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第6章 誰にも渡さない
数日後。
夜の暗さがすっかり街を包み込んだ頃、暁斗のプライベートサロンスタジオは、いつもとは全く違う、どこか熱を含んだ静けさに包まれていた。
機材の配置は完璧。
だが、いつもなら三脚に固定された大型カメラの後ろ、冷たい支配者のように立っていたはずの暁斗が、今は自らレンズの前に立っていた。
いつもきっちり上まで留められていた黒いワークシャツのボタンは胸元まで大きく外され、滑らかな鎖骨が露出している。
黒縁眼鏡を外したその切れ長の瞳は、かつての冷たい光を失い、ほんのりと赤らんだ頰の熱に浮かされるように、甘く、ひどく崩れた光を宿していた。
背後から、音もなく近づいてきた大きな影。
レオが、汗ばんだ暁斗の細い腰を大きな両手でがっしりと抱き寄せ、無防備な首筋へ容赦なく熱い唇を押し当てた。
吸い上げるような、ねっとりとしたキスの音がスタジオに小さく響く。
「……本当にやるのか? 暁斗。お前がレンズの向こう側から、配信される側になるなんてな。後でやっぱり『NGだ』なんて泣きついても、もうデータは消してやらねぇぞ」
耳元を震わせる、低い声。
その野生的な吐息に、暁斗の身体がビクリと愛らしく跳ねる。
暁斗は恥ずかしさに耐えるように一度目を閉じ、それから意を決してレオの胸板に背中を預けた。
「……もう、隠すのは終わりにしたんだ。視聴者にも……いや、俺自身にもな。カメラの後ろに隠れて、お前という存在を安全な場所から貪っていた、本当の俺を……歪んだ欲望ごと、全部晒してやる」
「へえ、いい覚悟だ。その甘く崩れたツラ、最高にエロいぜ」
****
暁斗は震える指先で、手元の配信開始ボタンを押した。
大型モニターのインジケーターが赤く点灯し、ネットワークを通じて二人の姿が世界へと同時に送り出される。
画面に映し出されたのは、逞しいレオの肉体に、細身の暁斗が完全に囚われている、危うく美しい構図。
タイトルはシンプルに、『監督と専属男優の裏側トーク』。
インディーズゲイビ業界で独自路線の天才と呼ばれた蓮見暁斗の初生配信、そして専属男優・轟レオとの同時出演という爆弾。
開始数分で視聴者数のカウンターは狂ったように跳ね上がり、画面右側のコメント欄は読めないほどの速さで埋め尽くされていった。
レオは暁斗の腰を軽々と持ち上げ、自身の逞しい膝の上へと完全に座らせた。
カメラに向かって、いつも通りの不敵で余裕に満ちた笑みを浮かべる。
「まあ、俺と監督の蓮見がこうなるのは最初から決まってたようなもんだ。こいつさ、現場じゃあ冷たい完璧主義者ぶって理想論を熱く語りながら、実はカメラの向こう側で、俺の一物に犯されたくて堪らないメスになりたがってたんだぜ? 撮影中、俺がカメラ目線で睨みつけるたびに、後ろを疼かせて熱い息を吐いてたんだからな」
「う、うるさいな……っ! 轟、余計なことを言うな……!」
暁斗は耳まで真っ赤に染めながらも、逃げるようにレオの分厚い胸板に頭を埋めた。
そのひどく慌てた様子が、さらにレンズの向こうの視聴者を熱狂させていく。
「レオ、お前だって知ってるだろ。……俺の作品に熱いコメントをつけてくれている視聴者の皆さんも……本当は、レオにめちゃくちゃに暴かれて、メスになりたいっていう抑え込まれた気持ちを抱えている人が多いんだ」
「だってさ……今視てるお前らもそうか?」
【はい、はい!!!マジ、俺メス堕ち希望!!】
【俺、ノンケっすが、轟レオ様になら……捧げたい】
【レオ様のおかげで、無事メス性、開花できました!!!】
【やばっ……煽りだけで、俺堕ちそ!!もっと、くれ!!!】
「ぷっ……暁斗、皆、お前と同じだってさ……気楽にいこうぜ」
「わ、分かっている……さて、今日は初配信ってことで、事前に皆さんから送られてきた体験談や相談のメール、いくつか紹介していく。ほら、レオ、最初はお前からだ」
暁斗は、視聴者に背中を押されつつ、震える声で進行を取り戻そうとする。
レオは面白そうに鼻で笑うと、机の上の端末から一通のコメントを選び、低い声で朗読し始めた。
「さて、メッセージを読むぞ。『轟さんの作品を見てから、自分も本当は激しく抱かれて、メスになりたいと自覚しました。轟レオのギラギラした目と、男を男でなくしていく瞬間の表情が忘れられません』……だってよ。どうだ、暁斗? お前が発展場で俺を見つけた時と、全く同じ気持ちじゃねぇか」
顎をすくい上げられ、強制的に視線を合わせられる。
暁斗はレオの獣じみた横顔を見つめながら、もう理性を保つことを諦めたように、甘く掠れた声を漏らした。
「……まぁ、否定は、できないかな。俺も、あの発展場の暗がりで……お前のあの目に、完全に囚われた。胸がざわついて、毎日、撮影が終わって編集室に籠もっている間も……お前の一物が他人のナカを抉っている映像が、頭から離れなかったんだ……」
「バカ。何ライブ配信でそんな素直に告白してんだよ。……照れくせぇじゃねぇか」
レオが一瞬だけ面食らったように笑い、暁斗の頭を大きな手で乱暴に、しかし愛おしそうに小突いた。
その二人の生々しい空気に、コメント欄の勢いは最高潮に達する。
【待ってた!!!ついに本命きた!!】
【あの冷徹な蓮見監督が受けになるとか奇跡すぎるだろ……!】
【轟レオの目がマジでヤバい。独占欲全開で監督を殺しにきてる】
【監督ののろけ顔が尊すぎて語彙力失う】
【もう既に画面が甘々じゃん、有料会員どこですか!?】
今度は暁斗が、画面に流れる相談コメントを指先で拾い上げた。
その文字を読み上げる声は、下腹部を突き上げるかすかな熱のせいで、小さく震えている。
「次の方……『自分にぴったり合う一物が、どうしても見つからない』っていう相談だ。……レオ、プロの男優として、どう答える?」
レオはドSそのものの不敵な笑みを浮かべ、レンズを真っ直ぐに射抜いた。
「簡単だ。ぴったり合う一物なんて、探して見つかるもんじゃねぇ。お前のナカに、ちょうど収まるサイズと形をした『運命みたいな強引さ』が向こうからやってくるのを待て。そして一度見つけたら、二度とナカから離すんじゃねぇ。……ちなみに、俺のこれはな……」
そこでレオはわざと言葉を切り、カメラの音声マイクが確実に拾う距離で、暁斗の耳元へ直接、熱い吐息とともに深く囁き込んだ。
「こいつ専用だ。誰にも渡さねぇよ」
暁斗が頬が、ぱぁっと真っ赤に染まる。
「……な、バカ、……お前」
【うわぁぁぁライブ感ハンパない!!】
【耳元囁きで既に監督がメス顔になってる、かわいい】
【独占欲強すぎて草生える、ガチ恋じゃん】
【続き見たい、神回すぎる】
コメントが大荒れになる中、レオは配信中であることなど完全に無視し、暁斗の腰を抱き直した。
大きな手が、服の上から暁斗の下腹部を押さえる。
「……っ! あ、何を、いきなり、だ、ダメ……っ!?」
暁斗の身体が弓なりに跳ね、甘く崩れた声がスタジオに響いた。
それだけで、コメント欄がさらに荒れる。
【監督の声やばい】
【今の反応、本物じゃん】
【続き見たい、神回すぎる】
【レオ様、独占欲の顔してる】
暁斗はカメラのレンズを見つめた。
見られている。大勢に。レオを欲しがる顔を、レオに触れられて崩れる声を。
その事実に震えながら、胸の奥では別の感情が熱を持っていた。
見せつけたい。
レオは俺のものだと、誰にも渡さないと、画面の向こうにいる全員へ叩きつけたい。
「レオ……欲しい……今すぐ……お前のが、欲しい……そして、それを視聴者に見せつけたい……っ! だって、レオは俺のものだって、皆に見せつけたいから……っ」
その言葉を聞いた瞬間、レオの瞳の奥の野獣が、強い独占欲で激しく燃え上がった。
「ふっ、いいぜ。……だが、視聴者には見せられねぇな」
「な、なぜ」
「そんな顔をしたお前を、これ以上あいつらに見せたくねぇからだ」
レオは不敵な笑みを浮かべ、カメラに向かって、低く重い、圧倒的な威嚇の声を叩きつけた。
「さて、視聴者のお前ら、サービスはここまでだ。これ以上は、一秒だって見せねぇよ。こいつはもう、俺だけのものだ。こいつの一番可愛い顔も、俺を呼ぶ声も、全部こっち側に置いていく」
【ええええここで切るなよ!!】
【独占欲強すぎて最高、本物のスパダリだ】
【続きはどこで買えますか!?】
大荒れのコメント欄を、レオはためらわずマウスを叩いて強制終了させた。
画面が暗転し、スタジオに本当の静けさが戻った瞬間、レオは暁斗の身体をソファから引き剥がし、冷たい床の上へと乱暴に押し倒した。
「分かったな、暁斗。お前は、俺の大事なメスだ。そう簡単に、安売りみてぇな事できねぇよ……ったく、何、今更、独占欲だしてんだよ」
「……俺……配信のコメント見てたら、不安になったんだ。お前を望む男は多い……今後の撮影だって、お前は他の男を抱くことになる……」
「暁斗……」
床に広がった黒い髪。
暁斗は涙目で首を大きく横に振り、熱く甘く崩れた声で懇願を続けた。
「……だって……お前は、俺のレオだろ……っ。他の男を、今までの撮影みたいに激しく抱くのを見るなんて……もう、俺の理性が耐えられない……。仕事だって割り切っても無理だ……っ。俺だけのレオでいてくれ……俺だけを見て、俺だけを壊してくれ……っ」
「そうか……なら、俺達ももう後戻りできねぇぞ」
レオは暁斗の長い脚を掴み、Mの字に大きく左右へ割り開いた。
逃げ場のない、完全な正常位の体位。
すでに濡れている後ろに向けて、レオの熱く脈打つ危険な一物が、一気に、根元まで容赦なく埋め込まれた。
「ひ、あぁぁぁっ……!! 太い……レオ、奥、いちばん奥まで……っ!」
「もう配信は切ったが、バックアップのカメラはまだ回ったままだ……分かるな? 俺を独占したいなら、お前はもう、傍観者ではいられない。これは、お前が求めた結果……さて、どんなに最高のメス顔になれるか、ちゃんとレンズに収めてみようじゃないか」
レオは三脚のカメラの向きを荒く変え、二人の結合部、肉と肉が激しくぶつかって白い泡を吹いている部分がはっきりと映る角度に固定した。
そして、少しもためらわず、狂ったような速度と重みで腰を叩きつけ始めた。
深く、激しく、ナカの奥にある敏感な場所を、鈍い衝撃とともに何度も突き上げる。
「っ、あぁっ! はぁ……っ! 見られてる、カメラが……回ってると思うと、ナカが……っ!」
「締まりのクオリティが跳ね上がってんぜ、暁斗。お前のこのエロいケツが、俺専用だってみんなに知らしめてやる。もう他の誰にも、指一本触れさせねぇ、渡さねぇよ」
「あん……っ! 恥ずかしい……恥ずかしいのに、気持ちよくて、頭おかしくなる……っ! レオ……もっと……もっと深く突いて……っ! お前ので、俺のナカ、全部ブチ壊して……っ! あ、あぁっ!」
レオは暁斗の華奢な身体を抱き締める腕にさらに力を込め、床に肉が打ち付けられる卑猥な低い音を響かせながら、耳元で熱く、呪いのように囁き続けた。
「ふっ、これならいけそうだな。これからは、二人だけで作っていこうぜ。お前が監督兼男優で、俺が男優だ。他人の身体なんて使わねぇ、ハメ撮りで十分だろ。俺とお前が本気で欲しかった『本物の救い』を、これから二人で、カメラの前で作り続けるんだよ」
暁斗の目が、感動と、そして圧倒的な快楽の涙で激しく震えた。
「……ああ……一緒に、作ろう……っ。あ、だめ……! そこ、すごい、熱い……っ! もっと……奥、突いて、レオ……お前は……俺のものだ……っ! だから、俺はお前のメスでいい……お前だけの、おもちゃでいい……っ!」
レオは暁斗の唇を強引に奪い、言葉を快楽の音へと変えながら、腰の動きをさらに獣じみた勢いで速めた。
ドン、ドン、と、頭の芯まで響くような強烈な突き上げ。
「暁斗、お前、すっかりカメラの向こう側じゃ、満足できねぇ身体になっちまったようだな……乱れ方が最高にエロくてたまんねぇ……」
「あっ……ん……! そう……もう、隠したくない……っ。俺は、俺の体で、理想を体現する……そしてそれと同時に、レオが他の男を抱くのをやめさせる……もう、絶対に無理。許さない……俺だけの、レオだ……ずっと、死ぬまで、俺だけを犯せよ……っ!」
「当たり前だ。お前は最初から、俺だけのメスだ。プライドも、理想も、その監督としての美学も、全部俺に預けろ。俺がその身体、毎日めちゃくちゃにして満たしてやるからよ」
二人は冷たい床の上で、互いの境目が消えるほど深く重なり合い、激しく、濃厚に、しかし狂おしいほどの愛情を込めた交わりを続けた。
赤く点灯したままのカメラのランプが、二人の姿を容赦なく、しかし世界で最も美しい「傑作」として記録し続ける。
そのレンズの前で、暁斗は何度もレオの名前を狂ったように呼びながら、今までにないほど深く、何度も何度も、メスイキの絶頂へと達していった。
理性が、プライドが、快楽の波に洗われて完全に消え去り、ただレオを求める本能だけが、スタジオの熱い空気の中に溶けていく。
ついに、レオも低く野獣のような声を上げ、暁斗の奥、最も熱く締め付ける場所の奥深くに向けて、自身のすべてを吐き出すように、熱く大量の精をドクドクと注ぎ込んだ。
「……どうだ。お前の中、俺の愛で、全部満たしたぜ……っ!」
****
長い、長い余韻。
床の上で、白濁にまみれてピクピクと震える暁斗の身体を、レオは愛おしそうに抱き締め、その涙に濡れた頰を優しく、しかし確かな独占欲を込めて撫で上げた。
暁斗はレオの胸に顔を埋め、もう二度と、この男の手から、この一物の熱から逃れられないことを、深い安堵とともに受け入れていた。
「……お前は俺のものだ。誰にも、指一本だって渡さない」
耳元で響いたその声に、暁斗はかすかに笑った。
掠れた声で、それでも監督として言い返す。
「……この映像は、俺が編集する」
レオが目を細めた。
「できんのかよ、その体で」
「やる。お前を撮るのは、やっぱり俺だ。これは、俺たちの作品にする」
レオは一瞬だけ黙り、それから満足そうに笑った。
「……最高だな、監督」
その言葉は、暁斗にとって、カメラの後ろの孤独から自分を完全に救い出してくれる、最高のクランクアップの合図だった。
**「レンズ越しの獣欲 〜撮る側だった強気監督は、専属男優に本性を暴かれる〜」 (完)
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