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第4話
タイトル「憧れの君は銀猫4」
流れで二匹の美人猫を飼う羽目になった長瀬咲男。年は二十五歳。石畳の階段の多い街に住む普通の会社員だった。
猫の名前は大我と彩我。人型でセットでいるとモデルが出来るほど綺麗だった。しかし咲は猫を飼うつもりもなかったし、ましてや二匹とか無理だと思っていたのだが、現実は正反対な日常となっていた。
二匹はサカリが過ぎても性欲が収まることはなく、逆に興奮状態が続いてるんじゃないかと思う位だ。
「咲。今日はH出来る?」
聞いてきたのは大我のほうだ。
「俺もしたいっ」
割って入ってきたのは、もう一人の彩我のほうだった。相手をするのはもちろん一人しかいない。咲だ。
「僕はね。君たちのためにも働かなきゃならないんだよ? おいしいご飯、食べたいだろ?」
「うん」「うん」
「だったらちゃんと言うこと聞こうね。僕は今からお仕事に行ってきます。僕がいない間は外に出ててもいいからね。家にいるならこの窓から。分かった?」
「うん」「うん」
「じゃ、行ってくるから」
「いってらっしゃい」「いってらっしゃい」
二人同時に同じことを口にして手を振っている姿を見ながら玄関ドアを閉める。
「はぁぁぁぁ」
彩我が来てから。
二人の間には仲間意識みたいなものが生まれていた。だから大我が「咲とHした」と聞いて、「それなら俺も」と言う気らしいと言うのも分かっていたので警戒しかなかった。
「何で僕が……」
それでも飼い主としてしっかりしなくちゃと言う気にもなる。
「だけどアレはなぁ……」
気持ち良くなかったとは言わない。だけど現状は今度するなら二人相手と言うことになるだろう。それには自信ない以外何ものでもなかった。
「困ったなぁ。どうにかならないのかな……」
職場に向かいながらそんなことを考えて物思いに耽る咲だった。
●
「なあなあ。俺たちもう家猫じゃん?」
「……ああ」
「Hって気持ちいいのか?」
「今、なんか「したい」って気持ちマシマシだから、正直咲じゃなくても「いいよ」って言ってくれる相手なら誰でもいいって感じ。お前は?」
「俺? 俺はまだしたことないから、まずしてみたい」
「だったら外に出て探せばいいじゃん。すぐに見つかる」
二人して室内から窓の外を眺めてそんなことを言い合う。
「だったらお前だって外に出て相手探せばいいじゃん。咲じゃなくてもいいんだろ?」
「いいはずなのに、その一歩が踏み出せない。俺、咲が好きだから」
「ぇ……。何それ……」
「何かさ、野良だった時って行き当たりばったりって言うか、やれる時にやれることしておかなくちゃって思ってたけど、今はおとなしく待ってるだけで美味しいごはんと暖かい寝床はあるわけじゃん」
「まあ」
「いつ外に出てもいいよって言ってもらえてるわけだし、いざ誰と何してもいいよってなると今を大切にしたい、とか思っちゃったりして」
「……」
「俺、する時は咲とって決めてる。だからお前は違う人探してくれ」
「ぇぇぇ……。俺も咲としたいんだけど」
「駄目。咲は俺とって決まってるから」
「別にそんなこと決まってないよな? 外じゃ」
「何度も言わせるなよ? 咲とやったら追い出すからな」
「喧嘩か? 俺と喧嘩しても咲じゃなきゃ駄目って言うのか?」
「今はそれ以外考えられない。咲は俺のものだ」
「うーーん……。だったら見るのはOK?」
「……?」
「H見てるのはOK?」
「ぇ……。そ……れはっ……どうかな」
突拍子もないことを言われて返事に困る。
自分的には別に構わないと思うのだが、たぶん咲的には駄目とか嫌なんじゃないかと思う。
人間ってそんなものだし、と言う猫と人の違いを何となく分かっていた大我は、どうやってこのどうしようもない同居猫を言い包めてやろうかと考えていた。
「あのさ。猫の交尾と人との行為って違うと思うんだよな」
「そうなのか?」
「うん。たぶん」
「そうなのか?」
「だって猫は雄としたいと思わないだろ?」
「そう……?」
「だって猫同士の交尾は子孫増やすためだもん。でも咲との行為はそれじゃない」
「じゃあ何」
「気持ちいいことしたい」
「だったら俺もしたいっ!」
「だから駄目だってば!」
「そんなこと聞いたら俺だってしたいって思うの当然だろ!?」
「だから咲は俺と最初にしたんだから俺のものなのっ!」
「違うね! 俺だって咲と一緒に暮らしてんだから、俺にだって権利はあるはず!」
「だったら、本人に聞いてみようよ!」
「ああ。それが一番いいかもね!」
言い合いになって両者タテガミ並みに毛を逆立てる。今にも取っ組み合いの喧嘩になる直前で留めたのは、一重に主人のためだった。
「咲がいない間に血を流すわけにはいかないからなっ」
「それは言える。だけど俺の気持ちは変わらないからなっ!」
言われて言い返せばまた同じになると、グッと大我は我慢した。
先は俺のもの。俺だけのものだもんっ。
終わり 20260806
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