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第11章:金色の指輪(4)
湊は店の二階にあるダブラーの部屋にいた。男の一人暮らしとは思えないほど、きれいに片付いて整理整頓された部屋。酒とタバコとバニラ。ダブラーの匂いで満ちた空気を、湊は胸いっぱいに吸い込んだ。
ダブラーは突っ立ったまま湊を見つめていたが、やがて一枚ずつ服を脱ぎ始めた。それを合図に湊も服を脱いでゆく。肌が露わになるたび、湊はダブラーの視線を痛いほど感じて、火照ってくるのが分かった。
最後の一枚を脱ぎ捨てる。初めて見るダブラーの体。意外と鍛えられていて、無駄に弛んでいるところはない。太い腕に太い脚、大きなお腹。そして股間からまっすぐにそそり立つ太い一物は先走りで濡れ、てらてらと光っていた。
「きれいだ……」
ダブラーはそう言って湊の肌を大きな手のひらで撫でる。ごつい指先が器用に感じるところを捕らえて、思わず湊は声を漏らした。そのまま腕の中に抱きすくめられる。
「もっと感じてくれ。おまえの声が聞きたいんだ」
ダブラーの手がせわしなく湊の体を這いまわる。湊も遠慮がちに手を動かし、ダブラーを感じていた。唇が重なる。今度は舌を絡め合って、お互いの劣情を交換した。
湊は寝台に横たえられる。その上にダブラーが覆い被さってきた。幸せな重みが全身に広がる。続いて、口づけの嵐。湊の体に一つずつ跡が残される。まるで俺のものだと言わんばかりに。
そして、一番感じるところが口に含まれる。舌先で転がされるたびに、湊は自分でも信じられないくらいはしたない声を上げた。ダブラーの気が済むと、次は腰を持ち上げられた。秘密の蕾が月明かりに照らされて露わになる。
ダブラーはそこもためらいなく舌を這わせてきた。「汚いからやめて」と湊が懇願しても、「黙ってろ」と言って取り合おうとしない。ピチャピチャと舐める音が聞こえて、湊は顔を赤らめた。
どれくらい愛撫されていたのか。ようやく解放されて、体がふと軽くなる。ダブラーは自分の一物に潤滑剤を塗っているようだった。湊の蕾にも塗りたくられる。
ダブラーの顔が近づく。
「覚悟はできているか?」
湊はこくりと頷いた。こうして誰かを受け入れるのは久しぶりである。まして、この体はクォークのものであって、自分のものではない。本当にダブラーを受け入れられるのか自信は無かった。けれども、今さら引き返すことはできない。
ダブラーの一物が湊の蕾に宛がわれる。ゆっくり、湊の反応を確かめるようにメリメリと入ってゆく。痛みが全身を駆け巡る。湊がこんなに痛かったっけと驚くほどに。
根元まで入ったのか、ダブラーの動きが止まる。全身に汗をかいていて、湊が手を伸ばして触れると濡れた肌がひんやりとした。
「俺たち、やっと一つになれたな。嬉しいぞ」
ダブラーがニヤリと笑う。湊も釣られて笑顔を見せた。それがダブラーに火をつけたらしい。急に湊を抱きすくめると、腰を激しく動かし始めた。
絶えず押し寄せる痛みに、湊はダブラーの大きな体にしがみつく。寝台がギシギシと軋む音がする。口づけを強請ると、ダブラーは湊の息が止まりそうになるほど強く吸いついてきた。そのうち体は緩んで、湊は快楽の波に翻弄された。
「おまえは俺のものだ。もう二度と離れるんじゃねぇぞ」
湊は何度も頷く。ダブラーの腰の動きが早まる。もう限界が近づいているのが分かった。
「おまえの中に出すからな。全部受け止めてくれ」
答える代わりに、湊はダブラーの腰に腕を回し、強く自分の体に引きつけた。
「おぉ、愛してるぞ」
そう言ってダブラーは腰を強く突きつけたままの姿勢で止まった。温かいものが湊の体の中に入ってくる。やがて、ダブラーは荒い息を吐きながら崩れ落ちた。湊は優しく受け止めて、汗で濡れたその体を手のひらで撫でる。
呼吸を整えると、ダブラーは「今度はおまえの番だ」と言って、まだ屹立している湊の一物を握った。
「ぼ、僕はいいですから……」
湊が慌てると
「そんなの許さねぇぞ。俺はおまえが果てるところを見たいんだ」
と睨みつけてきた。その気迫に圧倒されて、湊は体を委ねる。
ダブラーは口づけと手の動きで、湊に快楽を与えてきた。そのたびに喘ぎ声が漏れてしまう。
「可愛いな。ますます好きになってしまいそうだ」
ダブラーが耳元で囁く。ぬめりのある声が絡みついて、湊は背筋がぞくぞくするのを感じた。
もう限界が近づいていた。湊の一物が破裂しそうなくらい漲る。だが、そこでダブラーの手の動きは止まってしまった。
湊は懇願するようにダブラーを見つめる。どこか試すような、けれども、優しさの滲んだ笑みが浮かんでいた。
「どうして欲しいか、俺に教えてくれよ」
「でも……」
恥ずかしさが先立って、湊は口にできない。困惑を露わにする。
「そんな顔して……言葉にしねぇと分からねぇな」
「ダブラーの意地悪……」
「ああ。好きな奴にはちょっとな」
湊の一物はダブラーの手の中でヒクヒク動いていた。欲望に理性が負けて、湊はつい口走ってしまう。
「イかせてください」
「ん……もう一回、ちゃんと」
「僕をダブラーの手でイかせてください」
ダブラーは満足そうに目を細める。
「潤んだ目をして。堪らねぇな」
そう言うなり、手を早く動かした。湊は肩を震わせ、小さく嗚咽のような声を漏らす。すべてを明け渡すように、ただダブラーの腕にしがみついた。
「ダメ、イっちゃう」
「イけよ。思いっきりぶっ放せ」
「ダブラー!」
湊の体が引き攣る。次の瞬間、一物から白い液体が弧を描いて胸や腹にかかった。とめどなくあふれ、白い水溜まりを作る。ダブラーは愛おしげにそれを自分の指に絡めた。
「たっぷりと出たな」
「ごめんなさい。ダブラーの体も汚しちゃったね」
湊はダブラーの腹についた白い液体を拭う。
「構わねぇさ。おまえの果てるところが見られたんだからな。色っぽかったぜ」
ダブラーはニヤニヤと笑う。湊は膨れて何か言おうとするが、すぐに口づけでふさがれた。
「おまえの感じるところを見ていたら、こんなになっちまった」
そう言ってダブラーは、湊に自分の一物を握らせる。それはまた硬さを取り戻していた。
「いいだろ? もう一回」
懇願するダブラーに湊はクスッと笑う。そして応える代わりに一物を扱き始めた。
※
出会ってからの長い空白を埋めるように愛し合った後。湊は、ダブラーの大きな体に寄り添っていた。
「俺、とても幸せだ。おまえはどうだ?」
ダブラーの汗ばんだ手のひらが、湊の髪の毛を撫でた。
「……僕も幸せです」
まん丸い顔が近づいて唇が重なる。何度目かの口づけ。そのたびに湊は安らぎを覚えた。
「僕はあなたの弟子として、もっと役に立ちたいんです。あなたを一番近くで支えたい。でも、本当は……」
湊を抱く腕に力がこもる。
「ただ、あなたと一緒にいたい。それだけです」
ダブラーは湊に覆い被さり、じっと見下ろした。
「理由なんていらねぇよ。そばにいてくれるだけでいいんだ」
「ダブラー……」
「”愛”ってそういうものだろ?」
ダブラーは照れ隠しのように鼻を擦る。思わず湊はクスッと笑った。
「ずっと笑ってろよ。その方が可愛いぜ」
二人は再び一つになろうとする。全身が酒とタバコとバニラの匂いに包まれた。湊が嫌いだったはずの匂い。今では何よりも愛おしかった。
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