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第6話(蒼汰視点)
その後:蒼汰視点
―――――――――――――――
恭介兄ちゃんが、好き。
とっても、大好き。
『ね、約束して』
大きくなったら、俺を――――。
* * *
もうすっかり慣れたものだ。蒼汰が恭介の家に上がり込んで二カ月になる。
その蒼汰が昼間、何気なく口にした言葉が、
「恭介。俺、数日留守にするけど作り置きはなにがいい?」
「は??」
「え?」
――あれ? もしかして聞こえなかったのか?
怪訝そうな顔をしてこっちを見る恭介に、もう一度繰り返す。
「だから、俺が留守にする間の作り置きの話を」
「いや、意味が分からん。なんで留守?」
「なんでって…もうすぐ発情期が来るんだってば」
「ああ、そうか」
「もー。ちゃんとカレンダーに印つけてんじゃん」
「でかでかと丸しているのにさ」と言えば恭介は謝ってくれたけど……ちょっと驚いた。一瞬、恭介が不満そうに眉をひそめた気がして……。
『共同生活のルールだ。発情期はΩ専用のホテルで過ごせ』。最初に約束させたのは恭介のほうなのに。
「いいよ。ここで過ごせよ」
「――!? そんなの…っ! え、本気で言ってるの!?」
「冗談でこんなこと言うか」
恭介の態度に、蒼汰は目を丸くした。
これは夢だろうか? 本当に夢かもしれない……。
「だって、だって…、また恭介に迷惑かけるかもよ…?フェロモンの、匂いだって…」
「お前、普段からうちで過ごすってわがまま言ってるくせに、今さら遠慮するのか?」
「えっ!?」
「あー勘違いするなよ。俺はまだ、あのクソ野郎を警戒してるだけだ」
実父に蒼汰を会わせたくないんだと恭介は言うが、その言葉は蒼汰の耳には届いていない。
(それってさ、つまり…)
ずっとずっと番になりたいと願っていた恭介が、現在、俺と付き合っている。
そしてついに―――発情期を一緒に過ごしたいと言った。これってつまり、俺と番になってくれるという合図だろう(そこまでは言ってない)。
「蒼汰。もし、心配事があるなら言え」
「へ?」
「ねぇわけないだろ? 俺はなるべく反応しないようにするけど、不安ならホテルを」
「おい、そこは「孕ますまで蒼汰を抱く」くらい言えよ」
「……悪い。やっぱ、ホテルに行ってくれ」
「ひどい!!」
俺の発言は冗談だけど、恭介のは冗談じゃない。
不満だと頬を膨らませたって、恭介には効果がない。
(俺は、もう何も知らないお子様じゃない。恭介だって……知ってくるくせに)
―――本能的に、「Ω」の求愛に「α」弱い。
でも、恭介が俺を抱いたのは俺がフェロモンテロを仕掛けた、あの一回きりだった。発情期でαに抱いてもらえるか、もらえないかはΩにとって重要な問題なのに…。
俺は生半可な気持ちで恭介にアタックしてるわけじゃない。まだガキって理由だけで『NO』を突きつけられたら傷つく。
「蒼汰。なんでそこまで……こんな、おっさんがいいわけ?」
「それは――」
「お前はまだまだ若いし、綺麗な顔してんだ。その年齢でふけ専とか将来困るぞ」
「………じゃあ、俺が恭介を捨てても平気なんだ」
拗ねたような俺の言い方に、恭介がぴくっと反応するのが分かる。
…………俺は、ずっと好きだったんだもん。
恭介がまだ田舎の実家にいたころ、俺は恭介と会うことが多かった。
だけど恭介が都会に就職して、なかなか会えなくなって、とても寂しかった。
法事で…、数年ぶりに帰省した恭介を見た俺が、どんなに嬉しかったか知らないだろ?
ずるいと分かってたけど……。酔いつぶれて眠る恭介に囁いた。
『大きくなったら、オレ、恭介兄ちゃんと結婚したい』
したら、恭介は答えてくれた。
『―――お前が……、十八になったら考えてやるよ』
その言葉に心が揺れた。
そのとき、俺はなんのために「Ω」に生まれたのか知った気がする。
ずっと、俺には分かってた。
恭介が――――俺の、「運命の番」だって。
だから、他の誰に笑われても否定されてもいい……恭介だけには「違う」って否定されたくない。
「俺は恭介の理想じゃないし、早く別れてほしいよな…」
「あ゛ー…。悪かった、そんなつもりじゃなかったよ」
「やだ、許さない。俺の機嫌直して」
バカ恭介。既成事実があるんだから、年の差なんて今さらじゃん。
俺が気にしてないんだから、早く諦めてくれればいいのに……。
でも、恭介からの『好き』って一言で……俺の暗い気持ちが消し飛ぶのも、よく分かっていた。
「あー…蒼汰がそんなに一緒にいたいって思うのって……運命なのかもな、俺ら」
「――へ?」
え……、なんで、……?
運命……って、言ってくれた……? 恭介から?
「はは。とか、思ってたり――……?」
「…………っ」
かーっと顔が熱くなるのを感じた。
――――――うれしい、恥ずかしい。
今、どんな顔をしたらいいんだろ……。
「蒼汰、お前……かわいいな」
「―――っ!?」
からかうな!! と、つい真っ赤な顔で怒鳴ってしまった。
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