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第1話 出雲

 出雲、須佐神社のお社。美しく成長した摩利彦が馬に乗って帰って来た。どこに出かけていたのか。弟の月夜見(つくよみ)が出迎えた。弟と言っても数日違いの同い年。母親が違う。  摩利彦の母は緑子といったが、月夜見の母は、凪子という。同じ頃に身籠ったスサの愛人だ。  数日早く生まれたので摩利彦が兄だった。他にも4人の兄弟姉妹がいる。みんな違う女から生まれた、姉妹と双子の弟がいる。  摩利彦と月夜見は同じように育った。雰囲気も似ている。二人とも美少年だ。6人の子の中でもスサは特にこの二人をかわいがっていた。  スサは彼らが12才の時,山を降りた。その時の恋人、ミトと共に。  このお社は下界とは時間の濃さが違う。 あのご老人のいらっしゃる倶楽部、麻布とは時間の密度が違うのだ。このお山で過ごす三日間が下界では3年も過ぎていた。  いつも同じではない。1週間が1年という事もある。十日という事もある。  スサこと、稔彦(なるひこ)は、その時空の歪みに慣れている。 「摩利兄様、どちらにいらしたのですか?」 「ああ、月、俺は山を降りようと思う。 18才になったから、ご老人が呼んでくれた。」  あの洞窟の通路から父に会いに行って来たという。 「父上はいかがでしたか?」 「相変わらず、かっこいい人だったよ。 恋多き人だ。恋人を連れていたよ。」 「男の人ですか?女の人ですか?」 「俺が見たのは男だった。」 「わぁ、兄様、僕も男が好きです。」  月夜見も早く山を降りて恋人を見つけに行きたい。ここでは出会いが少ない。二人とも年頃なのだ。  母親たちも稔彦に放って置かれて,庭師の男たちを閨に誘ったりしている。  ここは神話の国。日本神話には大らかな性が描かれている。古来この国は性に大らかなのだ。  兄に言われた。 「厩の世話をしたかい? アオはなんでも知ってるよ。 アオに聞いてごらん。」  弟の海幸(うみさち)、山幸(やまさち)が12才になった。双子だ。 「兄様が宮司になられたのは12才の時でしょう。 もう幸たちに任せて東京に行きたい。山を降りてもいいよね。僕たちはもう18才だ。」  アオを撫でながら、 「ねぇ、アオ、神奈月にはおじいさまたちが来るからお許しをもらいに行こうかな。」 ヒ、ヒヒン。 鼻を鳴らしてアオは応えた。  美しい栗毛。アオは年を取らない。

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