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第1話

「まさか……モネなの……?」 京一郎は震える声で問いかけた。 京一郎はいつものように、自宅のベッドで目を覚ました。いつもと違うのは、そこに見知らぬ青年がいることだ。 青年は眠そうに目を瞬かせ、くあと大きな口を開けてあくびをすると、 「そうだよ」 と答えた。 「なんで……?」 京一郎はそこで自身がパンツ一枚であることに気づき、不摂生の祟った体を隠すように毛布を引っ張り上げた。 何一つ状況が理解できない なぜおれもこいつも半裸なんだ…… 京一郎は二日酔いで痛む頭を抱えた。 「なんでって……昨日ぼくを保護してくれたでしょ?」 京一郎は、ベッドの上で上半身を起こし、両腕をあげて気持ちよさそうに伸びをしている青年を改めて観察した。 年の頃は25、6だろうか。京一郎とそんなに離れている感じはしない。 肌が白く、均整の取れた体つきをしている。いわゆる細マッチョか…… 京一郎は青年の美しく割れた腹筋を羨まし気に見つめた。 いや、腹筋に見惚れている場合ではない 京一郎は目の前の細マッチョをきっと睨みつけた。 「おれが保護したのは猫だ!」 そう、昨日はしたたか酔っていたが、保護したのは猫だ。イケメンではない。 白くふわふわとした、高そうな猫だった。迷い猫として張り出されていた。名前はモネだ。 「そうだよ、ぼくがモネだ  その節はお世話になりました」 深々と頭を下げられ、つられて京一郎もお辞儀を返す。 「それでね  京一郎に恩を返さないと、猫に戻れないんだ」 「なんで!?」 京一郎の至極まっとうな問いかけに、さあ、とモネは気の抜けたような返事を返す。 「猫の恩返しだよ、京一郎」 モネはいたずらを思いついた子どものようなきらきらした瞳で、京一郎の顔を覗き込む。 「お気持ちだけで十分です!  猫にお戻りください!  っていうかなんでおれの名前を知ってるの?!」 怖い怖いと叫びながら、モネから距離をとるようにベッドの隅へと後退りする。 「だからー、恩返ししないと戻れないんだってばー」 怯える京一郎と対照的に、モネは楽しそうに笑う。 「まあ、そういうことだから。  よろしくね、京一郎」 言って、モネは冷蔵庫から麦茶を取り出すと、コップに注いで飲み始めた。 「あ、京一郎も飲む?  昨日だいぶ飲んでたみたいだから、ちゃんと水分取った方がいいよ」 京一郎はコップを受け取り、冷えた麦茶を一気に流し込んだ。ほんの少し気分がマシになる。 モネは空いたカップを回収すると、京一郎に横になるように促した。 「寝れないよ! こんな状況で!」 憤る京一郎を、まあまあとなだめながら、布団へ押し込む。 京一郎のまぶたをモネのひんやりとした手が覆い隠した。 「何するんだ!」 「暗いと落ち着くでしょ?」 こんな状況で眠れるわけがないという京一郎の意思に反し、体は休息を求めていた。 モネのさらりとした手の感触を感じ、聞きなじみのないメロディの鼻歌を聞いているうちに、いつしか眠りに落ちていた。

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