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第31話

 ルカが素直に美味しいと言って食べてくれる姿を見ているだけで幸せで、それだけで嬉しい! だから、ルカがにっこりと微笑んでくれることが大好きだ。  素直に心を伝えると、ルカも「ちゅきー」と返事をしてギュッと抱きついてくれる。それを抱き返してまた「好き」と告げて……  ぎゅうぎゅうと抱きしめ合いながら告白合戦をしていると、ガチャンって食器を叩きつける音が唐突に響いた。 「だから、食事中なんだけど⁉︎」  鋭い言葉は一瞬で空気を裂いた。  腕の中のルカが怯えて、さっきまでのふわふわと膨らんだような雰囲気が壊れて萎む。 「ちゃんとできないわけ? 何のためにあんたを雇ったのか覚えてるの? 一緒になって騒げって話なんてしたっけ?」 「っ! ……すみません。気をつけます」  必死にしがみつくルカの瞳は閉じられて、あの宝石のような光は消えてしまっている。 「それともあんたの親は食事中のマナーも正しく教えてくれなかったわけ?」  テーブルの上を叩くばんって音に怯みそうになったけれど、「違いますっ」って声を上げた。  親は確かに忙しくていないことも多かったけれど、それでも愛情を持って接してくれていたし教育も施してくれた。何不自由なく暮らすこともできたし、ちゃんと愛されているんだってわかる生活をしていた。    それに、リンのルカに対するような態度は絶対にとらなかった! 「両親を侮辱するのはやめてください」  思いの外低い声が出たせいかリンはハッと怯えたような顔をして肩を揺らす。  言い返すと怒られるとか辞めさせられちゃうかも……なんて考えは吹き飛んでいて、両親の汚名を晴らしたくて目に力を込めて睨みつけた。 「ぁ……そ、そんな生意気なこと   」 「知りもしない人を貶すのはよくないことだ」  リンの言葉を遮るようにトーマが口を開く。  水を一口含んだ後、真正面に座るリンに向けて「謝るんだ」と静かに告げる。  それは決して強い言葉でもないし言い方も穏やかだったけれど、有無を言わせないαらしいプレッシャーがあった。 「トーマ……そんなつもりで言ったんじゃ……」 「リン」 「……っ、わ、悪かったよ。都筑のご両親は関係ない……」  それは謝罪としては往生際の悪い歯切れのよくないものだったけれど、リンの性格からしたら精一杯だったのかもしれない。でも両親のことを撤回してもらえただけで十分だ。 「ただ、食事中に騒ぐのはいただけない。今後は気をつけるように」  僕の方を見もしないで言うと、トーマはさっさと立ち上がってリビングを出ていってしまう。後に残されたリンがきつい眼差しで僕を睨みつけてから、同じように二階へと駆け上がっていってしまった。  

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