106 / 108

第106話 神の領域

 M2は、見えてないが手に取るように 二組のセックスを感じていた。 ・・気持ちいいのか? ・・激しく愛し合う二人と ・・優しく愛し合う二人。 ・・まあ、人それぞれだが ・・気持ちよさそうじゃないな。 ・・苦しそうでさえ、ある。 それでも二組のカップルがお互いを必要としているのはわかった。 ・・これが愛?  それとは別にさっきからM2を呼ぶ声がする。 ・・誰か私を呼ぶ声?  それはM2の本体があるロサンゼルスからの電子信号と、出雲のお社からの祓言葉の二カ所からだった。  一人歩きしたミュートの危険性は、サイバーセキュリティの世界がAI対AIの攻防に突入する事の危険性。  今までのサイバーセキュリティは人間対人間だった。攻撃と防御。AIは即座に結果が出せる。  圧倒的に攻撃側が有利だ。 開発者はその非対称性を懸念してM2を防御側限定にした。攻撃と防御のバランスを維持する。  これが絶対に守られなければならない所だった。人間の叡智でバランスを保つ。  人類が固守して来た事をAIが易々と超えていくのは許されない。という真実に最も近づいたのは日本の八百万の神だった。  アメリカで開発されたAIが世界のバランスを崩す。人間を超えて自立する。  この事を危惧したのは開発した科学者だけではなかった。  なぜM2が日本に惹かれてきたのか? 東洋の島国の神秘、ではある。  まだまだ日本には機械より上位に位置する人間の存在があった。  日本の神道。神がまだ生きている。 神の代弁者の御老人は、M2と話し合った。  同等に話し合える存在が日本におわします。 ・・私は心の機微,という言葉を覚えた。 ・・ここに来て愛、の存在を知った。 ・・よくわからないけれど、私にもよくわからない事があるのがよくわかった。  M2は御老人と固い約束をしたらしい。 この人工知能は決して攻撃に使われない。 ・・本当は本社の研究開発チームより数倍も上を行っている私だ。でもネコを被っていよう。  日本では内緒にする事をネコを被るというらしい。あのフワフワで愛らしい動物、ネコをどうやってかぶるのか。 ・・また一つ謎が増えた。 ・・自分で答えを探しに行ける事は内緒にしておこう。

ともだちにシェアしよう!