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番外編:ふたりのその後 ②

「そういや、(うた)ちゃんって部長の名前から?」  堂前が何気に口にした疑問に、みんなが「なるほど」と納得の空気を纏う。  俺の腕の中にいる天使は立木 詩(たちき うた)ちゃん。何を隠そう立木部長と洲崎事務長、ふたりのかわいい生まれたばかりのお子さんだ。  立木部長の名前は立木 悠詩(たちき ひさし)。詩ちゃんという名前を聞いた瞬間に誰もが、堂前と同じ感想を持つに違いないのだ。間違いなくそうなのだろうと、疑わない流れ。 「あー。悠詩くんの詩って漢字は後付けなのよねえ……」 「後付け?」 「うん。そう。諏訪くんの " よう " の " う " と犬神くんの " あらた " の " た " で " うた " にしたくて、この名前にしたから」  このお母さん、とんでもないことを言い出した。 「い……っ!いやいやいや……!なんてこと……!嘘でしょ?!俺と新がなんでここで出てくるんですか……?!」 「えっ。だって私と立木くんがこんな事になってるのも君たち2人がいたからでね?充分すぎる理由じゃない?」 「ちょ、部長……?!そんな理由で名前決めていいんですか……?!」 「諏訪……それに犬神も。俺もお前たちには、感謝してるんだ。本当に。俺はこの名前を玲から言われて二つ返事でオッケーした」  マジか。ていうか立木家、大丈夫か……?!洲崎さんがネジがぶっ飛んでるのは昔からだけど、立木部長まで毒されている……っ!  日下部と堂前は何故かウンウンと深く頷いていて、新は理解が追いつかないのか固まりまくっている。固まってても……恰好良い……ってそうじゃなくて。  ひとりでアワアワしてる俺を見て腕の中の天使はキャッキャと笑っている。何たる天使。かわゆす。俺の中のキモい天使とチェンジしたいくらいだ。  そんな可愛い天使に申し訳なくて、思わず天使を見つめながらしょぼしょぼと謝る事にした。 「う、詩ぁ……ご、ごめん……まさか、俺と新から捩ってるなんて……強く、生きて」 「う?」 「諏訪くんみたいにさ……この子には、すっごく優しくなってほしかったんだよね」  ふと、目の前のソファに腰掛ける洲崎さんから聞こえた声に吃驚して、詩へと向けていた視線を彼女へ移した。  そこには、ニッコリと優しく微笑む洲崎さんがいて。 「諏訪くんみたいに優しくて、犬神くんみたいに周りのことよく見れる子になって欲しかったんだ。君たちふたりは、私と悠詩くんの大事な後輩で、誇りだから。勝手に名前使ってごめん。でも、完全に私と悠詩くん、解釈一致だったから」 「ごめんな。そういう訳だから」  にしし、と笑いながら答えた洲崎さんの横にいた立木部長もにししと笑って。そして、立木夫妻には敵わないなと実感する。  そんなふたりを見て、目頭が熱くなって。  俺は大人気なくその場で大泣きしてしまったのだった。  ◇ 「……羊、子供……すき?」  家に帰ってイヨと戯れていると、俺を後ろから抱きしめていた新が不安そうな声で俺に質問をした。  聞こえてきた新の声色と雰囲気が寂しそうで、心配になって新の方を振り向くと申し訳なさそうな、悲しそうな表情で。  そんな顔してほしくなくて、俺は新をぎゅ、と抱き締める。 「羊……?」 「んー……、子供は、好きだよ。かわいいし……きっと育てるのって大変だろうけど、自分の子供がいる未来を、考えた事がないって言ったら嘘になる」 「ん……」 「でも……その妄想の中の、俺と俺の子供の横にはさ。絶対、新がいるんだよね」 「……っ、」 「新が、俺の横に居ないと……意味、ないから。だから、そんな悲しい顔、しないで……?――ん、」 「っ、羊……、ん、――羊……っ!」    何度も何度も、角度を変えて口唇を求められて。  次第に深くなった口付けは、お互いに貪るように求めていて……愛しさが、溢れる。  君が隣にいてくれなきゃ、絶対嫌だ。  新じゃなきゃ、意味がないんだよ?  まるで、底なし沼みたいに……抜け出せない。 「――は……っ、本当に、羊ってヤバい……」 「ふぇ……?」 「底なし沼だよ。好きが、……っ、更新、されてく」 「っ!偶然、だな。俺も……同じ事、思ってた――好きだよ……?新が、好き……っ、ね、えっち、しよ」 「言われなくても、そのつもりだよ……っ!」 「っ、……あっ……!」  何度も、穿たれて。  何度も求め合って。  今日、何故か腐女子腐男子のBL談義に参戦させられて、洲崎さんや日下部や堂前から「オメガバースっていうジャンルがあって、頸を噛むと男同士でも番になれるし、バース性によっては妊娠できるのよ」って言われたのが頭に残ってて。  熱に浮かされた頭で「新の子供が欲しい」なんて考えちゃって。最中に新に「頸強く噛んで」とお願いしてしまった俺は、どうかしてる。 「なんで……?」と愛おし気に質問してきた新にそのまま今日洲崎さんたちに言われたその事を伝えると「ほんとに、底なし沼だ……」と深い溜息を吐いて。  呆れてしまったかな?と新の顔を覗き込むと、そこには「フー……ッ」と息を吐き切って、今にも俺を喰べたい欲を押さえ込もうとしている獰猛な雄がいた。 「仰せのままに」と言った瞬間に、俺の蕾に凶器を打ち付けて、同時に俺の頸を強く噛み付いた新もどうかしてるし、噛まれた痛みと喜びで感じてしまって意識が飛んだ俺もどうかしてる。  ついでにいうと。  噛まれた痕がずっと消えないのも、新からほろ苦いビターチョコの香りがするのも、どうか、してる。  fin.    

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