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25 お風呂場って、ある意味定番だよね
服をバサバサと脱ぎ捨ててから、楓は、壁に手をつくよう雪希に促した。
振り返ったら、すでに臨戦状態に入っている楓の一物が視界に入って、慌てて目をそらして壁におでこをくっつける。
「先輩のお尻、小ぶりで可愛らしいですよね。筋肉質でもないし。いつもゆるめのズボン履いてますけど、もっとぴっちりしたやつ履けば、スタイルよく見えると思いますよ」
常識的なアドバイスをしながらも、楓の手は雪希の尻を撫で回している。痣ができたところはちゃんと触らないようにしてくれているのが優しい。
「背中も綺麗ですね。肌、白いですよね」
背中に口づけを受けながら囁かれて、むずかゆいような気分になる。
「ん……引きこもり、だから……」
色白というほど綺麗な肌ではない。ただ日に焼けていないだけだ。
「……痕残したら怒りますか?」
「あと、って……?」
「キスマーク的なやつです」
「べ、べつに、いいけど……誰に見られるものでもないし……」
生まれてから二十六年。キスマークをつけたこともなければつけられたこともない雪希は、完全にそんなものはフィクションの産物だと思っていた。
拒否する理由はないのだが、動揺で声が上擦る。
腋の下に近い薄い皮膚に楓は唇を寄せると、先ほどよりも強く吸いついた。
「ん……っ」
「綺麗につきましたよ」
「へ、へぇ……」
「鏡、見てみてください」
右側の壁にある鏡に目をやると、確かに薄紅色の、虫刺されに似た痕が肌にできているのが見えた。
ついでに、裸で興奮状態の男二人の姿も鏡に映っている。とんでもなく卑猥な光景だった。
「恥ずかしいよ、楓くん」
視線をそらしながらも、さっきよりも頭をもたげている雪希の陰茎を、楓の手が掴んできた。
「こっちも、綺麗な色してますよね。使い込んでる感じがまるでない、っていうか」
「う……悪かったね、童貞で」
「全然悪くないです。こんなに可愛いのに二十六年間、誰にも汚されてない、って奇跡みたいじゃないですか?」
「…………」
雪希は思わず、気の毒なものを見るような目で楓を振り返ってしまった。
「誰にとっても、触れる価値がない、と思われてきた人間だからだよ」
奇跡でもなんでもない。こうして、この美しい男が自分に触れてきているほうがよっぽど奇跡だ。
「そんなふうに言われると、これから先輩のこと、めちゃくちゃたくさん触って、たくさん可愛がりたくなりますね」
「な、なんで……!?」
このネガティブトークでなぜテンションがあがるのか、雪希にはさっぱり理解できない。
「だって、オレに愛される日をずっと待ってた、みたいで嬉しいじゃないですか」
眩しい笑顔が返される。
やっぱりきみはちょっとおかしいよ、と言いたくなったが、変わり者同士だから仕方ないか、とも思う。
言いかけた言葉は、首筋に口づけられたことによって、熱っぽい吐息にすり替わる。
「ん、んぅ……」
さっき、背中にキスマークをつけられたのよりも強く吸いつかれたあと、あやすようにぺろぺろと舐められる。
「うなじも、かわいいですね」
髪を切ったばかりですーすーするうなじにも、口づけが何度も与えられる。
いつものボサボサの頭のまま愛されなくてよかった、とちょっと思った。
ここに入ってから、上半身にばかり愛撫が加えられるばかりで、下半身はほったらかしにされている。
しかし、距離が近いから楓の欲望が尻に当たって、楓が動くたびにそわそわと落ち着かない心地になる。
おそるおそる尻を上下に動かしたら、楓が動きを止めた。
「……悪戯しましたか?」
「だって……このままじゃ……」
「わかりました。ちゃんと、当ててほしいんですね?」
腰の位置がずらされて、尻の割れ目に陰茎が挟まる格好になる。
「う……」
挟まったものの、とうていおさまりきらない質量に、おそれおののく。
尻に男のものが挟まっているなんて、よく考えたら不思議な状態だ。まだ犯されたわけでもないのに、犯されているような気分になる。
「あ、……っ、ああぁ……や、ん……っ」
腰を上下に動かされると、敏感な部分までゴリゴリとこすりあげられて、気持ちよくなってくる。
雪希の口からは、女の子みたいな鼻にかかった嬌声がひっきりなしにこぼれた。
自分がこんな声を出せるなんて知らなかった。みっともなくて嫌なのに、止められない。
「ん、んぅ……あぁ、ん……」
シャワーのお湯の名残しか滑り成分がなかったはずなのに、いつのまにか、尻の間がぬるぬるしてくるのが伝わってきた。滑りがよくなった分、気持ちよさが増す。
「先輩、可愛い声出すんですね。めちゃくちゃ興奮します……」
そう言う楓の声は、欲望に掠れてずいぶんと色っぽかった。
「でもこれ、素股っていうより、尻コキですよね?」
「も……なんでもいいよ……あ、ぅ……っ」
酔いと快楽が同時にやってきて、頭がくらくらしている。
自らの体を支えきれずに崩れ落ちそうになったところで楓の腕に支えられて、ついでに下からすくい上げられる格好になる。
「素股はこっちですよね、せんぱい」
脚の付け根に、太いものが挿入される。
「ちょ、あ、だめ、だめ……っ、いく……っ」
陰嚢と陰茎の裏側を勢いよくこすりあげられたら、もうだめだった。
激しく動いた拍子に頭に巻いていたタオルが取れて足元に落ちたが、それどころではない。
溢れ出した先走りの蜜が楓の陰茎にまで絡んで、腰を動かされるたび、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を上げる。
さらに胸を揉まれ、爪の先で軽く乳首を引っかけられたら、雪希はあっけなく射精してしまった。
足元のタオルの上に、白いものがこぼれ落ちる。
「先輩、早すぎですよ」
楓はまだガチガチの状態で、先走りはこぼしているものの、また余裕がありそうだ。
「……ごめん、もうぼく、体力が……」
「わかってますよ。無理強いはしません」
「でも……ここでリタイアするのも申し訳ないから、挿れてもいいよ」
「え……?」
「楓くんはまだ、その……時間かかりそうなんだよね?」
「まぁ……たぶん」
「完全にマグロ状態で寝てるだけでいいなら……好きにしていいよ」
まだ最後までする覚悟はできていない、と思っていたけど、だんだんどうでもよくなってきた。
ここまですけべなことをされているんだから、もう今さらだろう。
いい年した男が生娘ぶってもったいぶるのも痛々しい。
「ちょ、ちょっと待ってください。まだ、心の準備が……」
かわりに初々しい反応を見せてくれたのは、なぜか楓の方だった。
「……なんでそんな、百人斬り経験しててもおかしくなさそうな顔面とちんこ持ってるのに、童貞みたいに初々しいの?」
「百人斬りなんてとんでもない。単なる、本命童貞ってやつですよ。経験値は先輩とそんなに大差ないです」
赤くなった顔の半分を掌で覆いながら、楓は謙虚にもほどがあることを言い出す。
「……じゃあ、やっぱりぼく、もう寝ていい……?」
ふらふらしてきた。立っているのもつらい。
「だ、だめです……! ベッドに移動して、ちゃんと準備するので、最後までお願いします!」
明日になったら雪希の気が変わっているかもしれないと思ったのか、楓は必死に懇願してくる。
こんな時は妙に後輩っぽいんだな、と思ったら可愛く見えてきて、頭をなでなでしてしまった。
うん、まあ実際、明日になったら『やっぱりやめよう』と言い出しそうな気がする。
今なら、酒のせいにできる。
ずるいけど、そのぐらいの臆病者なのだ。許してほしい。
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