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第21話
「……それは、おかしいですね」
しゃく、しゃく……
靴底に付いたガラス片を踏み鳴らし、奥の部屋から現れた──背の高い人影。
「一体あなたには、何人のキララがいるのでしょうか」
──バササッ
竜一の斜め後ろに立つと、その人影が何かを床にばら撒く。
その中の数枚が床の上を滑り、僕の近くで止まる。
視界の端に映ったそれは、キララのメイド服を着た──幼女たちの写真。
「……う、ぅああ″ぁあぁあ″──ッ!」
奇声を上げ、慌てふためいた男が飛び起き、散らばったそれらを必死の形相で掻き集める。
「ち、違うんだっ……キララ。これ、これは、浮気じゃない。浮気なんかじゃ……あっ、」
男の手から弾かれる、一枚の写真。
目の前に落ちたそれに視線を向けた瞬間──おぞましい光景に息が止まる。
それは、生気を失った幼女との──ハメ撮り写真。
「見るんじゃねぇ!!」
竜一の叫ぶ声が、遠くから聞こえる。
だけど……その写真から、目が離せない。
「……」
ゆらりと波打つように、ゆっくりと歪んでいく幼女の顔。
その顔が、幼い僕へと変化した途端──劈く高音と共に、脳裏に焼き付けられた忌まわしい記憶が再生されていく。
キィィ───ン
『志津子、見てごらん』
『……なに、してんの?!』
『ほら。小さくても、ちゃんと挿っただろう?』
「──さくらっ!」
古びた、カビ臭い臭い。
重い空気。
湿気を含んだような、布団の上。
目を閉じる事を忘れ、揺れる天井を眺めていれば……大きな人影が迫り、僕の身体を抱き起こす。
「……」
……柔らかくて、温かい。
胸の奥を溶かすような、優しい匂い。
寂しくて、寒くて。
息が詰まって死にそうな程、苦しかったのに。
なんでだろう……酷く、安心する……
「……りゅう、いち……」
小さく動かした唇から愛しい人の名前を溢せば、静かに閉じた瞼の隙間から熱い涙が溢れる。
トクン、トクン、トクン……
力強く弾む心音。
僕の、居場所──
鉛のように重たい腕を持ち上げ、まだ痺れて感覚のない指で竜一の服を掴む。
もう二度と離さないよう。ありったけの力を籠めて。
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