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第3話
夕方の薄暗い放課後の教室には誰もいない。
もう下校時間をとっくのとうに過ぎているからだ。
だがすぐ隣の多目的室には物音が聞こえてきており、誰かいるようである。
荒い息と生々しい雄の匂いが充満し、粘着質な音が響く。
男の声だろうか、微かだが廊下にまで声が漏れている。
「お前っ…、女みたいな面してて…、俺の事…っ、誘ってたんだろ…?」
「どうだよっ…へへっ……ここもヒクヒクしてて…ほんと女みてぇだっ…!」
「ちっ…ちがう…そんなの…たすけっ…ひっ…」
ズチュッ…
グチュッ…
助けを呼ぶ声が微かだが聞こえるも、誰にも、どこにも届かず。
虚しくも情けない声で少年は助けを求めてつづけた。
***
太陽が昇り、日が差してきて辺り一面を明るく照らす。
雀の鳴き声に羽音が聞こえ、川崎正義は飛び起きた。
「はっ…はぁ…はぁはぁ……ゆ、…夢か……」
異様なほど心臓がバクンバクンと鳴っており、汗をかいている。
自身の胸を押さえ、布団の上で自分を抱きしめるように蹲った。
「僕は…何をやってるんだろう………」
独り言は誰にも聞こえず。ただ宙をさまようだけだ。
冷や汗は止まらず、過去の古い記憶だけが心に傷を残し、正義は震えた。
「あいつ等と同じことをやっているのかな…僕…」
今にも泣き出しそうな声と震えが止まらない体に余計にギュっと力が入り、もう一度強く自身を抱きしめ直す。
河崎正義は昔、学生時代に虐めにあっていた。
容姿がおとなしく、目元は可愛いらしかったため、からかいの的にされていたのだ。
果たして今自分がやっていることは、許されることなのだろうか。
そんなの誰から見ても意見は同じであろう。
少年に性的な行為を教え、乳首を弄り、少しずつ開発していっている。
あの竜二くんを見ていると、可愛いと思う反面、恐怖がフラッシュバックする。
河崎正義はあの子を一目見て気に入り、そして将来絶対不良になるだろうと思った。
自分を虐めたあの不良たちのように、あの子も成長してしまうのか?
今はまだ小学生で純粋で可愛いものだ。
やっていることの善悪の区別もまだはっきりついておらず、好奇心に身を任せている。
正義はあの子に不良になってほしくないと思うと同時に、その純粋さを汚したいと思っていた。
乳首を弄りはじめて、もう数か月たつ。
そろそろ日常生活に支障が出て、困るころだ。
そしたらニップレスをつける生活があの子に待ち受けているのだと思うと正義はゾクゾクした。
自分は今、あの頃のいじめっ子と変わらないのかもしれない。
けど、純粋で可愛いらしい竜二くんが愛しいくて、好きすぎて、止められない自分がいた。
「ごめんね……」
どこからともなく出た謝罪は、誰も拾ってはくれない。
***
秋が来て、肌寒い季節がやってきた。
俺は相変わらず正義の部屋に通っていた。
乳首はジンジンとして、触ると腰のあたりがゾクゾクして気持ち良い気分になってしまう。
正義に相談したら、毎日乳首を優しくマッサージしていくと良いと言われたので実践しているけど、ムズムズする。
この前、正義と風呂場でいつもの行為にふけっていたら、俺のちんちんが固くなって正義のと同じ白いヌルヌルした体液が出てき
た。
俺は驚いて怖気づいたが、正義は落ち着いた様子で「精通だよ。大丈夫、大人の証だ」と言っていた。
その時の正義の顔が落ち着いてるように見せてどこかぎこちなく、様子が変だったのが気になって、自分たちはこれからどうなっ
ていくのだろうかと思った。
家で寛いでいて、少しでも体を動かすと、布がこすれて乳首がジンとし、股間が熱くなってくる。
正義との行為を思い出し、あれがとても性的な行為だったのだと今更ながら自覚し、顔が真っ赤になった。
恐る恐るズボンを下ろし、自身の性器を見ると立ち上がっており、正義にやっていたように上下にこすると快感がゾクゾクと腰か
ら背中にかけて電撃が走ったような感覚が襲ってくる。
「はぁっ……まさ…よし…っ…まさよし…」
正義の快感に熟れた顔を思い出し、長いまつ毛、綺麗な眼、一つひとつ想像し、性器を上下にこする。
気が付くと、乳首まで手を伸ばし、カットバンで保護していた部分をめくって露出させ、指先で乳首をこねると余計に快感でゾク
ゾクする。
「っぁ…はぁっ……」
左手で乳首を弄り、右手で性器をこすり、自慰にふける。
快感に体がしびれ、すっかり自分は正義の手によって調教されたのだと思い知らされる。
思い出すのは正義の顔や声ばかりで、自分が正義に欲情していると自覚し、体温が上がり体が熱くなる。
乳首を指先の腹でクリクリと弄り、少しつねるとジンジンして気持ちよくて弄る手が止められない。
もうここ最近はずっと乳首を弄っていたから、色は濃いピンク色になり、熟れた果物のようで美味しそうである。
「っあぁ…ああ……」
一人、部屋にこもり、自慰にふけり、俺は自分と正義との関係がとてもじゃないけど人に話せない関係だと思った。
***
「やあ竜二くん。いらっしゃい」
肌寒い季節がやってきて、周囲の人はみんな暖かい長袖のシャツを着るようになった。
竜二は相変わらずシャツに短パンで、子供は風の子を表現したような感じである。
「なあ、正義。話があるんだ」
「なんだい?」
アパートの玄関前で話すのも何だと思い、竜二は靴を脱いで中へ入っていく。
正義も何も言わず、玄関の扉を閉め、後を追っていく。
いつも通っているから良く見知っている部屋に、ちゃぶ台がポツンと置いてある。
「正義、俺、最近変なんだ」
「変っていうと…?」
「乳首がムズムズして、弄るとちんちんが固くなるんだ。弄りたくなるんだよ」
「そうか…」
「俺、変なんだ。ちんちん弄って、乳首弄ってるとき、正義のこと考えちゃうんだ。」
「……」
「なあ、正義。正義は俺の事、好きなのか?俺は、正義のこと、好きなんだと…思う」
竜二が恥ずかしそうに自身の話をはじめ、正義は少し嬉しそうな表情で聞いている。
この時を待っていたと言わんばかりである。
「竜二くん」
正義が立ち上がり、竜二の背後に回り、後ろから抱きしめる。
いつものイヤラシイ行為をするときのようではなく、大切なものを包み込む用に竜二を抱きしめ、うなじに顔を寄せる。
「っあ、……ま、正義…?」
「先に謝っておくよ……汚い大人でごめんね」
「え……」
「僕も君が好きだよ。竜二くん」
竜二が身をよじって振り返った先に見た顔は、正義の情けないほど泣きそうな表情だった。
抱きしめる腕に力が入り、より二人の体が密着する。
「僕たちの関係はどこから見ても犯罪だ。最初からわかってたけどね…」
「ま、…正義?何を……」
「けど、この関係は今日で終わりにしようか……」
「え…、突然何を言ってるんだよ!!」
「ごめんね、竜二くん」
そういうと、正義は竜二の初めて会った時より数センチは背の高くなった身長を愛しそうに、けど切なそうに眺めた。
そして初めての頃のように坊主頭を優しく撫でた。
気が付いたら出会ってあと数か月で1年がたつ。
竜二の身長も伸び伸びて、きっといつか近いうちに正義の身長を超すだろう。
正義が一人、感傷に浸っていると、竜二が頭突きをしてきた。
ズドンッ!
「痛っ!」
「バカヤロー!!勝手に一人で決めつけるな!!!」
「竜二くん…」
「俺はお前が好き!俺もお前が好き!それならそれでいいだろ!!!」
怒った顔で竜二が正義に頭突きをかました後、反動で床に座り込んだ正義の首元をつかんで思いのたけをブチまけた。
正義は呆気にとられ、竜二の鋭くも大きい目に圧倒される。
「お前が俺を誘ってこんな体にしたのに、今更犯罪だァ!?都合が良いんじゃねーのか!?」
「乳首だってもう俺は他の奴らと違う!シャツで少しこすれただけでジンジンして変になる!!全部お前のせいだろ??」
「俺は許さないぞ!!正義!!」
怒涛の勢いで竜二がまくし立てて、正義にもう一度訪ねる。
「これからも俺に、楽しいこと、いっぱい教えろ!!!!」
部屋はシーンとしており、鳥のさえずりがたまに聞こえる。
正義は竜二の真剣な目に、いつのまにか逞しく成長した体つきに、精神面もいつのまにか成長していたか…と思うと笑いがこみ上
げてきた。
「ははっ……竜二くん。本当に君は、魅力的だよ」
「何笑ってんだよ!!俺はお前から離れないからな!!!」
「わかったよ…こんな変態なお兄さんで良ければ」
「わかればいいんだ!」
竜二が満足そうにうなずき、すっかり慣れた様子で正義の顔に口づけをしている。
正義も、心の中にたまっていた黒い影が消えていくような気がした。
「君といれば、僕も変われるかな」
「なんの話だよ。お前は初めて会った時から思ったけど暗いよな。正義」
「なっ……失礼な…」
「俺が変えてやるよ!お前のこと!!!」
竜二が太陽のような笑顔で正義を見つめ、思わず正義も笑顔になる。
***
初めて会った時は、コンビニでいつも何も買わず、時間をつぶしている子供がいると思った。
自分の性癖で、小さい男の子が好きで、坊主頭にタンクトップ、短パンから伸びる骨太な手足に欲情した。
いつも一人でいるし、暇なのだろうと思ったのだ。
逃げられても構わないけど、少し遊んでみようかなと思い、声をかけ、家へ招いた。
けどこの子は、いつまでも純粋で真っすぐで自分の痛い部分を貫くかのように見抜いてくるような気がした。
性的なことをしていると本人も気づいているはずなのに、いつもいつも飽きずに自分の部屋へ来る。
性行為こそ、抜き合いっことチクニーしかしていないが、十分この子は開発されてしまった。
完全に自分好みのショタに仕上げた。
だからこそ、精通がきたとき、もう子供ではなくなるのか…と思い少し残念に思った。
今の自分がやっている行為が楽しくて夢中になっていたが、学生時代のトラウマがフラッシュバックしてきて、罪悪感が沸いた。
ちょうど、竜二くんも少年期を終えるころだし、潮時なのかもなと思った。
どこか遠くに引っ越すのも良いと考えて、新生活に想像を張り巡らせていたらこの子は僕の部屋にやってきた。
恨みの言葉か何か言われるのかと思ったらまさかの告白で、思っても見なかった。
僕もこの子と一緒なら変われるのかなぁと思った。
自分にとって、想像以上に竜二くんという存在が光のように明るい存在であると知らしめられたからだ。
***
「正義、俺ぜったい大きくなるから。正義より強い男になってやるよ!」
「そうなの?可愛いままでいいんだけどなぁ」
「俺はカッコイイ男になりたいんだ!!!」
居間で正義の膝の上に座り、竜二くんは可愛いらしく話す。
僕はショタコンで、大きい子にはあまり興味は沸かないはずだったんだけどなぁ…。
この子の成長がとても楽しみになってきた。
正義は、あ…と言い忘れていたことを思い出し、竜二くんをギュッと抱きしめた。
「竜二くん、不良には絶対にならないでね」
「不良~?弱い者いじめする連中だろ?俺あんなかっこ悪いのならないよ!」
「そっか…良かった…」
「正義はイジメにあったことあるのか?」
「昔、ね…。君にはまた今度、追々話すよ」
「ふーん」
今、とても満たされた気分だと双方が思い、目が合い、また笑った。
この幸せがいつまでも続けば良いと願い、思い、ただ時間だけが過ぎていく。
一日でも早く君に追いつくために。
HAPPY★END
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