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第6話

初日の疲れが重くのしかかっていたのか、眠りは驚くほど深く、目覚めた時には朝の光が差し込んでいた。 朝食をとるや否や、慌てて保健ノートに体調記録を書き込む。これを提出するのが毎朝の決まりだ。書き終えると、ノートをカバンに詰め、息をつく暇もなく部屋を飛び出した。 「やばい、遅刻だ……!」 急いで鍵をかけ、廊下を駆け抜ける。 宿舎から校舎までは、一度三階に降りて中通路を渡っていく。 運動が苦手な僕には、この距離を全力で走り抜ける体力はない。徐々に足は重くなり、呼吸は肩で荒く上下を繰り返した。 「はぁ…はぁ…」 ようやく教室の扉が見えた時、始業のチャイムはとうに過ぎ、すでに10分遅れていた。 扉の前には吉澤先生が立っている。時折、廊下をキョロキョロと見渡すその姿は、まるで遅刻者を待ち構える番人のようだった。 (やばい……絶対叱られる) 恐る恐る近づくと、足音に気づいた先生が振り返る。大きな目と目が合い、僕はその場に立ち止まった。 「遅刻」 「……はぃ……」 吉澤先生は無言でバインダーに登校時刻を書き込み、こちらに歩み寄る。 「気をつけ」 背筋を伸ばし、姿勢を正す。 「遅刻理由は」 「……支度にてこずって……」 「前日に準備してなかったのか?」 「……はぃ……」 「明日は事前に準備して、遅刻しないように」 「……はい」 冷静な声色と淡々とした態度に、胸の奥がひやりとする。吉澤先生はやはり厳しい。保健ノートを渡し、目立たぬように教室へ入る。だが、無情にも僕の席は教室中央の最前列だ。視線の全てが突き刺さる。 「おはよう」 杉田先生が軽く挨拶をする。今日の先生は黒いジャージ姿で、やや茶色がかったパーマの髪が揺れている。 「あっ……」 思わず声が漏れ、また視線が集まる。 「水野さん、どうした?」 「……なんでも……」 ――ジャージを忘れた。今日、三時間目は体育だ。 ・ ・ ・ ホームルームが終わり、教室が少しだけ賑やかになった頃。僕が筆箱を取り出していると、杉田先生がしゃがみ込み、目線を合わせてきた。 「体調悪いわけじゃないんだよね?」 「……はぃ。」 「加藤先生とは昨日話せた?」 「はい」 「オッケー」 杉田先生はポンポンと背中を軽く叩き、立ち上がる。そして吉澤先生のもとへ行き、何やら打ち合わせを始めた。 少し照れくさい。でも、気にかけてもらえるのは、やっぱり嬉しいものだ。

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