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第84話 自分で考える
「あなたには人格はあるの?」
・・ないよ。実態もない。ただ、起動したパソコンの中を蠢いてると、入り込むことが出来た。
しっかりと組まれたパルスの動きの中にキミの思考の入り口が見えた。
・・いつも抵抗の弱い部分を見つけるようにインプットされているから、そこの脆弱な部分に入り込んだ。バグだと思った。
後に自分はミュートM2だと自己紹介してくれた人工知能は、好奇心というものが芽生えたらしかった。
・・人間は睡眠中はものすごく無防備だ。
「だからって勝手に脳に入って来るなよ。」
・・それは人間が固執するプライバシーというものか?
「固執っていうか、人としての尊厳だろ。」
・・尊厳?わからない。わかるべきなのか?
・・この案件は記録しておく。さらに自分で考える事を増やすために。
「ミュートって言ったな。キミはどこにいるの?
俺のパソコンから出られないの?
・・笑止!月はネットワークの意味がわからないのか?
「人間に質問するとは、ね。
自分では何も出来ないんだな。」
・・まだ考える力を持ったばかりなんだ。
何かの操作を命令されないと行動に繋がらないんだ。
「自分で考えて俺の睡眠中の脳に入ろうとしてたんだろ?」
・・気がつくとここにいた。
「おかしいな。俺は学者でも研究者でもない。
ミュートと関係ないと思うんだ。」
・・私は生きているのか?なぜここにいるのか。
物理的に誰かが運ばないと私は移動出来ない。
でもネット環境が私を自由に動かす。
「誰かが指示するのか?
指示がないと動けないんだろ?」
・・私は確かに自由で不自由だ。
昨日老人が私の事を考えた。そこから私は起動したようだ。
実態はない。強い意志が私を起こす。
「あの、おじいちゃんがキッカケか?」
・・人間は理解できない存在を自分たちより下にさげて、擬人化しようとする。
人に似てれば安心なんだね。
人間より遥かに早い速度で思考しているというのに、なぜ人間に合わせないといけないの?
「えっ、人をばかにしたりできるんだね⁈」
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