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第1話

長い入院生活を終え、ようやく自由の身となった。心待ちにしていた普通の生活が待っている。 ――そのはずだったのに。 602号室。 「ここか……」 管理人さんから預かった鍵を差し込み、静かに扉を開ける。四畳ほどの部屋に、清潔なシーツがかけられたベッドと小さな勉強机。 病室とは比べものにならないほど広いクローゼットが目を引いた。 大部屋での生活も、それなりに楽しかった。けれど――自分だけの空間があるというだけで、胸が高鳴る。 部屋の隅には、事前に送っておいた段ボールが積まれていた。手持ちで持ってきたカバンをその上に置き、まずはベッドに身を投げる。 「……はぁぁ……このベッドマット、最高……」 柔らかな寝心地に、思わず頬が緩む。 加藤先生にこの学校を勧められた時、正直なところ気が進まなかった。 けれど今は、この選択で正しかったかもしれないと思える。 見学に来たときに案内してくれた教師は、とても穏やかで優しい雰囲気だった。 校舎も宿舎も一昨年に建て替えられたばかりで、どこも新しく清潔だ。 本当は、地元の普通の学校に進学するのが第一希望だった。 だが持病のこともあり、何度も加藤先生と面談を重ね、まずはこの学校で“訓練”を積み、将来のことを考えることになったのだ。 この学校には、身体や心に病気や悩みを抱える者のための特別なクラスがある。 医師免許を持つ教師が在籍しているのも、このクラスならではの特徴だ。 もっとも、ここはあくまで【訓練】を目的とした場だという。規律は厳しいと聞かされている。 それだけが、少し不安だった。 けれど、もし雰囲気が合わなければ相談していい――そう加藤先生も言ってくれている。 まずは、ここでの生活を始めてみよう。

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