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第2話 贅沢な男

 次の日、掃除と洗濯をした後ジムで汗を流し、早めに家に帰った樹は渡辺の帰りを待っていた。 「おかえり!」  待っていましたとばかりに玄関に駆けつけ、大きな背中に腕をまわす。 「ただいま。樹、当分撮影ないんだよな?」 「うん」 「おみやげ買って来たぞ」  昨日、鶏肉しか茹でてくれなかった渡辺がケーキを買ってきてくれた。 「やった!」 「シャワー浴びてくるから、カレー温めておいてくれ」  料理ベタな樹のために、渡辺は料理を担当している。仕事がある日も、早めに起きて夕食の用意をしてから出勤する。  それついて常に申し訳ないと思っている樹は、これまで何度も料理に挑戦し…毎回玉砕していた。  ―こんな不味いもの…どうやったらできるんだろう…  自分で作っておきながら首をかしげる樹を前に、“食えなくないだろう”、“こんなもんだな”と、微笑みながら食べてくれる渡辺。  だから余計に申し訳なくて料理ができない。それでも、いつかは…と、密かに動画を見ながら勉強中の樹であった。  一応掃除と洗濯は自分の担当だけど、渡辺は家事全般をそつなくこなす。  だから樹は不思議で仕方なかった。なぜ渡辺は結婚しないのか?というよりも、なぜ女性たちは渡辺と結婚したがらないのか?  女性は細マッチョが好きらしい。渡辺はまさにその細マッチョ。モデルをしている自分より背が高く、顔だって同僚のモデルよりイケメンだ。  仕事はカメラマンだけど、大手出版社に所属しているので収入も安定している。これ以上ないってくらい好条件なのに、どうしてこの歳になるまで結婚しないんだろう…  これまで何人かの彼女がいて、写真を見せてもらったり実際に会ったりもした。  だから女に興味がないわけでもなく…38歳になるまで独身である理由が見当たらなかった。  アタックしてくる女性が多すぎて、誰にしようか目移りしてしまうのかも…だから、“選びすぎて結婚できない贅沢な男”なんだろうと、樹は結論を出していた。

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