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#62 セーラの決断

愛するベッキーと、自分を慕うロッティの目の前で。セーラは屈辱に唇を震わせながら、這いつくばってミンチンの股間へと顔を近づけていく。 ——その震える顔を、ミンチンの要求通り、その股間へと埋めようとした、その時。 「……くくっ、アハハハッ!」 頭上から、腹の底を揺らすような低い笑い声が降ってきた。驚いて顔を上げたセーラの顎を、ミンチンは面白くてたまらないといった様子で乱暴に掴み上げる。 「おいおいセーラ、本気か? まさか本当に、この下賤な連中の前で私に奉仕しようとするとはな。……お前のプライドも、ついにここまで地に落ちたか」 ミンチンは至極上機嫌な様子で目を細め、セーラの頭を犬のように撫で回した。アルファとしての強烈な支配欲が、絶対的に屈服したオメガの姿によってこの上なく満たされていた。 「よかろう。お前の『誠意』、しかと受け取った」 ミンチンは衣服を整えると、部屋の隅で固まっているラビニアや生徒会の面々、そして床に這いつくばるベッキーとロッティに向けて冷たく言い放った。 「お前たち、全員下がれ。……これより先は、私と私の『番』のプライベートな時間だ」 「は、はい……っ。失礼いたします……!」 ラビニアたちが慌てて部屋から退室していく。 扉が閉まり、静寂が戻った院長室。安堵する間もなく、セーラは首輪を引かれるようにして、隣に併設されたミンチン私室へと連れ込まれていった。 ◇ 窓越しに遠く、午後の授業を告げるチャイムと、生徒たちの微かな声が漏れ聞こえてくる。のどかな昼下がり—— 重い貞操帯をつけたまま、セーラはミンチンの望むままに、ただひたすらに口元で甘い奉仕を尽くした。 「……ふぅ。お前も随分と、私の扱いが上手くなったな」 事後。シーツの上で深く満足げな吐息を漏らすミンチンは、これまでにないほどの上機嫌だった。 彼はガウンを羽織り、タバコに火をつけると、先ほどラビニアがベッキーの部屋から没収してきた『一通の手紙』をヒラヒラと振ってみせた。 「さて、セーラ。お前を庇おうとしたあのメイドが、切り札のつもりで隠し持っていたこの手紙だが……」 ベッドの端に身を丸めていたセーラは、ビクッと肩を震わせた。 「お前がアーメンガードを唆し、外部へ連絡をとらせようとしたのだろう。アーメンガードはそれをデュファルジュに託し、奴は学園の検閲をごまかすため、自分宛ての私信に偽装して受け取った……お前たちが裏で細工した、忌々しい密書だ」 「……っ!」 「だが、ご苦労なことだな。この手紙の大元——クリスフォード氏の代理人である弁護士、カーマイケルからの報告書によれば、お前の死んだ父親が投資していた『ダイヤモンド鉱山』の事業は、見事に大成功を収めているらしい」 「……え?」 「つまり、お前は無一文の孤児などではない。この手紙が証明する通り、使い切れないほどの莫大な遺産を相続できる、大富豪の跡取りというわけだ」 セーラは目を見開いた。父の事業が失敗したという話は、誤報だったのだ。 呆然とするセーラを見下ろし、ミンチンは紫煙を吐き出しながら残酷な笑みを浮かべる。 「さあ、ここからが本題だ。……私はお前に、2つの『選択肢』をやろう」 ミンチンは手紙をセーラの目の前に放り投げた。 「1つ。この手紙を持って、学園を出ていくことだ。弁護士の元へ行けば、莫大な遺産が手に入る。その貞操帯の鍵も開けてやろう。お前は一生遊んで暮らせる自由な大富豪に戻れる。……だが、その場合、お前が庇ったあのメイドと妊娠した生徒の命の保証はない。反省室の底で一生腐らせるか、娼館に売り飛ばすか、私の好きにさせてもらう」 「……っ」 「2つ。遺産の手続きはすべて私(学園)の管理下に置き、お前はこの黄金の鳥籠に残り、一生私の『番』として生きること。……もしこちらを選べば、私はお前に、あの2人の処分を決める『裁量権』を与えよう」 それは、あまりにも残酷な究極の選択だった。 自由と莫大な富を手に入れて、自分だけが助かるか。それとも、愛する者たちを救うため、一生をこの男の奴隷として捧げるか。 (……そんなの、迷うはずがない) セーラの目に、もはや迷いはなかった。どれだけ屈辱的な仕打ちを受けようと、貞操帯に縛られようと、自分が犠牲になるだけでベッキーやロッティの未来が守られるのなら、安いものだ。 セーラは乱れたシーツの上で真っ直ぐに背筋を伸ばし、ミンチンを真っ向から見つめ返した。 「……僕は、ここに残ります。あなたの番として」 「ふっ……くはははっ! そうか、そう言うと思っていたぞ」 ミンチンは歓喜に肩を揺らし、愛おしそうにセーラの頬を撫でた。自由になれる翼を与えられてなお、自ら鳥籠の扉を閉めたこの気高いダイヤモンド◇プリンスを、ミンチンはたまらなく欲しかったのだ。 ◇ 数日後。 セーラに与えられた「裁量権」により、ロッティとベッキーの処分は極秘裏に変更された。 妊娠が発覚したロッティは、退学ではなく『体調不良による長期休学』という穏便な名目で実家へと帰還することになった。安全な場所で、誰にも知られずに出産させるためだ。 そして、一生反省室送りになるはずだったベッキーは、これまで通り『学園の使用人』として留まることを許された。 おわり 62話グラレコ https://fujossy.jp/fanarts/8223 — その後、セーラのお腹は少しずつ大きくなっていきましたが、お腹の子の父親が誰かは結局分からないままでした。やがて無事に生まれた子供の第二の性は『ベータ(β)』でした。※つまりベッキー(60話参照)かラムダス(57話参照) それから数年後、ミンチン院長は病でこの世を去りました。彼が事前に遺産の手続きをうまく済ませてくれていたおかげで、セーラは莫大な富とこの学園の実質的な所有権を正式に相続することになります。以降、セーラはベータの子供、そしてベッキーやラムダスと共に、学園の新たな支配者として平和な日々を送りました。 ……そして、新たな春。 学園に、かつてのセーラのように無防備で美しく光り輝く、転校生が現れます。それは嘗ての『ダイヤモンド◇プリンス』かのような…… 誰もいなくなった豪奢な院長室。窓からその純真な新入生の姿を見下ろし、セーラはかつてのミンチンと全く同じ、昏く冷酷な瞳で艶やかに微笑むのでした。 — 最後までお読みいただき、ありがとうございました。(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)ペコリ 作品を気に入っていただけましたら、ぜひ評価で応援していただけると励みになります。 これからもよろしくお願いいたします。m(_ _)m

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