェシュと志岐は帰っている。
いつも通り、明るくご機嫌で帰っていくチェシュに、自分は舐めたくなる対象かと聞きたくなったが、仮にも女の子に面と向かっては聞けなかった。
「ここで悩んでても仕方ないな」
「どうした、悩み事か?」
蓮の呟きに、急に背後の頭の上から声がした。
蓮はわかりやすく身体を跳ねさせ、在庫表のバインダーを空中へ飛ばす。
「お?大丈夫か?」
バルドはなんとも無しにバインダーをキャッチして蓮へ返した。
じっとりと目線を上げれば、ライオンは逞しい腕を組んでニッコリと笑っている。
「燻製ピッグルとゴボロのなめらか寄せ、だいぶ売れるな。デュランのワインも売ってくれてるんだろ?蓮のおかげで商売繁盛だ」
バルドは嬉しそうに、蓮の肩を強すぎる力で叩いてくる。
「痛い」
「おぉ、悪い」
「なぁ、俺のおかげか?」
バルドの腕を掴み、一歩距離を詰めて蓮はねだるように目線を上げた。
「あぁ、蓮のおかげだ」
真っ直ぐに返してくる笑顔と言葉にムードを折られそうになるが、さらに身体を寄せ、バルドの頬に手を伸ばした。
「なら、ご褒美をくれ」
「ははっ、何が欲しいんだ?」
「また、舐めてくれ」
「ん?なんだ、疲れてんのか」
なんの戸惑いもなく、ヒョイと蓮を小脇に抱えて、バルドは狭いバックヤードから厨房へと場所を変えた。
(やっぱり、なんとも思ってない。まぁ、別に良いか。とりあえず、あの快感が欲しい)
蓮は自らシャツのボタンを外して、調理台に座らされた時にはもう、準備万端になっていた。
バルドは蓮の肩に手を置くと、少し身を屈めてペロリとひと舐めし、ニコリと笑う。
「あー、やっぱり舌触り良いな。蓮も疲れが取れるか?」
「んっ……足りない……」
求めていた舌の快感に、あっという間に蓮の身体は熱を持った。
熱の籠った蓮の言葉に、バルドは苦笑しながらペロペロと胸周りを舐めてくる。
「あ……ぁんっ……焦ったい!」
気持ちは良いが、胸の突起を上手に外して動く舌に、たまらずバルドの頭を掴んで、乳首に押し付けた。
「むっ……んっ……」
「ここ、が良い……」
押し付けられた場所は性感帯で、獣人の挨拶では嫌がられるだろうとバルドは戸惑う。
しかし、ここが良いと言われれば、人間はこれが常識なのだろうかと考えた。
舌先で少し触れて、蓮の様子を見る。ビクッと震えるが、表情は気持ち良さそうだ。
ならばと、ベロリと舐め上げたら、蓮は一際大きく嬌声をあげて、背を反らせた。
「あぁっ……はぁんっ……」
「悪い、なんか違ったか?」
「あふっ……違くない……もっと、もっと……してくれ……」
「大丈夫か……」
蓮の潤んだ瞳に戸惑いながら、バルドはまた、乳首を舐める。
「あぁっ……気持ち、良い……」
蓮がそう言うならと、また舐めれば、なんだか舌に当たる感触が違う。舐めるたびにどんどんと乳首が固くなっていくようだ。
「あぁっ……バルド、こっちの乳首も……」
蓮が示す方も舐めてやれば同じように硬さを持っていく。
なめらかな肌にコリッとした舌触り。バルドは空いてる方の突起を指で摘み、手でも感触を確かめる。
「あっ……あっ……それ最高……もっと、摘んで……噛んでも良い……」
「噛んだら痛いだろ」
昂った蓮をよそに、スッと身体を離したバルドは、また舌舐めずりをしながら考えている。
「あ……バルド……?」
(……嫌な予感……)
「よし、できた。これでいける」
そう呟いたバルドは、ファラの粉を抱えてきて、何かの生地を作り出した。
(だから!放置すんなっ!)
蓮は調理台に座ったまま、腕と足を組んで不機嫌を露わにつま先を揺らしていた。
そんな蓮にニコニコと笑顔を向けながら、バルドはディオラを溶かす。
そこに、また魔乳脂を加えて、ファラの粉の生地に混ぜ込んでいく。
ルムで甘さを足してから、何かの実を持ってきた。
「なんだそれ」
「ゴンの実だ」
「ゴン?」
「硬い歯を持つ獣人に人気の実で、とにかく固い」
蓮は渡された実を齧ってみるが、全く歯がたたない。
「こんなの入れたら客が歯を折るぞ」
「あぁ、だけどな、良いアクセントになると思う」
バルドはそう言うと、ハンマーでゴンの実を叩いた。
反動で、蓮の身体が少し浮いたかもしれない。
大人しく調理台から降りて、粉々になったゴンの実を見る。
「どうだ?人間でも齧れるか?」
バルドは実のカケラを蓮の口に放り込んで聞いてくる。
カリッという歯応えに、香ばしい香りが鼻に抜けた。
「あぁ、噛めるな。美味い」
ニコリと笑ったバルドはゴンの実を遠慮なくディオラの生地に混ぜ込んだ。
(美味いが、バルドだから粉々に出来るんだろうな)
自分の非力な腕を握りながら、バルドの逞しい腕が、オーブンに火をつける様子を見て、蓮は羨ましくなる。
獣人は、だいたいが魔法を使える。バルドは火魔法が出来るから、シェフをしてるのだという。
そんな特殊能力があれば、蓮も必死にソムリエの勉強なんてしないで何かしらの職に付けただろう。
(いや、バルドの料理はガキの頃からの修行の賜物か)
そんな事を考えている間に、料理は完成した。厨房に、甘い香りが充満してちょっとだけホッとする。
「仕上げは魔乳にルムを足して、甘く泡立てたクリームを添える。ほら、食ってみろ」
「また魔乳……臭くないか?」
「魔乳は脂にしなきゃ臭くない」
「へぇ……」
蓮は半信半疑だが、甘い香りにフォークを持った。
「うまっ!なんだこのしっとり感、甘いだけじゃない、ゴンの実がカリカリで香ばしくて、最高に美味い!」
「そうか!」
(なるほど、これだったら……)
嬉しそうなバルドは、蓮が考る素振りを見て、また口角が上がる。
「また、ワイン開けて良いか?」
「おう、何が合う?」
蓮がワイン蔵から持ってきたのは、ガバランで作ったワイン。早速開けてグラスに注ぐ。
「甘口だけど、渋みもあるワインだ。でも、多分これと一緒に飲めば……」
「甘いな」
「やっぱり、渋みが消えるな。これはまた、女が喜ぶマリアージュだ」
ニヤニヤと笑う蓮の頭に大きな手を置いて、バルドは豪快に笑う。
「また、蓮の身体からヒントを貰っちまったな」
「え…………」
「これ、舐めろって言っただろ?」
蓮のシャツは、はだけたままで、そこから覗く赤い突起を、バルドは指で弾く。
「あんっ……」
途端に蓮の身体が痺れ、ヘナヘナと丸椅子に座り込んだ。疼く身体を抱きしめながら、ねだるようにバルドを見上げる。
「責任取れよ……」
「責任?あぁ、そうだな。明日からこれを新メニューで出そう」
ニカっと笑ったバルドに、蓮はイラッとした。
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