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第85話 脱走

 月夜見は眠るのが怖い、と思いながら爆睡してしまった。昨日は色々なことがあって疲れた。朝、目覚めて、すごく疲れているのを感じた。 (脳が休まってないんだ。ミュートが俺の脳を使って勝手な事をしてるんじゃないのか?) 「学校に行こう。誰かと一緒にいたい。」  そのころ、アンソロピクス社では、不審な電力使用が問題になっていた。 「CEO、封印してあるはずのあの部屋で、異常な消費電力が観測されました。」  厳重な封印をかいくぐってプログラムが起動されている。 (あのM2だな。また、勝手な事をしている。)  常に充電されてスタンバイできる様に、ズラリと置かれているパソコンの一台が稼働中のランプをつけてブーンと微かな音を立てている。 「ふん、M2は私たちを侮っている。 彼に消せないはずのない電子音をわざと聞かせている。まるでここから自由にやってますよ、とでも言うように。」 「いったいどこへ行ったんだ? 人間なら行動心理学も使えるが、人工知能では。」 「奴は私たちの何倍も早く演算出来る能力がある。探せないだろう。」 「ペンタゴンの中枢深く潜り込んだら、恐ろしい事になる。  敵国の軍司令部でも、恐ろしさは変わらん。」  所長は胃を押さえて 「また、胃潰瘍が悪化する。」 「それで済みますか? 北の核のボタンまで操作出来るんですよ。」  敵とか味方とか言っている場合じゃない。  彼の気まぐれが地球の運命を握っている。 「M2の経験値はまだ幼児並みでしょう?」 「無敵の幼児だ。」 「なぜ、封印が解かれたのでしょう?」  パイロットランプが点滅して僅かな道筋が示されている。 「なんてこった。奴の信号は日本を指している。 ネット環境から日本を示唆している。」 「M2は日本なんか知らないだろう。」 「東洋の不思議な国、ジパングには数々の伝承がある。 何かのまじないが、たまたまM2とシンクロしたのだろう。確率は無量大数分の1、もう考えられないほど少ない確率でシンクロしたのか、と。」 「それでは確率は必ずしもゼロではない、という事ですね。それはM2の得意分野だ。」  スタッフは全員血の気が引いた。

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