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「まあこんなものか」  ぼそりと言って、リオナが手首に付けられた枷を外した。 「……はっ?」  アイレは眉間にしわを寄せ、二度見した。  手枷が外れている。どう見てもいま、リオナは普通にそれを外した。横たわっているリオナの人形に手枷を付けると、その人形の額にとんと人差し指を宛がった。  聞いたことのない言語だ。たった一言リオナが発したそれは、周囲の元素を取り込むようにして形作っていき、その人形の中に吸い込まれるかのように消えていった。  ふっと息をする音がした。人形だったそれが、ピクリと動く。アイレは大声を出しそうになって、口を塞いだ。 「えっ? ちょっ、なっ?」  くぐもった声で、リオナの人形を指さしながら。リオナはそれを横目で睨むと、長い前髪を掻き上げた。 「ただ脱獄するだけなら馬鹿でもできる。追手に動向を知られるのは面倒だ」  冷静な口調で言ってのけ、リオナは自分の人形の顎を掴んで顔をあげさせた。 「俺の身代わりにさせるのは忍びないが、大事な計画のためだ。  なるべく“処刑を引き延ばせ”。さらし首になろうが、焼かれようが、その存在が消えるまで、おまえは“レオナード・クロトス”だ。ーーいいな」 「承伏した」  「ひえっ!?」と、アイレの情けない声が上がる。 「やっべーな、その魔法。声まで同じなんて、そんなこと……」 「グダグダ言っていないで手を貸せ。塔から出るにはおまえのエレメントが必須だ」  ぞんざいに言ってのけるリオナを見下ろして、アイレは大袈裟に肩を竦めてやった。 「はいはい、仰せのとおりに、王様。最初から俺の解錠魔法が必要なんじゃなくて、“風”が要るんだって素直に言えよ」  言いながらリオナの腕を引き、軽々と持ち上げる。  リオナとアイレはゆうに10cm近く身長差があるが、リオナはライオンの獣人にしては華奢で、細い。  とはいえ、やはり身長差のあるアイレに簡単に抱き寄せられたことが意外だったのか、リオナはなにも言わずに目を瞬かせた。 「ふつうに力もあるけど、風のエレメントを応用すればこんなんも朝飯前なんで」  得意げに言ってやる。リオナは冷めた目でアイレを見下ろして、すいと視線を逸らした。 「早くしろ。近衛兵の巡回の時間が差し迫っている」 「了解」  アイレは塔に上る前に予め構築しておいた魔法式を、牢の壁にトレースした。

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