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SS「敦貴のアルバイト」

大学生になってからというもの、圭吾が働く花睡研究所で時々アルバイトをしている。 今日は、九回目の人生を生きる人々が集うシンポジウムが開催されていて、俺はロビーにある受付で資料を配っていた。 「敦貴、もう始まるので私は中へ入ります。遠方からいらっしゃる方が三名、飛行機の遅延でこれからお見えになるので、このまま健太くんと受付で待っていてもらえますか」 「了解、任せて」 圭吾に指示をされ、俺は健太と二人、受付に残った。 ロビーで雑談していた人々も皆、ホールの中へ入っていく。 やがてシンポジウムが始まり、堅苦しい話をしているのだろう誰かの声が、音漏れして微かに聞こえてきた。 「暇だなー」 健太はあっという間に暇を持て余し始める。 彼と初めて会ったのは、俺が高校三年生のクリスマスの日。 軽トラックで百本以上のダリアの花を受け取りに来た一人だが、その後、顔を合わせることが何度かあり、会話をするようになった。 「なぁ、この会場のすぐ裏にめっちゃ美味いたこ焼き屋があるんだけど、敦貴は食べたことある?」 「えっ、知らない。うわ、食べ物の話とかするなよ、健太。腹減ってきただろ」 「今から食いに行こうか」 「は?受付はどうするんだよ」 「遅刻してくる三人は子どもじゃないんだからさ。しかも思慮深い九回目様だぜ。メモでも残しておけば大丈夫だろ」 なんだろう、この感じ。 圭吾の手前、常に「ちゃんとしなくては」という心持ちでアルバイトに励んでいたが、健太の言うことがとても魅力的に感じる。 「確かに、いいアイデアかもな」 「だろ?」 俺たちは、白紙にマジックで「資料をお取りください」と書き、受付のテーブルに養生テープで貼りつけた。 「よし、いくか」 「おぉ」 俺たちは我先にとホールを飛び出して行く。 こうして友達とくだらないことをする感覚が、とても懐かしい。 「あのさ。俺たち、八回目でも友達だったかもな」 そう口にしてみると、健太が笑う。 「だとしたら、俺のほうが頭良かったと思うぞ」 「いや、絶対に俺だろ」 俺の頭の中には、光夜の友達だったオシャレで寒がりな和登の顔が、浮かんでいた。

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