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第33話

「あっ! リンさんっ!」  話したいことがあったから咄嗟に呼び止めてしまったけれど、僕はそれを後悔した。  なぜなら振り返ったリンの目の縁が赤くて、泣かないまでも悲しいことで感情が昂っているんだなってわかったから。  こんな状態じゃ、まともに話せないだろうし…… 「呼び止めてしまって……すみません、お忙しいようでしたら改めます」  そうして! ってきつく言われるかもって思っていたけど、リンは特に言い返してくることもなく、むっつりと口を引き結んだまま僕の方へ振り返ってくれる。  縁の赤い目と赤くなった鼻先、泣きそうだったんじゃなくて泣いた後なのかもしれないって思った。 「これ……立て替えてある経費をまとめたものなんです。月の途中なのですが、手持ちが心許ないので一度精算していただけないでしょうか?」  これまでの買い物のレシートとそこに書かれているものが何に使われるためのものかを書き記したメモを封筒に一緒にしてエプロンのポケットに入れてあったから、その場で渡すことができた。  薄紫色に銀色のラインの引かれた綺麗な指先が嫌がるでもなく封筒を取り上げて…… 「わかった」  そうはっきりと返事をくれる。 「ありがとうございます!」  よかった! これで財布の中身を心配しながら買い物をする必要がなくなる。  カードを使ったりとか色々やり方はあったんだろうけど、それは借金になるんだよって親に言われて育ったからか手を出しにくかったから…… 「ちゃんと用意するから、トーマを煩わせないでね」  つん とそれだけを言って、リンはさっさと階段を降りてでていってしまった。  ちょっとむくれた顔がルカと似ていて微笑ましかったのに、叩きつけるように玄関扉を閉めたからその余韻が一瞬でなくなった。少し残念だ……って肩を落としていると、背後で小さくドアの開く音がする。  ルカが起きた⁉︎ って慌てて振り返った先にいたのは、お化けのように隙間から僕を見るトーマだった。 「き  奇遇ですね、ご主人さまも何かご用事が?」  きゃーって言葉を飲み込み、慌てて何でもない風を装う。 「一つ尋ねたいのだが」 「はい」  今日一日のルカの行動はこの目に焼き付けて心のアルバムに注釈付きで大事にしまってあるから、どんなことを聞かれても答えられる自信があった。  胸を張って「さぁ来い!」って意気込む僕の前まで歩み寄ってきて、トーマはボソボソと何かを言う。 「はい?」  「今日はデザートがあったんだろう?」 「はい! ございますよ!」  視線は合わないままだったけれど、雰囲気が前のめりだ。  ……もしかして、この人…………甘いもの好きなんだろうか?  朝用に買ってあったコーンフレークを下に敷き、リンが買ってきてくれていた食材の中にあった個別包装のチョコを袋のままお湯に放り込む。  

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