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第96話

 甘いその行動は、愛しむようだけどどこかトーマ自身も甘えているような、とろりとした糖度の高いものだった。 「んっ んっ……キス、くすぐったい……」 「でも逃げないね。チューってされるの、好き?」  好きか嫌いか。  僕にそんな選択肢なんてない。  今まで僕に愛を囁いたαはいなかったし、出来損ないのこんな可愛くないΩにキスを捧げてくれる相手もいなかった。  ただ、柔らかで熱くて、トーマの香りのする唇が自分に触れてくれるって部分は、はっきりと好きだとわかる。 「……しゅきぃ」  キスされるたびに、そこにふわりとトーマのフェロモンが残るから、まるで独占欲のように思えて胸がくすぐったくて…… 「ふふ。本当にエッチな子」 「っ……んっ、ん……」  雨のように降るキスを受けながら、気がついたらソファーに転がされてて、トーマはすでにパチンとコンドームを装着した後だった。  いつの間に⁉︎ って疑問を口にする前に、トーマは僕に覆い被さって深いキスと愛撫を再開する。  巧みだ と思うけれど、僕の経験値が0なせいなのかどうなのか。でもトーマに触れられると声が抑えられなくて、馬鹿みたいに繰り返し鼻にかかった声でねだっていた。 「……切ないです……っ、ぁんんっ」 「切ない?」 「おなかのナカ……」 「うん。もう少し柔らかくしたら入れてあげるね」 「っ……ゃ! いや……」  でも今のこの焦らされ続ける状態よりはきっといいんだって、信じて…… 「こ……このままは、や、です……っ、  」  小さな子どものようにぐずりながら頭を擦り付けると、鼻先に強くトーマのフェロモンが香るから、もしかしてよくルカが僕にこうしているのは、何かを嗅ぎ取ろうとしていたからかもしれないって頭の片隅で思う。 「もう、僕、がま できな っ」    擦れあった部分からもっとトーマを感じたくて、舌を伸ばして猫のように舌先でチロチロとトーマの肌を舐めていく。 「ん、く、すぐったいね。舐めるの好き?」 「……好き、かも…… トーマさまの、味が、して」 「トーマ」 「……とぉま」 「ふふ。私は、美味しい?」  脳みそを痺れさせるフェロモンは僕の好きな風の匂いに近いと思う。  走って走って、その先に見つけることのできる風の中にある夏の香り……それを纏ったトーマは僕の好物でいい。   「すごく、好き です」  再びちゅって深くキスされて、ガラスを挟まないでソーダ色の瞳を見つめ合って……熱い塊が太ももに触れて、それがゆっくりと僕の奥の方へと向かってきていることに気が付かなかった。  魔法の瞳を夢心地で見ているうちに、ソレは僕のナカへと入り込もうとしていた。  

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