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第3話

つまり蒼汰は家出っつーか性的な……虐待から逃げたのか? それで寝袋とデカいスーツケースが一つ。 でも……お前は、そこからどうやって生きてく気だったんだ? 「蒼汰――」 「って言ったら同情してここに置いてくれる?」 「……ふざけんなよ」 しっかし、どうする?肝心の母親があれじゃあ蒼汰を追い出すこともできない。 それにこれは犯罪だ。犯罪だろ? 「今すぐ警察に、」 「ねぇ……でも母さんが再婚したのは本当。俺の性別のせいで母さんはなかなか再婚できなかったんだ。……やっと幸せになれたんだから、お願い。そっとしてよ」 「けどな、これは……」 「俺はこれでも平気なんだ。困ったら助けてやるって、恭介がお守りくれたから…」 ビービーと泣いてばかりだった蒼汰に、書いてやった俺の実家の電話番号のメモ。 『何かあれば連絡しろ。力になってやる』 でも、それいつの話だよ…と言ってやりたかった。 電話に出た母さんに俺のマンションの場所を教えてもらったらしいが、それはそれでうちの親はどうしたものか。あとでガチのクレームを入れてやる。 「お願い、ずっとじゃないから!迷惑かけないって約束する!」 「はぁー……分かったよ」 「!」 「しょうがないだろ。あとでもう一回…おばさんに預かるって電話してみるけど、お前もちゃんと連絡しとけ」 「うん!」 俺だって警察だのトラブルは避けたい。いくらワケありだからって誘拐犯扱いされるのはゴメンだからな。 「へへ、ありがとう」 「……はあ」 こうして渋々ながら、蒼汰と生活することになった恭介。 家事全般は蒼汰が「花嫁修行してきた!」とやる気満々なので任せることにした。それと、今後のためにバイトでも何でもいいから働くことも約束させた。 「あとは、共同生活に大事なルール作りか」 「たとえば?」 まず、恭介の寝室には入らない。 「背中は?」 「流さなくていい」 「エッチしたくなったら?」 「お前の発情期は専用のホテルに行ってもらう。もちろん、一人で」 「えぇー!?!?」 「え、じゃない!」 Ωの自覚を持て!!と叱ればブツブツと文句を言っていたが、意外にも蒼汰はちゃんとルールを守った。 朝は新聞配達、昼はファーストフード店でアルバイト。 夜の仕事は恭介が許さなかったので早めに帰り、家事と料理をしつつ恭介の帰りを待つ。 「へへ、新妻じゃん」 「誰が誰のだ。ほら、弁当ご馳走さん」 「……え、あ。 完食してくれたんだ」 今日も綺麗に平らげた空の弁当箱。それを受け取った蒼汰は、ぱぁっと微笑む。 ――実に嬉しそうに。 「? なんだよ、うまかったよ。サンキュー」 「……ん」 「でも、キャラ弁当はやめてくれ」 「なんで?かわいいのに」 「悪目立ちするわ」 職場のヤツらにはニヤニヤされるし、いい年したおっさんにはキツい。 しかし、これが蒼汰の「悪い虫対策」だったと恭介が知るのはまだ先のことだ。 「あ、そうだ。恭介、俺そろそろ来る…発情期」 「あー……なら予約しとくわ」 自宅で発情期を過ごせないΩを守ってくれる、周期専用のホテル。 スタンダードな部屋でいいと思うが預かっている身である以上、周辺の治安は良くて、セキュリティーはしっかりしたところで…。 「あ、ホテルは自分で選びたいか?」 「えと……それはいいんだけど、俺まだバイト代出てなくて……その……」 「ホテルで過ごさせるのは俺の事情だ。それくらい払ってやるよ」 大人の財力なめんな? なにが不安なのか…‥蒼汰はホッとしたような、安堵の表情を浮かべた。 こうして発情期が来る手前、俺は予約したホテルまで蒼汰を送ってやった。

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