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第1話

第二性をα、Ωに持った人間ならば一度は憧れる関係――それが「番」だ。 しかし人間とは価値観や相性が物を言う。 俺も何度かマッチングアプリや自治体主催のお見合いパーティを試してみたがΩとの縁はなく、自然とできていたのは同じ会社勤めの、α性の彼女だった。 別にα婚に拘ってたわけじゃないが、彼女の見た目にも性格にも問題はなかった。誰もが羨む飛び切りの美人キャリアウーマンで、俺は成績優秀な営業マンだった。同僚たちには『α同士つり合っている』とか言われてたし、俺も思っていた。 ………なのに、付き合って五年目。 『ごめんなさい、恭介。 私、運命に出会ってしまったの』 覚悟を決めようと誘った高級レストランでの食事で、彼女に告げられた別れ。 しかも相手は俺の部署に配属されてきたばかりのΩだという。 生まれて初めて、運命サマとやらに苦情を叩きつけてやりたかった。 菅嶋 恭介。今年三十二歳になる会社員。 超大手の優秀営業マンとしてバリバリに輝いていたのは、いつの時代か。相手はΩだから寝取られたというより、元カノが喰った側だろうけど、すっかり意気消沈した俺は会社を退職。 中小企業に転職した今じゃ、のんびりとした普通の営業で……第二性のαを隠して生きている。 (またコンビニ弁当も値上がりしたなぁ。ま、ウマいからいいんだけど) 今日も安定の定時上がり万歳だ。 それに明日は土曜日だ。うっきうきで弁当とつまみ、好きなだけ酒を買い込んだ。 しかし、あと少しで家――ってところで、恭介はマンションの通路を歩く足を止めた。 (ん? 誰だ?) 家の前に、やたらとデカいスーツケースを携えた若い男……が立っていた。 来客の予定はないし、これは……。 ははん? 東京観光に来て、俺と同じマンションに住んでいる兄弟か友達の家に泊めてもらうはずが、訪ねる部屋を間違えてしまったパターン……とか? 「おい、そこの人。ウチになんか用か?」 「……!」 ふんわりとしたミルクティー色のショートヘア。 そして、ハッと酷く驚いた表情で恭介を見上げる真ん丸の二つの瞳。 (しまった、ビビらせちまった……) 高校生くらいかもしれない。 『友達を部屋の前で待ってたら、ヘンなおじさんに声をかけられた』。なーんて、冗談じゃない。 そんなことで焦る俺をよそに、見知らぬ若者は現れたおっさん(俺)にパチパチと瞬きをしている。 「あー……そこ、俺んちなんだわ。もし誰かの家と間違えたんなら」 「菅嶋恭介」 「は? ええっと……悪い。俺の知り合いだっけ?」 「菅嶋恭介!! 約束通り十八歳になったから、俺をアンタの番にしろ!」 ――――は??

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