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第8話
「ここから先はシャワー浴びてからだな」
いきなり柊一さんが言い出した。俺は途中で終えられて不満気に文句を言う。
「七瀬もシャワー一緒に浴びるか」
「…うん」
何言っても、結局この人には逆らえないのだな、俺は。
初めて柊一さんと二人で浴室に入る。
柊一さんが浴室に置いてあるボディソープを手に付け、俺はシャワーを取り出してお湯を出す。辺りが湯気でやや視界が遮られる。
「……!」
柊一さんの手が身体に触れる。ボディソープを手に付けた柊一さんは俺の身体を撫でまわす。
「大切なとこもしっかり洗わないとな」
既に固くなっている俺のモノを触り、軽く扱 く。
「あ…う…あ…あ…」
思わず声が零れる。言葉にならないその声は柊一さんの欲情を煽ったのか、俺のモノを持つ手の動きが加速する。
「だ…だめ……っ」
「何がダメだって?」
柊一さんの声が冷ややかに聞こえる。
「だ…だ…だめ…そ…んな…に…さ…され…たら」
「ここ気持ちいいだろ」
ちょうどペニスの裏筋部分。そこを彼は触れてくる。
「は…はう…あ…あ…」
言葉にならない喘ぎが続く。同じ男だから、どこが一番性的刺激に弱いのか知っているのだ。
やることなすこと全てずるい。俺は柊一さんに性を叩きつけられ、子犬のように鳴く。
先走って体液のようなものが俺のモノから出る。
「七瀬、早すぎ」
「だ…だ…だっ…て…」
「こんなにここ、固くしてさ」
全部柊一さんの所為。それを言いたくても俺は言葉がうまく落とせない。
「これ以上やっても痛いだろ」
と、言って彼は急にペニスを放し、シャワーの湯を浴びせる。俺は放心状態になり、ぼうっと立っていた。かなり勃起して大きくなったペニス、どうすればいいのだろう。
「俺も身体洗わないと」
柊一さんはまた手にボディソープをつけ自身の身体を洗っている。
俺はいてもたってもいられなくなり、彼の唇を奪う。今度は俺が仕掛ける番だ、と思った刹那、逆にまた俺のモノを持たれ、口内は柊一さんの舌が荒らしていた。
…息ができない。まともな呼吸法を忘れてしまった。枚挙にいとまなく押し寄せる雄を煽る行為をただ正面から受けるしかなかった。
「七瀬、もうもたなそうだな」
「……う、ん…」
「…わかった」
柊一さんは固くなり膨張した俺のペニスを慣れた手つきで軽く握り、何度も手で擦る。
「う…あ、あああ…」
幾度となくり返される行為に俺の頭は真っ白になっていく。
「い、…い、…いく…い、いっちゃう」
「いい、七瀬出せ」
柊一さんの声が甘く聞こえる。
「う…うわ…う…あああ…あ」
俺は彼の手の中で自分自身の精液を出す。
快感の絶頂にいき、真っ白になった頭。柊一さんは俺の出した精液の処理に追われていた。
俺は何もできず立ち尽くしていた。
「たまってたな、七瀬。こんなに出しやがって」
「だって…しょうがないじゃん…」
「駄犬の躾 は骨が折れるな」
「……駄犬って……」
「駄犬ほど可愛いけどな」
「……!そ、そう…」
処理を終えた柊一さんは、またシャワーを持ち、俺に湯を浴びせる。
「しっかり洗っとけよ。これで終わると思うなよ」
「…え、え…?」
二度目があると暗に匂わせている。俺、一体この夜どうなってしまうんだろう。
シャワーで俺と柊一さんは今日の疲れを流し終えると、浴室を出て、お互い近くにあったバスローブを纏う。
「リビングに行くの?」
「いや、寝室に行く。あそこなら色々揃ってるからな」
色々揃ってるって…。女性たちと柊一さんが夜戯れている場所だとは知っていたけど、本人の口から聞くと複雑。
「あれだけで、まだ俺も満足したわけじゃないからな」
俺をいかせただけじゃ足りないんだ、俺は少し不安になる。柊一さんの性欲ってどれだけあるのだろう。俺また鳴かせられるのかな。ちょっとだけ怖いな。
夜の色香を纏う柊一さんは今まで見てきたどんな柊一さんよりも色っぽくて危険な香りがする。俺、彼と共に堕ちて行ってしまうのかな。
そう俺が考えを飛ばしている間に、寝室に着いた。
キングサイズのダブルベッドがそこにはドカンと鎮座してあった。
いつかここで俺も柊一さんと…と思っていたが、まさかその日が今日になるとは思っていなかった。
俺はベッドに座る。柊一さんは部屋の隅にある小ぶりなタンスから何かを引き出している。いわゆる大人のおもちゃと呼ばれる物だろうか。色々あるといっていたから、その手の類もありそうだ。俺、どうなっちゃうんだろう…。
急に雨が降り出した。雨音がする。俺は黙って窓の方を見る。二重のカーテンが邪魔で外が見えない。
「どうした?」
「…あ、雨が降ってきたなって」
「何か気になるのか」
沈黙の後の静寂。さっきまでの静寂に、ざあざあという単調な雨音が混ざり始める。この部屋には部屋全体を明るくする灯りはあるが、今はベッドサイドのテーブルランプだけが唯一の灯り。薄暗くなった室内のせいで、彼の横顔の輪郭がいつもより曖昧に見えた。
「……傘、持ってきてない」
振り向いた彼と視線がぶつかる。気まずそうに笑う彼の濡れた瞳が、ひどく色っぽく見えて、喉の奥が急に乾いた。
「どうせお前泊ってくだろ」
立ち上がり、彼との距離を詰める。雨音のせいで、自分の声がいつもより低く響いた気がした。彼は逃げることもせず、ただじっと、近づいてくる俺を見上げている。
外の世界が遠くなる。今、この部屋には、俺と柊一さん、二人しかいない。
柊一さんは、何も言わず、俺の手首を掴んで自分のほうへ強く引き寄せる。彼の胸元に飛び込む形になり、俺はただでさえ大きな目を見開く。
焦燥感に駆られたような、少し痛いくらいのキスだった。
その後、雨音がすべてをかき消してくれるのをいいことに、お互いの唇を貪り合う。俺はいきなりの展開に戸惑いながら、柊一さんの首に腕を絡め、溺れるようにその熱にしがみつく。
「ん、……あ」
雨音に消されるかのような小さな声を俺はあげる。前髪から滴った水を柊一さんが親指で拭う。
「ん…ん…」
深くて長いキスが終わった。俺は顔を真っ赤にし、息を荒くしながら柊一さんの纏っているバスローブを掴む。…身体が熱くて仕方がない。
柊一さんは俺を後ろから抱きすくめるようにして、ベッドへと誘う。
「……大人しくしてろ。歩くの無理だろ」
彼はそう言って、俺をベッドに仰向けにする。その上に柊一さんがゆっくりと覆いかぶさる。
窓の外の雨音はいっそう激しくなり、部屋の薄暗さが影をベッドに大きく落とす。すると、冷静なはずの彼の指先が、わずかに微熱を帯びて震えているのがわかった。
「……あの、急に、どうしたの……?」
「お前が可愛すぎるのが悪い。……もう止めないから」
「…え…」
俺の言葉が早いか彼の行動が早いか。彼は俺の両手首を頭の上に組み伏せた。
だが、それ以上迫ってこない。柊一さんは受けのすぐ上で冷ややかな、しかし熱の孕んだ笑みを浮かべ、わざと顔を近づけるだけでキスを仕掛けてこない。
「……ぇ、あ、あの……?」
「何待ってんの?口開けて。……キスしてほしいわけ?」
「う、……っ」
俺は顔をまた赤くして頷くしかなかった。柊一さんは俺の顎を長い指先でクイと持ち上げ、無理やり視線を合わせてきた。
「さっきみたいに、自分から言ってみろよ。どうしてほしい」
「……っ、だって、さっき、したじゃん……」
「さっきのは俺が勝手にしただけ。今は、お前がしてほしいかどうか聞いてる。……言わないなら、このまま寝るけど?」
「……キス、してください……っ」
俺は涙目になって、消え入りそうな声でねだる。刹那、柊一さんの口元がフッと歪む。
「……望み通りに」
俺は唇に落とされるのを待っていたが、彼は突然首のあたりにキスを落とした。
「ひゃんっ!? ……あ、そこ、だめっ……!」
「だめ?声、部屋中に響いてるぞ。雨の音が大きくてよかったな、誰にも聞かれなくて」
「そ、そもそも…俺としゅ、柊一さん…しか…いな…い……じゃん…」
俺はビクビクと身体を跳ね上げる。首あたりは弱いポイントだ。そこを狙ったように口づけを落とす柊一さん。容赦なく体重をかけて押さえつけ、わざと大きなリップ音立てて痕を刻みつけてくる。
俺は焦らされるだけじゃなく、彼に翻弄され、涙をこぼす。その涙を柊一さんは舌でペろりと舐めとり、ようやく唇にキスを落としてくれた…が。
「…………!」
優しさの微塵もない荒々しく深く貪るようなキス。これでは息ができない。抗えない快楽と呼吸さえまともにさせてくれない物理的な痛み。それらが溶け合い、俺の涙へと変わっていく。
「……七瀬、可愛い。もっと泣けば?」
まともに取り合ってもくれない。
神様。俺の初デートはこのまま彼に翻弄されたまま終わるのでしょうか。
これは俺の思い描いた初デートになるのでしょうか。今はただ熱に浮かされ彼の中に居る。
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