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 息をついて、布団にもぐりこんだとき。  アオくんはぴくりと身体がこわばった。  太ももに、何かが当たっている。  あ、と思った。  そして、ええ、と思う。  それから心臓が遅れて鼓動を上げてきた。  ほんの少し身じろぎすると、それがいかに硬く張り詰めているか分かってしまう。先輩はすうすう寝ている。息は深く、おだやかに規則的だ。なのに下半身だけが、まるで別の生き物みたいに自己主張していた。 「……疲れマラってやつですか?」  からかいを込めて呟いても、先輩の頭の中には届かない。  ごりごりと当たるそれが気になって、アオくんはすっかり目が冴えてしまった。 「せんぱい」  試しにもう一度、小さく呼ぶ。  返事はない。  アオくんは頬が熱くなるのを感じながら、  もう、先輩のせいで寝られなくなった、と内心でわざと呟いた。それでごまかそうとした心臓は、全然ごまかされずにどきどきと早く鳴っている。  部屋着の上からそっと手で撫でてみる。  がちがちだった。熱を持っていて、布越しでも分かるくらい重くなっている。  触り慣れたそれ。でも、なぜだろう、知らないものを触っているような気がした。知っているはずなのに。久しぶりだから? 忘れちゃった? ちょっとだけ、確かめたくなる。  一拍ためらってからパンツの中へ手を差し入れた。直接握り込む。思ったよりずっと硬くて、張りつめすぎて痛そうなほどだった。 「うわ……」  血管の浮いた感触が、掌の中でごつごつと主張する。        重くて熱くて、湿っていて、あまりに生々しい。  アオくんはそれをゆっくりさすりながら、自分の鼓動がどんどん速くなるのを感じていた。  どきどきする。  先輩のを握っているだけで、その熱が移って、自分のもじわじわ膨らんできてしまう。  アオくんは息を殺しながら、ちょうど脚を絡ませていた先輩の腿の上へ自分のそれをそっと押し付けた。手の上下に合わせるように、腰も浅く揺れる。  暗い部屋の中で、先輩の寝息だけが規則正しく静かに、響いている。  なのに自分の中だけ妙に熱くて騒がしい。  手を動かすたびに、先輩の先っぽからとろとろと先走りが漏れてきた。 「……せんぱい」  呼んでも起きない。  起きないのを確かめたみたいに、アオくんはそっと身を起こした。  静かな深夜、ブラインド越しの街灯のあかりが薄青く壁に線を引く。  膝をまたいで座って、先輩のズボンをゆっくり引き下ろすと、限界まで膨らんだそれが解放された。勃起しすぎて、ほとんど腹につくくらい反り返っている。 「……すご」  思わず呟いてしまう。  根元を手で支えて、おもむろに口を近付ける。  アオくんのやわらかい唇にパツパツとかたく張った先端が触れた。ちろ、と小さく鈴口を舐めると塩気の混じった先走りの味が舌に広がる。知ってる、先輩の味だと思うだけで胸がうずく。  もう一度、今度は深く口に含む。  口いっぱいに感じる、熱、かたさ、重み。  先輩のにおい。  少しずつ奥へ滑らせて、喉の奥まで咥え込んだ。鼻先に薄い体毛が触れる。舌で裏を撫でながら喉を動かすと、先輩の呼吸がわずかに乱れた。 「……ん、」  先輩の鼻から息が漏れる。  目は閉じたままなのに、小さく反応してくれるのがたまらなくいとしくて、アオくんは夢中でしゃぶった。先端を舌で転がして、裏筋をなぞって、また奥まで飲み込むように喉を使う。 「は……っ、」  今度は先輩の唇が開いて、はっきり声が出た。  その瞬間、アオくんは髪を雑に掴まれて、ぐいと頭を引き離される。 「お……まえっ! なに……っ、やめろ、出る」  寝起きで掠れた、でも切羽詰まった声。目を開けた先輩が、息を乱したままこっちを見下ろしている。  アオくんは髪を掴まれたまま、少しだけ目を細めた。 「どうぞ」  そう言って、じゅぷ、と咥え直す。 「っ何してんだよ……」 「かわいそうなくらい、お疲れのようなので」 「こんなの、……やるキャラじゃねえだろ……」  その弱々しい声に、アオくんは口を離して少し笑う。 「いまだけ嫁キャラってことで」  そしてじゅうっ、と音を立てて強く吸った。  先輩の腰が思わず跳ねた。次の瞬間、どぷ、と口の中へ熱いものが流れ込んでくる。どろり濃くて、舌の上にかたまって溜まっていく。 「っ……、く、……てめえ……」  また髪を掴まれて、顔を上げさせられた。  暗闇の中で目が合う。  アオくんは口の端を少し濡らし、先輩を見つめたままごくんと喉を鳴らして全部飲み下した。  それを見て先輩の眉が悔しそうに寄る。 「……俺は、自分の嫁にこんなことさせねーよ」  その言い方がおかしくて、でもなんだかうれしくて、アオくんはへへ、と小さく笑った。  先輩は深く息を吐くと、そのまま力尽きたみたいにまた枕へ沈んでいく。 「……ほんと、おまえ……」 「寝てください」 「……おまえも寝ろ」 「はぁい」  ズボンを適当に整えてやって、アオくんももう一度隣へ潜り込んだ。  すると先輩がまた、腕を伸ばしてくる。探るようにアオくんの背に触れて、そのまま抱き寄せた。 「……ばかだな……」  掠れた、でも甘えが滲んだ声だけ残して、先輩はまたすぐ眠りに落ちる。  ぴったりくっついた体温と寝息が、さっきよりもっと深く胸へ染みてくる。  アオくんは短いため息をついた。  さっきまでどきどきとうるさかった心臓が、今度はじんわりやわらかく熱を持っている。 「……朝になったら忘れてるんでしょ」  小さく呟いても、返事はない。  でも先輩の腕は離れなかった。  明日には消えている甘えた声、甘えた腕。  口の中に残る先輩のにおい。  ひとりじゃないベッド。  今ここにあるそれらがどうしようもなくいとしくて、少し苦しいくらいで、アオくんは先輩の黒髪をもう一度だけ撫でたあと今度こそ目を閉じた。 終

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