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第5章 メスになっていいんだぜ
編集室の冷房は、いつの間にか設定温度を下げたかのように、肌に冷たくまとわりついていた。
床に散らばったままの機材コードや、乱雑に投げ出された編集資料。
その冷たい光景の中で、暁斗の身体だけが、まだ生き物らしい熱を放ち続けている。
「……っ、ん……」
衣服を最低限に整え、なんとかソファに身体を預けたものの、下腹部の奥に居座る重い鈍痛と、内側を押し広げられたような異物感は、まったく消えてくれない。
それどころか、レオが注ぎ込んでいった白濁が、身体の芯でかすかに脈打つたびに、あの嫌になるほど甘い快楽の記憶が頭の奥を直接叩いてくる。
(俺は……何をしていた。クリエイターとしての視点? 冗談じゃない。俺はただ、あの男の暴力的な重みに屈して、あんな無様な声を……)
両手で顔を覆う。
指先にはまだ、自身のオイルとレオの匂いがかすかに残っていた。
激しい自己嫌悪が胸を占める。
カメラの後ろという絶対的な安全な場所から、被写体を「支配」し、「救済」してきたはずの自分が、今や一番無様に暴かれ、快楽に逆らえない身体にされてしまった。
「――まだそんな、悟りでも開いたみたいな顔して考えてんのかよ。往生際が悪いぜ、監督」
背後からの声に、暁斗の肩が小さく跳ねた。
振り返ると、レオが自販機で買ってきたのであろう冷えた缶コーヒーを、暁斗の額に雑に押し当ててきた。
「ひゃっ……っ! やめろ、轟……」
「ほら、冷てぇだろ。頭冷やせって。そんなに自分が男に犯されて気持ちよくなったのが許せねぇのか?」
レオは暁斗の隣に当然のような顔で腰掛け、缶のプルタブを引き抜いた。
ゴクゴクと喉を鳴らして飲むその横顔は、先ほどまで暁斗のナカを容赦なく抉り回していた野獣のような姿とは違って、どこか平然としていて、それが逆に暁斗の自尊心をざらつかせる。
「……お前には分からない。俺にとって、撮る側であるということは、自分を保つための唯一の壁だったんだ。それを、お前は……」
「壁ねぇ。そんな脆い壁の中に引き籠もって、他人のエロい顔だけ切り取って満足してたのが、本当のお前なのかよ」
レオは缶をテーブルに置くと、上半身を暁斗の方へと傾けた。
あの、発展場で初めて目を合わせた時と同じ、すべてを見抜くような鋭い目。
「お前さ、水野を撮ってる時、俺に指示出したろ。『最奥を狙って、執拗に抉り上げろ』ってさ。……あれ、本当は水野じゃなくて、お前自身が俺に言いたかった言葉なんじゃねぇの?」
「な……ッ! ふざけたことを言うな! あれは作品のクオリティを高めるための、純粋な演出だ!」
暁斗は声を荒らげ、ソファから立ち上がろうとした。
だが、急に身体を動かしたせいで、ナカの奥に溜まっていた熱い液体が、とろりと内側を滑り落ちる感覚がした。
「くっ……ん……っ」
思わず腰を折ってその場にうずくまる。
顔が羞恥で一気に火照っていく。
「ほら見ろ。体は正直じゃねぇか。演出だなんだって言葉で飾らなきゃ、俺の身体を直視することもできなかったんだろ。お前はさ……自分のなかのドロドロした性癖を、カメラっていうフィルターを通さなきゃ表現できない、臆病な変態なんだよ」
「黙れ……っ! 黙れ、轟……!」
暁斗は床に手を突き、屈辱に歯を食いしばった。
涙がまた、視界を滲ませる。
一番触れられたくない、自分でも認めたくなかったクリエイターとしての「歪み」を、レオは容赦なく素手で掴み、人目のある場所へ引きずり出してくる。
「でもな、俺はお前のそういう歪んだところが、最高に気に入ってんだよ」
レオがうずくまる暁斗の前に膝をつき、その顎を強い力で強引に持ち上げた。
黒縁眼鏡のない暁斗の、涙に濡れた無防備な瞳が、レオの視線と真正面からぶつかる。
「お前のあのカメラの回し方、ただのエロ動画じゃねぇ。抱かれてる奴の、一番見られたくない、一番汚い本性を、むき出しにするまで絶対にレンズを外さねぇだろ。あれはな、お前自身がそういう『むき出しの瞬間』に飢えてるから撮れる画なんだよ」
「お前に……俺の何が分かる……」
「分かるさ。お前のナカに俺の一物が入った時、お前のナカがどれだけ狂ったみたいに締め付けてきたか、この身体が全部覚えてる。……お前はな、カメラの後ろで他人の本性を暴きながら、ずっと待ってたんだ。自分をその安全な場所から引きずり出して、本当の意味で『完成』させてくれる、俺みたいな男をな」
完成させてくれる――その言葉が、暁斗の胸の奥で、カチリと嫌な音を立てて噛み合った。
今まで、どんなに素晴らしい機材を使っても、どんなに演技の美味いモデルを使っても、自分の作品には「決定的な何か」が足りないと感じていた。
その正体が、今、目の前の男によって突きつけられたような気がした。
(俺に足りなかったのは……被写体へ深く入り込むことじゃない。俺自身が、その作品の一部として、泥にまみれる覚悟だったのか……?)
「……お前が、俺を完成させる……? うぬぼれた男優が、監督に向かってよく言えたものだ……」
暁斗はかすかに唇を震わせながら、精一杯の皮肉を返した。
しかし、その声にはもう、先ほどまでの固い拒絶の力は残っていなかった。
「うぬぼれてて結構。お前がその高いプライドのせいで、自分を表現しきれずにくすぶってんなら、俺がその身体をめちゃくちゃにしてでも、本当の『傑作』にしてやるよ」
レオは薄く笑うと、暁斗の細い手首を掴み、ゆっくりと立ち上がらせた。
そして、そのまま暁斗の身体を抱き上げ、再びソファへと押し倒す。
「ひあ……っ、轟、また……やるつもりか……?」
「あったり前だろ。一回イッたくらいで、お前のその頑固な頭がほどけると思ってねぇよ。ほら、まだナカに俺の名残がたっぷり詰まったままだろ。それを、俺のこれで、もっと奥まで押し込んで、お前のナカを俺の色だけで完全に塗り潰してやる」
レオの手が、暁斗のワークシャツのボタンを容赦なく引き千切るように外していく。
白い肌が露出し、冷房の風に身震いした瞬間、レオの熱い唇が首筋に深く噛み付いた。
「んあ……っ! 噛むな……跡が、残る……っ!」
「残せよ。お前が俺の所有物だって、鏡を見るたびに思い出せるようにな。ほら、自分から足開け、暁斗。お前のその綺麗な指で、ナカを広げて、俺のを迎え入れる準備しろよ」
「そんなこと……できるわけが……っ!」
「……本当にできないのか? できねぇなら、ここで止めてもいいぜ?」
レオのギラギラとした瞳が、命令を下している。
暁斗は激しい葛藤の末、屈辱に震える手で、自身の太ももを掴み、ゆっくりと、左右に大きく割り開いた。
衣服が完全に割かれ、蜜と先ほどの白濁でドロドロに汚れた後ろが、モニターの光の中に晒される。
「……あ、っ……これで、満足か……?」
「満足なわけねぇだろ。本番はここからだ」
レオは自身の脈打つ危険な重みを、再びその入り口へと押し当てた。
暁斗は目を閉じ、これから訪れる激しい快楽の波に備えて身体を強張らせた。
しかし、その胸の奥にあったのは、最初のような純粋な恐怖ではなかった。
(俺を……完成させてみろ、轟レオ。お前が俺の理性を、美学を、すべてをブチ壊して……新しい世界を見せてくれるというのなら……)
「いくぜ、暁斗。お前の本当の声を、俺に聞かせろ」
「んあぁぁぁっ……!!」
再び、激しい衝撃が編集室を支配した。
ひとつ動くごとに、暁斗のなかの「撮る側」としての境界線が、完全に溶けていく。
彼はまだ、言葉では負けを認めていなかった。
しかし、レオの広い背中に回されたその両手は、もう二度と、この男から離れられないことを示すように、強く、深く、その肉体に食い込んでいた。
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「あ、ぐ……っ、ぁあ……っ! れ、お……熱い、熱いよ……っ!」
激しく打ち付けられる強い動きが、暁斗の考える力を一瞬で奪っていく。
言葉ではまだ抗う姿勢を残していたはずなのに、レオの一物がナカのいちばん弱い場所を捉えるたび、弓なりに反った身体が喜びに震えるような悲鳴を上げた。
衣服を剥ぎ取られた白い肌が、レオの浅黒い胸板と擦れ合い、生々しい摩擦音を編集室に響かせる。
レオは腰の動きを緩めることなく、暁斗の両手を頭上へ力任せに押さえつけた。
そして、深く繋がったまま、暁斗の涙に濡れた唇を強引に奪った。
「ん、んんーーっ……! ん、ふ……っ」
お互いの唾液が濡れた音を立てて混ざり合い、熱い吐息が鼻を満たす。
深く、根元まで舌を絡め合わせる強いキス。
それは暁斗の肺から酸素を奪うと同時に、胸の奥に固く残っていた最後の「わだかまり」を優しく溶かしていくかのようだった。
(ああ……俺は、この男に暴かれるのをずっと待っていたんだ。他人の皮を被って表現するんじゃなく、俺自身のこの身体で……)
キスが解かれると、レオは暁斗の耳元に顔を寄せ、低く、ひどく甘い声で囁いた。
「どうだ、暁斗。カメラの後ろに隠れてるより、こうやって俺の身体を直接感じてる方が、何百倍も気持ちいいだろ。ほら、ナカが俺の形に合わせてピクピク動いて、もっと奥が欲しいって啼いてるぜ」
「あ……はぁ、っ! れ、お……そこ、だめ……ひゃあぁぁっ!」
レオの大きな手が、暁斗の火照った脇腹を優しくなぞり、そのまま胸の突起を強めの力で愛撫した。
指先がもたらすしつこい刺激と、ナカを深く抉り上げる暴力的なほどの重みが同時に襲いかかり、暁斗は完全に前をビンビンに昂ぶらせて涙を流した。
レオの突く位置は、最初の手荒なものから、徐々に暁斗が最も弱く、声を与えてしまう場所へと正確に集中し始めていた。
奥の、一番熱く締まった場所を、太い先端がズブズブと容赦なく圧迫する。
「あ、あぁぁっ! そこ、あ、だめぇ……っ! おかしく、なる……っ、れおぉ……っ!」
「メスになれ、暁斗。プライドも美学も、全部俺にあずけろ。お前を救って、本当の形に完成させてやれるのは、世界中で俺だけだ」
その言葉が、快楽で甘く崩れた暁斗の頭に、救いのように染み渡っていった。
これまで自分を縛り付けていた「撮る側としての誇り」や「歪みへの恐怖」が、レオの優しい愛撫と、心臓まで届きそうな深い突き上げによって、完全に洗い流されていく。
(怖いんじゃない……。俺は、この男の愛の深さに、導かれていたんだ。この圧倒的な快楽の力こそが、俺を完成させるための……光だ……)
胸を満たしたのは、かつて味わったことのない、強い幸福感だった。
男優を支配していると思っていた自分が、実はこの男の野生的な愛によって、最も欲しかった「むき出しの自分」へと導かれていた。
その事実に気づいた瞬間、暁斗の心の壁は跡形もなく崩れ、レオへの深い服従と愛が、熱い涙となって溢れ出た。
「……あぁっ! 俺を、めちゃくちゃにしろ……っ! れお、お前の一物で……俺を、完成、させろ……っ!」
暁斗は自ら脚をさらに大きく開き、レオの腰をナカの奥深くへと迎え入れるように、淫らに腰を振り始めた。
言葉の端々に、レオのメスとして徹底的に屈服したことへの、狂おしいほどの喜びが滲む。
「最高にエロい声だ、暁斗。お前を誰にも渡さねぇ。俺のナカだけで、一生啼かせてやる」
「あ、あぁぁっ! レオ、俺はすべて受け入れる……お前の、お前のメスに、してくれ……たのむ……このまま……っ! いく、あ、いくぅぅぅっ!!」
最も敏感な場所を容赦なく連続で叩かれ、暁斗は身を震わせて絶頂へと上り詰めた。
かつてないほど深く激しいメスイキの衝撃。
頭の中が真っ白な幸せのノイズで満たされ、自分という存在がレオの愛の中に完全に溶けていくのを感じていた。
レオも低く、喜びに満ちた声を上げて、暁斗の奥へ向けて熱い白濁を容赦なく、大量に吐き出した。
「……はぁ、っ……出したぜ、暁斗。お前の中、俺の愛で、完全に満たしてやったからな……」
長い余韻の中、レオは暁斗の震える身体をきつく抱き締め、頰の涙を優しく舌で舐めとった。
暁斗はレオの胸の中にすっぽりと収まりながら、かすかに指先を震わせ、その背中にそっと手を回した。
(……悔しい。なのに、満たされている。崩れたのに、俺は消えていない。レオの腕の中でだけ、息ができる)
カメラの向こう側では決して得られなかった、絶対的な満たされ方。
暁斗は甘く崩れた瞳でレオを見上げた。
「……勘違いするな。俺がこうなるのは、お前の前だけだ」
掠れた声で、それでも暁斗は言い切った。
レオが低く笑う。
「知ってる。だから欲しかった」
その言葉に、暁斗は返せなかった。
ただ、レオの背中に回した手に、少しだけ力を込めた。
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