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第2話

菅嶋 恭介。今年三十二歳になる会社員。 見知らぬ美少年に、玄関前で求愛されました。 「いやいやいやいや!? ちょっとお前、落ち着け」 「お前じゃない、桜井! 桜井蒼汰だ!」 「さ、桜井…?」 桜井…、桜井…! と、必死に記憶を辿れば、「ああ!」とやっと思い当たる記憶があった。 「ああ! お前、桜井の、蒼汰か!久しぶりだな!?」 「他に誰がいるんだよっ」 ええっと、コイツと俺はどの親戚関係に当たるんだ? さすがに遠すぎて知らんけど、曾祖母の妹の家族が「桜井」だった。 (そうか、あの泣き虫だった蒼汰が……) 田舎にある実家がまぁまぁ太かったこともあって、昔は法事やらで遠い親戚と顔を合わせることが多かった。 記憶の片隅にいる蒼汰は、Ωだと揶揄われて泣いていた豆粒くれぇ小さいガキで―― 「豆粒じゃない!」 「うおっと」 口に出ていたらしい。 ガルルル…と噛みつきそうな顔で抗議されてしまった。 「あー…んで、何の用?」 「はあ!? さっきのやり取りをなかったことにする気か!? 俺は、アンタの――」 「いや、断るぞ。普通に守備範囲外だ」 「な……!?」 それより俺は早く家の中に入って酒を飲みたい。 とっとと帰れと追い返そうとしたが、まさかの「家に入れてもらえるまで外で待つ」とか言いやがる。 さらに寝袋も持参済みだとか抜かすわで……コイツ、マジでありえんだろ…。 「おい、コラ。第二性の自覚あんのか?」 「あるから番にしてくれって頼んでる。それに約束した」 「~~~~~~のっ、クソガキ」 ――馬鹿なのか?? ――いや、馬鹿だろ。 そんな約束、俺には覚えがない上にこの危機感のなさだ。ひくっと顔の筋肉が引きつる。 これでは埒が明かない。 家に電話してやると不本意にも蒼汰を招き入れると、早速桜井さんに電話した。 『遠い親戚でも親同士が仲良くて交流が深い』 ……などという、お約束はない。 (まったく何を考えてんだか…) しかし、事態は俺の斜め上を行く。 * * * 「はあああああああああ!?」 部屋の中に響く、俺の絶叫。 俺は蒼汰の母親に電話をした。そして経緯を説明した。 もちろん電話口の母親はブチ切れるか、慌てて「すぐ迎えに行きます!」ってなるのが普通の流れだ……普通ならば。 『うちには息子なんていません』 返ってきたのは、その冷たい言葉とガチャッという音だった。 「なんで!?オレオレ詐欺と勘違いされたのか!?」 意味がわからず怒りに震えるα。 その光景を見た当の本人は、ソファーの上でクスクスと笑っていやがる。 「俺、ずーっと母さんに『出てけ』って言われてたもん」 「は」 「まぁそれでもどうにかして…やっと高校を卒業!それで世間的には立派な成人だし、家を出たわけ」 「はあ!?」 いやいや、ふざけんなッ!!誰だよ十八歳で成人にしたヤツ!? スマホがメキメキと音を立てそうなくらい握ってしまう。 「なに? お前、なにやらかしたんだよ」 「俺はなーんも。ただ母さんの再婚した……新しい親父が俺のケツ触ってきたくらい」 「は……?」 「それでちょっと揉めちゃってさ。前の父さんとは…んー…あんまり言いたくないし」 ――――は? もうずっと「は?」しか言葉がない。すっかりリアクションも失っていた。

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