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第20話
「───っ、いぁ″……、!」
目が覚めるような鋭い痛み。
噛み千切れただろう箇所が唾液で染み、ドクドクと脈打つ。
握り締めていた男の怒張を振り払い、腹の肉と肩を力いっぱい押す。
「……あぁ、血が出ちゃったね。
可哀想だけど、これもお仕置きだよ」
ベチョッ……
男の肩に当てた手を軽々と取られ、痛みで痺れる患部を再び舐められる。
「……!」
おかしいほどに、ぶるぶると震える身体。叫ぼうとする声を、喉が必死で締め付けてしまう。
まるで、水槽の中の……金魚。
「そうそう……やっと解ってきたね」
僕が怯える度に、男が嬉しそうに顔を歪める。
次に何をされるか解らない恐怖が襲い、呼吸音を消そうと胸の動きを必死で止める。
「……それにしても、いい匂いだなぁ」
ニチャリと口元を歪めた男が、僕の首筋に顔を埋める。
「砂糖菓子のように甘くて、女の子みたいに肌もスベスベしてて……色っぽくて溜まらないよ」
外耳を通して鼓膜に響く、絶望の水音。
男の舌先が耳孔やその周りを攻め、何度も何度も耳殻を食む。
その度に全身が粟立ち、ビクビクと震えてしまう絶望に耐えながら、涙で歪んだ天井を見つめる。
──バリンッ、
その時、遠くでガラスの割れる音がした。
「……なんだ?」
耳元から唇を離し、上体を起こした男が頭を上げる。
と──
───ドンッッ、!!
突然吹っ飛ぶ、男の巨体。
ぐぇっ、とガマ蛙のような声を発したその塊が壁に打ち付けられ、丸まったまま動かなくなる。
「……」
一瞬──何が起こったのか、解らない。
……だって、そんな……
そんなことなんて、あるはずがないんだから。
「──テメェ、ひとのオンナに何してやがんだコラぁ!!」
「ひ、ひぃぃ、……」
ドスの利いた低声。
ダンゴムシのように小さくなった男の前に立ちはだかるのは、作業着姿の──竜一。
「……ふ、不法侵入だ……不法──」
「うるせぇ!」
爪先に鉄芯の入った作業靴で、竜一が男の尻を蹴飛ばす。
「だったらテメェは何だ。……あ″ァ?! 小汚ぇ性犯罪者がッ!!」
男の首根っこを片手で掴み、ズルズルと奥の方へ引き摺ると、再び男の腹を蹴り上げる。
一発、二発……と、蹴りが入る度に漏れる、奇妙な嗚咽。
空間に響き渡る、生々しい音。
「……ち、違うっ!
あの子はキララだ。ボクが見つけ出した、最高に可愛いボクのキララなんだ!
お、お前の手には……渡さない。ボクだけの……」
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