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第1話 お尻召喚されました

 気怠い夕方の混み合った電車内。  チビで地味な僕、熊倉匡人は反対側の窓にぎゅうぎゅう押しつけられる。  左隣にむさ苦しいサラリーマンの小デブおっさんが汗かきながら押してくる。くっそ!どうせなら可愛い女の子が良かった!!  そして右隣にはなんとも清々しいくらいのイケメンがいた。なんか……どっかのモデルにいそうな肌艶も良く今風の髪型で前髪を横に流し毛先を跳ねさせていた。  北高の制服だ!頭いい高校だ!!  僕なんて西の平凡高だよ……。髪だって千円で理容師のおっちゃんに適当に切られたどんぐりみたいなヘアーだ。正直自分でもダサい人種である。  と思っていると電車が動いたタイミングで!!あろうことか僕のお尻を触ってる変態がいる!!  僕は瞬時におっさんを睨んだ!!  この痴漢野郎が!  僕は男だぞ!ど変態め!!車掌に突き出してやる!  と決めて電車が止まりそうになるまで我慢して僕は耐えた。尻を揉まれとるけど我慢だ!  そして次の駅に停車した瞬間手が少し離れ慌てて僕はおっさんの手を掴み 「この人!痴漢です!!」  と騒いだ!!  驚いて皆がおっさんに注目しておっさんは 「は?ち、違う!何で私が!ふざけるな!男なんか触るか!!」  と言うが見た目で判断されおっさんは鉄道警備員に連れて行かれて僕も事情を説明して帰る頃には日が暮れていた。近くにいたイケメンくん、北高の門悠里くんも事情聴取に付き合わされていた為、一緒に帰ることになり、僕等は知り合いになった。 「災難だったね。でも知り合えてよかった。また被害に遭ったら助けられる」  と笑うのがカッコいい。  二人して帰っていると…急にぐらっと視界が揺れ……そして……僕達はーー  *  何か……祭壇のような場所にいる。  視界のぐらつきが収まったと思ったら見たこともない所にいる。  金ピカの桃みたいな金属の像が所々にあって周りには人がいっぱいいて……白い服を着たおっさん達が僕と門くんを見てワーワー騒いでいた。 「!?」  驚いているとおっさんが 「ようこそ……救世主さま……!早速ですが……お尻のチェックを……!」  とおっさんに尻を撫でられ僕は 「ぎゃあ!!」  と叫ぶ。 「おおお!こ、これは!!凄い!!凄いぞ!!凄いパワーを秘めておる!!これで世界は救われる!救世主様はこちらの方に違いない!」  しかし一応門くんも触られた。  門くんは頭に来ておっさんをしばいていた。 「この変態が!何しやがる!」  全くその通りだ。 「ふむ、やはり貴様からは何も感じない。ふん、クソ尻め!」  と吐き捨てるように言った。  イケメンに向かって失礼なおっさんだ! 「しかし異界から来た者だし無碍にはできんな。仕方がない。お前の滞在も許してやろう。クソ尻」  と言う。おっさん……ほんとやめろよ。門くんは怒りで震えている。  その後、なんかお付きの人?から説明を聞いた。リュカくんと言うらしい。  中学生くらいに見える。 「あの……ここどこ?異界とか言ってなかった?」 「ここはオオジリ教の本部でございます。救世主さま」  とリュカくんは畏る。いやなに?オオジリ教て?宗教?ふざけてんの? 「クマクラマサト様は……このオオジリ教の救世主となりました。稀に見る力をその美尻に蓄えていらっしゃり……触れたものは誰でも病気が治ると言われております!!」  と、とんでもない事を言われた。  僕の尻にそんな力が!? 「そう言えば……この世界……女の人がいなくないか?さっきから男ばかりとしかすれ違っていないぞ」  と門くんが不思議に言う。  確かに。いくら宗教でも女性だっているはずなのに。  そこでリュカくんが不思議そうに 「あの……ジョセイとは何でしょうか??わかりません」 「女の人だよ!オンナ。メス。いないの?」 「は、はあ??」  と本気で伝わらない。女という単語はやはり無いのか? 「えっと、胸が膨らんでて下半身に息子が付いてない人だよ!」  と言うと余計に変な顔をした! 「あの、そう、君のお母さんは?」 「え?カアサン?」  と訳の分からない事を聞かれたみたいな顔しないで! 「つまりお前は誰から産まれたと聞いてる。そいつが女だろ?」 「ああ、親のことですか?私の父ですね!両父とも健在ですよ!いいお尻から産まれてくれたと父達も喜んでおります!」  と言う。  僕は門くんと顔を合わせてここがようやくおかしな世界だと悟る。ヤバイ世界にきちゃった!  整理するとここには女性はおらず、男しかおらず、男同士で結婚でき、子供も何故か授かる!気持ち悪い世界!  そして僕の尻で、病気の人を治せるという。  何それ。  門くんは召喚に巻き込まれたクソ尻異界人とされこんなイケメンなのに哀れな目で見られる始末だ。僕なんか通り過ぎただけで尻に向かって拝まれた。  ちなみに帰れないらしかった。  最悪。 「嘘だろ……BJB48のライブこの前あたったのに……行けないなんて……」  と僕は豪華な部屋に通され大きなベッドの上でため息をついた。  そこかしこにあの例の尻の形の像が置いてあり気持ち悪い。女の尻ならまだしも男尻だ。やめてくれ、何の悪夢だ。  そこへこっそりと門くんが会いにきた。部屋を見て自分の部屋と比べて文句を言う。 「俺の部屋……凄いよ?藁が敷いてあったよ……何この格差」 「ええっ!?ひど!明日文句言ってやる!!」 「とにかくここ、出たほうがいいぞ?ヤバイ宗教ぽいし、尻で病気治すって……。  毎日……他人に尻撫でられるってことだぞ?」  確かに……病気の人を治すなんか言ってるけどこんなとこにいきなり召喚誘拐されてもな。僕は普通に生きたい。冗談じゃないよ。尻で人を救うとか。  言っとくけど僕は医者でも神でも無い。もし僕の尻に力があるとか言われてもこんなとこで一生暮らすなんてごめんだ!!  女の人も探せばどこかにいるんじゃないか?  とにかく逃げ出すことに僕と門くんは決めた。元の世界に戻る方法も探さないとね。

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