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番外編:不器用なおじさん
番外編
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「やっぱり遊園地かなぁ」
お気に入りのソファーに寝そべった格好でスマホをいじる蒼汰が、とある画面を見つめながら呟いた。
「へー、遊びに行くのか?」
「違う!俺と恭介がオリヴァーランド行ってナイトパレード観るまでデートすんの!んでホテルでディナーを楽しんだあとは、恭介が……『部屋とってるぞ』って俺をエスコートって話!」
「ハハ。お前の中の俺ってバグりすぎだろ。つーか、ホテルでディナーなんてお前には十年早いうえに予算もねぇよ」
「ええー!?」
そもそもナイトパレードを見終わるころにはホテルのディナー時間が終わってるっつーの。
そんな恭介の冷たいツッコミに、蒼汰はぷくっと頬を膨らませた。
「妄想の中くらいいいじゃん! それに恭介が若いうちに連れ回しとかないと」
「おまっ…ひとの年をネタにすんな」
「ネタにしてないもーん」
ごろんと寝返りを打つと、デートに一切の興味を持たない恭介を上目遣いで睨む。
「大体さ、こんなに若くてかわいい恋人がデートの計画をしてるのに、なんで水を差すわけ? 普通は『俺もデートしたかった』って言わない?」
「だれが言うか」
「でも、デートは約束したよね?」
「……」
それはそうだが……オリヴァーランドだぁ?
「冒険」と「新世界」がテーマの大人気遊園地――故に人混みだ。
呆れたように溜息をつく恭介だったが、視線はテレビではなくソファーの上の蒼汰に向いていた。
「よりにもよって、なんでオリヴァーランドなんだよ。あそこは修学旅行とかの定番だろ」
「無理無理。頼れるような親じゃなかったし、それに……俺、Ωだしさ」
「あ…、悪い」
『集団行動にΩがなんて迷惑でしかない』と直接言わなかったけど恭介は瞬時に気づいたらしい。
そんなところが、大人だなぁって思う。
「責めてないってば。俺はそういうのとは、とっくに克服してる」
それでも気まずそうに視線を逸らした恭介に、蒼汰はそれ以上何も言わなかった。
―――――――
翌日。
(――失敗。昨日は恭介に、気を遣わせちゃったなぁ)
ぐつぐつと鍋の中でカレーが煮えるのを待ちながら、俺は昨日のやり取りを思い返して反省していた。
でも、俺は……やっぱり恭介が俺を「Ω」って目で見てないところが大好きだ。
中高と、クラスの中にΩ性の生徒がいる――それだけで学校に苦情を出す親がいることを俺は知っていた。だから、物心ついたときにはもう、学校の集団行事には参加しないと決めていた。
『そうか。……悪いな』
表向きはいつも仲良くしてくれる友達も俺が自主的に参加を辞退したときの方が安心した表情を浮かべていた。
(ランドに憧れはあったけど……恭介、人混みが苦手だって言ってたもんな)
やっぱり、遊園地はナシにしよう。水族館か動物園か……いや、もっと大人っぽいところのほうが恭介も喜んでくれるかもしれない。
遊園地に代わる別のプランを考えているうちに、玄関の鍵が開く音がした。
「ただいま」
「あ、おかえり!」
「お、カレーじゃん。めっちゃ飯テロの匂い」
「ふふ、蒼汰くん特製カレーだよー」
なんて得意気に言いつつも冷蔵庫のお掃除メニューの定番だ。
「ふふん、俺のおかげで恭介のうちじゃフードロスはなし! 社会貢献できてて俺も偉い!」
「あーそうだな、えらいえらい」
あんまり心のこもっていない褒め言葉だったけれど、珍しく恭介が俺の頭を撫でてくれた。
くしゃくしゃって、雑だけど…。
「……? 恭介、何かあった?」
「あったってか……あー、これ」
恭介がポケットから取り出して見せたもの。それは、華やかな観覧車と美しいお城のイラストが描かれたチケットだった。
「………え」
「オリヴァーランド、行きたいんだろ?」
チケットと恭介を、何度も交互に見てしまう。
呆然と固まる俺の反応に、恭介が「あー…」とバツ悪そうに声を漏らしながら、ぷいっと目を逸らした。
「……次の休み、デートしませんか?」
――――え、夢??
恭介が、はじめて自分から俺を誘ってくれた。
俺は、その言葉だけでもう、十分すぎるくらい嬉しいのに――。
「うれ、しい……っ」
「な、おい!?蒼汰!?」
チケットを両手で受け取った瞬間、ぼろっと大粒の涙が零れ落ちた。
だって、ずっと――― 口にしたけど絶対に行けない場所だと思ってたから……。
「恭介、好き! 大好き!!」
「ちょ!こら、火の前で人に抱き着くな!! 危ないだろ!?」
「早く番にして!」
「するか!」
口ではいつものように即答で拒否するくせに……。恭介は俺を無理に振りほどこうとはしなかった。ただ呆れたように溜息をついて、広い背中に回した俺の体をそっと包み込んでくれる。
ああ、俺。
いま、いっちばん幸せだ――――。
―――――――――――
後日。
遊園地デートをした二人ですが、恭介は散々蒼汰くんに振り回されてぐったりしていたそうです(笑)
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