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エピグラフ(11)

──エリックは、自分の腕にそれなりの自信を持っていました。基礎は理解しているつもりでしたし、アルダスの古臭いやり方に苛立ちすら覚えていました。効率よくこなせば、もっと早く仕上げられるはず──そう信じて疑いませんでした。  だからこそ、初めて調合を任されたとき、エリックは自分流の手順で薬を仕上げてしまったのです。  仕上がった薬は見た目も香りも問題はありません。けれども、客が顔に塗ると数秒後には赤黒く腫れ上がり、火ぶくれのように変色していきました。 「いったい何だ、これは!」  怒り心頭の客は、荒々しく椅子を蹴飛ばして立ち上がります。 「アルダス。弁償してもらうぞ!」  そう言い捨てて、店を後にしました。  アルダスはその場に崩れ落ちるように腰を下ろし、顔を両手で覆いました。 「……もう、この店はおしまいだ」  その言葉に、店内の空気が一気に冷え込みます。  エリックは、何がいけなかったのか、なぜこんなことになったのか。何も分からないまま呆然としていました。 『アルダスとダブラー:二人の錬金術師』第13章より

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