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第32話
打って変わって静まり返った部屋の中、ルカはしばらく顔を上げずにじっとしたままだ。
「ルカくん?」
へーゼルブラウンの髪を少しかき分けて顔を覗き込んでみると、くるりとカールしたまつ毛が優しく目元に影を落としている。
よくよく聞いてみれば小さなくぅくぅという寝息も聞こえて……僕にしがみついたまま眠ってしまったらしい。
でもその目元にわずかに光るものがあって、僕の口答えがルカに随分と怖い思いをさせてしまったんだって思って申し訳なくなった。
素直に、すみませんって言って終わらせておけばよかったのに、両親のことを言われてつい……両親は親としてだけじゃなく社会人としても素晴らしい人で、何もできない自分とは違う。そんな人達を貶されてお終いになんてしたくなくて、つい声を荒げてしまった。
「ごめんね」
起こさないように謝って、そのままそっと立ち上がる。
二階に寝かせに行って、布団に下そうとしたけれどルカの手ががっちりと服を掴んで離さない。小さな手なのに侮れないくらいの力で掴んでいるから、仕方なく抱っこしたままでルカの布団の端に転がる。
日に当てた布団はふかっとしているし洗い立てのシーツは柔軟剤のいい香りがほのかししてて気持ちいい。
寝袋で寝ているからそろそろ布団が恋しくて……腕の中の温もりもあってつい、うとうととしてしまいそうになる。
「ん 」
小さく呻いてルカが寝返りを打つ。
僕の胸にしがみついてスゥッと大きく息を吸い込むと……
「んへへ」
と、笑い声を上げた。
一瞬、起きたのかな? って思っちゃうくらいの声だったからどきりとしたけれど、健やかな寝息が聞こえてくるからホッとなった。
腕の中でとろりと崩れた笑顔は眠っていて無意識だってわかっているのに、幸せいっぱいだとこちらに伝えてくる。
少し解けた寝相が初日とは違い、自分の胸であどけなく無防備に眠ってくれていて、それだけでルカは僕を幸せにしてくれた。
「天使っていたんだなぁ」
弟達も確かに可愛かったけれど、これは次元が違う。
寝顔をじっと見つめながら一晩過ごせる自信があったけれど、僕にはやらなきゃならないことがある! それはルカの笑顔を見るためのものでもあるから……
仕方なくそっとルカの隣から抜け出して、部屋を出るまで起こさないか息を詰め続けた。
背後でぱたんと音がして、ルカが起きなかったんだって胸を撫で下ろした途端、ばんっ! ってけたたましい音が奥から響く。
びっくりして飛び上がりそうになった僕の前を銀色の髪がすごいスピードで駆け抜けていった。
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