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第5話
時計の針が19時を過ぎても、スマホは沈黙を守ったままだった。
加藤先生からの電話はまだ鳴らない。静かな部屋の中で、やけに大きく響くのは自分の心臓の鼓動だけだ。胸の奥にじわじわと緊張が広がっていく。
――当直なのだろうか。それとも急患が入ったのか。
頭の中で何度も同じ考えがぐるぐると巡る。時計の針が進むたびに、落ち着かない気持ちが増していく。
その時不意に――
ブーブーブー。
「!!!」
心臓が跳ねた。画面に浮かぶ『加藤先生』の文字。慌てて通話ボタンを押す。
「はや〜」
ワンコールで出てしまった僕に、電話越しの笑い声が返ってきた。待ち構えていたことが一瞬でばれて、頬が熱くなる。
「……ぃゃ……なんか押しちゃっただけで……」
「ふーん、まぁいいや笑。入学おめでとう」
その優しい声音に、胸の奥がじんわりと温まる。懐かしさと安心感が混ざった感情が押し寄せ、思わず小さな声で答えた。
「…あり…がとうございます…」
ぎこちない沈黙を埋めるように、加藤先生が言う。
「体調どう?」
入院中、毎日のように聞かれたその言葉。記憶の引き出しが一気に開き、あの日々の感覚が蘇る。
「…ぅん……まっ……ぃつも…な感じ」
声が上ずってしまった……
「なんかあったなー」
さすが加藤先生。加藤先生には、何も隠せない。
迷いが胸を締め付ける。このままやり過ごすか、正直に言うか。
「…なにも……」
「勃起しちゃったんでしょー」
「!!!」
図星を突かれ、言葉が喉に詰まる。
「…は…ぃ。」
もう、それしか答えられなかった。
「どんなシチュエーション?」
……それだけは言えない。沈黙が少し流れる。
「…ぼぅ……ってしてて」
「そんななんでもないシチュエーションで勃ったなら問題なんですけどー」
加藤先生の声が低くなる。背筋がすっと冷えた。
「じゃなくて……あの……」
「本当の事言いな。俺を騙すことはできないよ」
逃げ場がない…壁際に追い詰められた気分だ。
「……杉田先生……を初めて見て……まぁ…なんか…」
はぁぁ…言っちゃった。
加藤「なるほどー。杉田みたいなのがタイプだったのか」
ちがーう!!そうじゃない!
「それで、どう鎮めたの?杉田に抜いてもらった?」
『こら』
電話越しに聞こえた別の声。佐々木先生だ。心の中で「電話を代わってください」と叫んだ。
加藤「冗談。自分で鎮められた?」
りく「……はい。」
加藤「それならとりあえずいいよ」
胸の奥で大きく息をつく。病院行きはひとまず回避だ。
加藤「でも明日以降も続くなら一旦病院来て」
……ガーン。
りく「………はぃ。」
加藤「あと因みにだけど、杉田は雰囲気イケメン」
ピッ
あっ……間違えて通話切っちゃった。まぁいっか
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