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番外編:ヒノワコク
ヒノワコク(お礼の番外編)
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セージがシダレに連れてこられたのは、ヒノワコク・サクラノミヤコと呼ばれるヒノワコクの中心部で、とりわけ賑やかに栄える都会だった。
着物に渡し舟、初めて目にした車と……地面を走る、路面電車というらしい乗り物。
あまりの活気と人の多さに圧倒され、自分が生まれ育ったニィル村とは何もかもが違う異国へ―――本当に来てしまったのだと、セージは改めて思い知らされた。
「着物も似合っているじゃないか」
「……」
シダレの屋敷に閉じ込められたセージは、着慣れない「キモノ」という服……いや、美しい柄の布を身体に巻きつけられ、シダレに飼われていた。
いや……飼われている、とは少し違うのかもしれない。
シダレはセージに対して、屋敷の召使いたちと共に働くこと――つまり“労働”を許可したのだ。
首輪の飾りには「ユウギリ家」の家紋が彫り込まれており、「逃げたところで、この紋章がある限りどこまでも連れ戻す」と最初に脅されはしたが……セージを見る召使いたちの表情は、怯えるセージとは裏腹に何故か喜びに満ちた温かいものだった。
「それに、あの国出身の者にしては珍しい」
「? なにが、ですか?」
「刺身だ。国にも村にも生魚を食う文化はなかっただろう? 抵抗なく口にしたな」
「あ……。初めて見ましたが、とくに不快な抵抗はなかったので」
それになぜだろう? 初めて見たはずの料理の刺身を「美味しいもの」だと認識していた気がする。
その理由はセージにも分からなかったが、今日はセージの初仕事の日だった。それもあって普段より空腹だったのだろうと二人とも考えた。
「あの、お屋敷の人たちは誰も聞かなかったのですが、俺のことはなんて……」
「――ああ。彼らには、お前は奉公に来たと伝えている」
「ほうこう?」
「住み込みで働く使用人のことだ。それとも何だ? お前は周囲に『性奴隷』として紹介されたかったのか?」
「い、いいえっ! まさか!」
部屋の中にただ閉じ込められて、生かされるだけなんて嫌だ。
最低でも……これ以上状況が悪くならないよう、こうして働いて過ごしたい。
「今の生活に、不満はありません」
「ほう?」
「食事も美味しいですし、みなさん優しいです」
「それはいい。とくに、誰が好きだ?」
―――? 好きとはどういう質問だろう。
しかし、シダレはどうやら上機嫌のようだ。
「ええっと……好きとは違いますが、タナカさんもサトウさんは面倒見がよくて…その、お仕事も早いので凄いと思います」
「………他には? 尊敬する者など」
「あとはまだ…、手伝いを始めたばかりですので……すみません」
「………」
「? シダレ、さま?」
「別に。なんでもない」
「??」
何故か急に黙り込み、そっぽを向いてしまった男。
不思議そうに首をかしげるセージと、セージが自分以外の人間を褒めたことに嫉妬心を覚えたシダレだった。
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あとがき
ここまで読んでくださりありがとうございます。
屋敷から出ることは許されてませんが、大事に囲われてる様子です。
でもあんまり親しげにしていると……急にシダレ様が現れ、セージを小脇に抱えて連れ去ってしまうようで…
シダレ様は大人気ない。
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