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24 物好きなんじゃしょうがない

 気持ちよさと罪悪感で涙をぽろぽろこぼしながら、雪希はあっという間に、楓の咥内に射精してしまっていた。  しぼり出すように吸われて、腰をビクビク震えさせながら、雪希はたっぷり時間をかけて、最後の一滴まで吐き出した。 「ふ……」  涙の方は止まることなく、ぽろぽろと溢れ続けている。  楓は不思議そうな顔で咥内に広がる味を楽しんだあと、ゴクンと嚥下した。 「先輩、全然抜いてなかったんですね。すげー濃い」 「ごめん、ごめん……うがい、してきて……? あと、胃薬? とか飲んだ方がいいのかな?」 「そんな、有害物質をうっかり飲んじゃった人みたいに見ないでくださいよ」 「有害だよ」 「精液を飲むと健康にいいって話もありますよ。まぁ、真偽のあやしい、ネットの俗説ですが」  そう言いながらも楓は再び雪希の腰の中心に顔を寄せてきて、残滓をぺろぺろと舐めている。 「……っ」 「あれっ、また勃ってきちゃいましたね」 「も、もういいから触らないでよぉ……っ」  すみません、と笑って楓はあっさりと体を離してくれた。 「もう一回風呂入ってきます?」 「そうしようかな……」  ティッシュで拭いても、まだベタベタする気がする。  さっきの服をそのまま身につける気にもなれなくて、雪希は服を掴んだだけで下半身になにも身につけないまま、よろよろと階段へと向かった。  風呂場は二階にあるのだ。  なにか体の感覚が変だな、とは思ったが、さっきの余韻がまだ残っているせいだろうと思ってそのまま階段を降りる。  盛大に足を踏み外したのは、階段の半ばぐらいのところでのことだった。 「うわぁ……っ!」  そのまま、二階の床までずるずるとすべり落ちる。 「先輩!?」  楓も後ろからついてきていたが、雪希の襟首を掴もうとした手はあと一歩及ばず、痛みに呻いてうずくまる雪希を急いで追いかけてくることしかできなかった。 「大丈夫ですか!? どこか打ちましたか!?」  よく考えたら、いい大人が、尻を丸出しでなにをやっているんだ、という話だ。  いろんな意味で、また泣きたくなった。 「お尻をちょっと……」 「……ほんとだ。少し青痣っぽくなってますね。すみません、オレがついていながら」 「なんか……頭は打ってないのに頭がくらくらするんだけど……」 「それって、酔っ払ってるってことじゃないんですか?」 「酔っ払ってる……?」  さっきから顔がずっと熱いのは、もしかして楓のせいじゃなくて……? 「焼酎、入れすぎたんじゃないですか?」 「そう、かも……」  自覚した途端、余計に頭がぐらぐらしてきた。 「先輩って、あとから酔いが回ってくるタイプなんですね」 「…………」  そういえば、飲み始めた序盤はわりと平気で、まだいけるだろう、調子よく飲んでいるうちにいつの間にか死にたくなるぐらいの吐き気と頭痛に襲われていた、ということが昔から飲み会での定番だった。 「水を持ってきますね」 「いや、とりあえず、風呂……」  いつまでも尻が丸出しの状態でいるわけにはいかない。そのぐらいの客観性は、まだ雪希の中に残っていた。 「他にどこか打ったところはありますか?」 「わかんない……」  夜の廊下は冷える。  半裸のままで風邪をひかせてもまずいだろうと判断した楓は、雪希に肩を貸すと、なかば抱えるようにして風呂場に連れて行った。 「一応、他に怪我がないか確認しますね。場合によっては病院に連れていきますので」  上も脱がされて、さっきと同じように髪が濡れないようにタオルを巻かれる。  あたたかいシャワーのお湯を浴びながら体をチェックされている間、雪希はずっとぼんやりしていたが、そのうち、服のまま浴室に入ってきた楓の服が濡れていることに気づいた。 「肘のところが擦れてますが、家にある軟膏を塗れば大丈夫そうですかね。あとから痛いところがでてきたら言ってください」 「…………」  気がついたら腕を伸ばして、濡れた体のまま抱きついてきた。 「……楓くんは、どうしてそんなに優しいの?」  実の親もこんなに優しくはなかった。  雪希が不注意で怪我をした時は、心配されるよりも『どんくさい。もっとしっかりしろ』と怒られた。  救急セットは目の前まで持ってきてくれたけど、手当てまではしてくれなかったから、いつも自分で消毒して絆創膏を貼っていた。  いや、小学生の途中ぐらいまではちゃんと手当てしてくれてた気がするけど、雪希があまりにもしょっちゅう転ぶので、多分、呆れられて付き合いきれなくなったんだと思う。  水を吸った楓の髪から、雫がぽたりとこぼれ落ちた。 「優しくないですよ。オレは、オレがやりたいことをやっているだけです」  そっと抱き返してくる腕は、雪希からすれば、じゅうぶんに優しかった。 「……こんな出来損ないのダメ人間の面倒をみるのが、やりたいこと……?」  自分が楓の立場だったら、絶対嫌だ。  雪希の頬を撫でながら、楓はくすくす笑った。 「先輩といると、いつも予想がつかないことが起こる。オレはそういうの、けっこう好きなんですよ」  エンターテイメントの一種だと思われてるんだろうか。 「それに、オレは『おまえはなんでも無難にそつなくこなすからつまらない』と親とか友人に言われて育ったタイプなので、先輩の失敗なんて愛嬌があっていいなぁと思いますよ」 「……嫌味?」 「わりと本気ですけど」 「……物好き?」 「それは否定できません」  楓が苦笑するので、雪希もつられて笑っていた。 「もういいや。楓くんも服、脱ぎなよ。……さっきの続き、していいよ」 「……続き?」 「あ、いや、最後までしていいって意味じゃないけど……えっと、お尻ぐらいなら使ってもいいよ」  言い直したのに、楓はさっきよりも難しい顔になっている。 「詳しく教えてもらってもいいですか?」 「え、えっと……素股ぐらいならその……僕でもなんとか……」  ごにょごにょと小声で呟く雪希の顔を、楓が覗き込んできた。 「いいんですか?」 「……手とか口を使うのは僕にはいまのところ無理そうだから……でも、楓くんだけ放置っていうのも人の心がないと思うし……お尻ぐらいなら……?」 「……先輩は、男に対してもっと危機感を持った方がいいと思いますよ」 「な、なんで……!?」 「オレが悪い男なら、とっくに犯してますよ」

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