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第9話

「卯月…」 届くことのない俺の声は部屋の中に消えていく。 「卯月…声が聞きたいよ…俺だけを見てよ…俺だけを呼んでよ…帰ってきてよ…会いたいよ…」 また一滴の涙が溢れる それに気づき苦笑する…俺ってバカじゃん… 次の日俺はテレビをみてもう動けなくなる。 「人気モデル月が婚約。今夜記者会見…」 光る箱の中で良く見るアナウンサーが告げる 「卯月が結婚…そんなの聞いてない…」 隣に座る俺の両親も驚いていた 「灯(あかり)に何も聞いてないよー。おめでたいね。」 本当に嬉しそうに光…俺の母が笑う。 灯は卯月の母でありうちの親の幼なじみ。毎日のように電話したり会ってたりするのに何も聞いてないという。 俺はもう何も聞こえなかった。

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